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ショゴス探偵の怪奇ファイル  作者: 百面相
ファイルNo2.ゼロデイ作戦
16/64

No.15 第0班、集結

「はーい。それじゃ全員揃ったみたいだし、会議始めるよー」


 都内某所。そこで、とある集団による会議が開かれようとしていた。

 口火を切ったのは、齢十かそこらの少女。対して、席について少女の話を聞くのは総勢九名の男女。


「それじゃあ、今日から第0班(うち)に新しく加わることになった子を紹介するよ。創くん、自己紹介よろしく~」


 洋館から脱出して一夜が明けた。

 俺たちを乗せたヘリは都内のある大病院の屋上に着陸。実はこの病院、第0班と関係があるということで、検査入院という名目で俺たちは入院することになった。

 ちなみに日帰りの予定だった学生三人については全員親元を離れて学生寮で暮らしているとのことで、寮の管理人に連絡し、軽く怪我をしたので念のため病院で診て貰うことになったと説明した。

 俺はというと妹にあらかじめ遅くなることを伝えていたので問題はない。自慢じゃないが我が妹は下手すれば俺よりもしっかりしているので、最悪家に一人でも大丈夫なのだ。もちろん、可能な限り一人にしないように心がけてはいるのだが。


 それはともかく、学生三人と司は病院で療養中。俺、沙羅、マリーの三人は報告のため第0班の会議に出席することとなった。

 指定された場所に行くとそこにはルイスがいて、相変わらずの笑顔で俺たちを出迎えた。


「やあーみんな、今回はお疲れだったね!」


「すまん隊長、わたしのせいで余計な手間を……」


 申し訳なさそうに謝罪するマリーをルイスは制した。


「いいんだよマリー。次からは気をつけようね?」


「あ、ああ……」


 次にルイスは、俺に向き直った。にんまり笑うと俺の前にやってきて、腰に手を回して抱きついてきた。


「やあ創くん、お手柄だったね! きみに依頼してよかったよー!」


 なんでこいつはこうも人に馴れ馴れしいんだ? 奥手すぎるのもよくないと思うが、ガンガンきすぎるのも考え物だと思う。


「ええい抱きつくな。約束通り金はもらうぞ」


 約束通り、残りの金を貰おうとしたら予想外の言葉が返ってきた。


「もう振り込んであるよー」


「……おまえに口座を教えたつもりはないんだが?」


 嘘……じゃないんだろうな、おそらく。まあ、あれだ。仮にも国の組織なんだからそれくらい簡単に調べられるんだと思おう。こっちは金さえ貰えればいいわけだし。


「……そうか。じゃあ、俺は帰る」


 そう言って帰ろうとした時、俺の腰に回る腕に力が込められた。


「ダーメ。ねえ創くん、お願いがあるんだけど」


「断る」


 この流れで聞かれることなど簡単に予想がつく。どうせ俺も第0班に入れとかそんな話だろう。


「え~、創くんにとってもいい話だと思うんだけどなー」


 だいたい、何かあれば今回のように依頼すればいいだけだろ。沙羅には悪いがわざわざ一緒にこいつの駒として働くつもりはない。

 しかしルイスは、俺だけに聞こえるような小声でこう言った。


「――もしかしたら、きみが目指す『場所』に関するヒントが見つかるかもよ?」


「――!? なぜ、それを……」


 ()()は、俺の中でも最重要事項と言ってもいいものだった。『場所』と言い切った以上、単なるハッタリという線も薄い。

 そして()()は、俺が何かにつけて死にたがる理由でもあった。俺とて意味もなく死のうとしていたワケではなく、そこはちゃんとした目的あってのこと。でなければせめて妹が大きくなって、幸せを手にするのを見届けてから死のうと考えていただろう。


