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教室に着くとさも当然であるかのように要が私より先に教室のドアを開く。
私と手を繋いだままの手で私をエスコートし、私を席まで誘導した。
「おぉ。要、美咲。おはよう。」
早速声をかけてきたのは北東隼人だ。
「隼人様おはようございます。」
「あぁ。隼人か。おはよう。」
イケメンが2人も同じクラスにいる為周りの女子がざわめいてる...。
まぁ、わかるけどね。
前世だったら絶対きゃーって言う側だと思う。
私がイケメンの真ん中にいるせいで陰口を言われている気がする。
2人は何故か目を見合わせると私を背に隠しなにかこそこそと話始めた。
きょろきょろと周りを見渡していると千捺と目が合った。
手を振ろうとするとバッと目を逸らされた。
なんでだよ。
私はむっとなり千捺の席まで出向いてあげることにした。
千捺も私と同じようにこそこそ言われるが良い!!!
「おはようございます。千捺さん。」
私は壁という名の要と隼人を避けながら千捺の席まで行った。
私は微笑みながら挨拶すると一瞬苦虫を噛み潰したような顔をしたがすぐに笑みを浮かべ、「おはようございます。美咲さん。」
と返事した。
「同じクラスだったのね。知らなかったわ。」
「私も先程美咲さんが教室に入ってきたのを見て知ったんですの。」
うふふ、おほほと上っ面だけの笑顔を浮かべているがお互い目が笑ってない。
「美咲...?」
「はい?」
要に呼ばれて振り向くと教室のど真ん中だというのにぎゅうぅうと強く抱きしめられた。
「っ?!」
一瞬叫びそうになるが、素が出る前に飲み込んだ。
「えと、要...?どうしたんですか?というか、離してください...。」
私が目立つだろうが!!!!
私の横でぼそっと千捺が
「愛されてるねぇ」というが、これは愛されてるのではなく嫌がらせなのでは...?
離せと言っているのに抱きしめている力はぎゅうぎゅうとどんどん強くなっている。
「要?」
「なんか、心臓のあたりがちくちくして、モヤッとして苛ついた。」
だからってなんで抱きしめるんだ。
「よく分かりませんが、私は関係ないのでは?」
「いや、ある。」
なんでそこは断言するんだ。
余計訳が分からない。
「美咲がその女と話始めた時からその症状が出たんだ。」
...?
私は前世に少女漫画を読みすぎたんだろうか。
これが私には告白にしか聞こえない。
要は心臓がちくちくして、モヤッとして苛ついた。といった。
嫉妬じゃないの?
「そ、そうなんですか。」
「あぁ。そうだ。だから俺から離れるんじゃない。」
ええ、それは無理だと思う。
「それはちょっと...。」
そう言うと要は「そうか。」としゅんとして私から身体を離した。
うわぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!!!!
要から抱きしめられた!!!
え、え。え!?
吃驚したぁぁあ。もうほんとに心臓がバクバクいっている。私の顔が真顔なのが不幸中の幸いである。
やはりこれは嫉妬...?
でもここは乙女ゲームだし、ヒロインと結ばれるはずなのに。
それとも出会い方に問題があったからまだ一目惚れしてないとか?
しゅんとして身体を離したのはいいのだが、今度は手を握って私から離れようとしない。
...、こ、子犬か!!!
もう要がここから動くとは思えないので千捺に別れをいうと要にまた席まで案内された。
「要?わざわざ、席まで案内しなくても大丈夫ですよ?」
「それ。」
「え?」
「その敬語が嫌だ。」
要は食い気味に言った。
「敬語...ですか?いや、でも今までも、」
「俺たちは婚約者だろう?なんでいつまでも他人行儀なんだ。」
まぁ、それもそうか。
「...。わかった。」
うぅ、敬語を外した瞬間要は真顔ながらもぽわわわわー、と体の周りに花を散りばめた。
...可愛いっ!!!!!!!!!
なんなんだ!!!
乙女ゲームではクールで俺様なのが売りなのに、全然クールじゃない!どちらかと言うと感情が豊かだ。
要が可愛い...。
要が花を散りばめた姿が可愛くてついじーっと顔を見てしまった。
「...?なんだ?」
「い、いいえ。ずっと見ていてごめんなさい。」
謝ると不満げにムスッとした。
えぇ。なんで?そんなに見られるのが嫌だった?
ちゅーー。
ん?
「...。敬語。」
「え?あ、敬語。」
いや、敬語じゃなくて。
「え。っと、あの。敬語。じゃなくて、」
「...?」
いや、...?じゃないから、
なんで頬にキスした?!
「あ、あぁ。ちゅうの事か?」
ち。ちゅう?!
なんでキスじゃなくてちゅうなんだ?!
「敬語を使ったからお仕置きだ。」
と、満足げに微笑んだ。
んんんんんんんん。
ここが教室なの忘れてんの?