 決断に、さして時間はかからなかった。


「……わかった」


 正直、何か知っているなら力ずくでも聞き出したかったが、それが通用しないことはわかっていたので、はやる気持ちを抑えて俺は答えた。


「そう警戒しなくても大丈夫だって。基本、今まで通りの生活と変わらないと思ってもらっていいよ。きみの手を借りる必要があると判断した時だけ呼ぶことにするから」


 そう言うとルイスは俺から離れ、奥の扉を指差した。


「じゃ、行こうか。マリーと沙羅も。みんなが待ってるよ」


 ――そして、冒頭に戻る。


 第0班に加わることとなった俺はルイスに促され、他の班員の前に進み出た。


「神崎創だ。以上」


「えー、それじゃあちょっと足りないかなあ。みんな一緒に戦う仲間なんだし、もっと色々教えてよ」


 仲間と言われても、必要以上に馴れ合うつもりは俺にはない。かといって過度に余所余所しくするつもりもなかったので、少し考えてから話を続けた。


「普段は探偵をやっている……何か質問は?」


 そう聞くと、場の雰囲気に似つかわしくないやたらと元気な声とともに手が挙がった。


「はい! はいはいはーい!」


 手を挙げたのは、短いライトブルーの髪に帽子を被った少女だった。見覚えがある。確か、ヘリに乗って俺たちを迎えにきたのがこの少女だったはずだ。なぜか俺をちらちらと見ては、何か言いたそうに挙動不審な動きを繰り返していたのを覚えている。


「きみ、未確認生命体第一号なんでしょ? 聞いたんだけど、第一号って何にでも変身できるんだって? ちょっと見せてくれないかな!?」


 一点の曇りもない、キラキラとした期待の視線を向けてくる少女。警戒されるのは想定していたが、逆にここまで純粋な好奇心に満ち溢れた目で見られるとは思っていなかった。

 右手を前に差し出して、手首から先を変化させる。

 ()に変化したそこは切り離され、ゴトリと音を立てて床に落ちた。昔読んだ書物に図面ごと載っていた拳銃を参考にしたため、内部構造まで完璧のはずだ。つまり、本物と同じく使用が可能ということだ。失った手首は既に再生している。


「……それ、使えるの?」


 いかなる心境か、問いかける少女の声は心なし震えている。その問いに対し、俺は落ちた銃を拾い上げた。


「待ちなさい麗花(れいか)。大丈夫よ」


 視界の端で少女の隣に座る、右目に眼帯をかけた白髪の少女が立ち上がりかけるのが見えたが、対面に座る銀髪の白衣を着た女性に制止されていた。


 微笑み、自らのこめかみに銃口を当て、引き金をひいた。

 発砲音とともに、銃弾が頭部を貫通する。血は出ない。もちろん俺の頭に脳みそなど詰まってはいないので、これしきで死ぬはずもない。同じ理屈で心臓も存在しないので、どこを撃っても変わらない。


 頭部を再生させ、テーブルの上に銃を置く。よろよろと前に出てきた少女は銃を手に取ると、感情を爆発させた。


「すっ……ごーーい! うわあ、完璧だよコレ! すごいすごいすごい!」


 まるでずっと欲しくてたまらなかったおもちゃを買ってもらった子供のようにはしゃぎながら、少女は俺の手を取った。


「わたし、吾妻(あずま)やよいっていうの!ねえキミ、創くん、だっけ? ちょっとこのあとわたしのラボに……いや、今すぐ行こう! そうしよう!」


「お、おい……?」


 予想外の反応に俺が面食らっていると、さっき白髪の少女を制止していた銀髪の女性が苦笑しながら言葉を発した。


「やよい、まだ会議は終わっていないでしょう。終わるまで我慢しなさい」


「えー、わたしはもう十分我慢したよ。ホントは出会った瞬間にあれこれ聞きたいのを我慢してたんだから!」


 頬を膨らませて抗議する少女改めやよい。彼女の帽子には『5』の文字が刻まれていた。彼女と話している銀髪の女性の白衣には『2』の文字。

 よく見ると、他の班員も数字の刻まれたものを身につけていた。沙羅のネクタイには『7』、マリーの軍帽には『6』、白髪の少女の右目にかかる眼帯には『4』、そして、一連の出来事をニコニコ笑って見守っていたルイス。今日は初めて会った時とは違い、長い金髪をリボンでまとめている――そのリボンに『0』の文字。

 おそらく、班員の番号だろう。基準は不明だが、普通に考えれば班員となった順番だろうか。


「もう少しだから、我慢しなさい。まあ、わたしも気持ちはわからないでもないけれど」


 そう言ってやよいをなだめると、銀髪の女性は俺の前にやってきた。後ろには白髪の少女が控えている。


天津原黎子(あまつばられいこ)よ。あなたたちが滞在している病院の責任者でもあるわ。こっちは娘の麗花。どうぞよろしく」


「……」


 班長を筆頭に癖の強そうな班員たちだがこの女性――いや、黎子さんはまだまともそうだ。困ったら彼女を頼った方がいいかもしれない。


「うふふ、今日は用事があるからまた今度にさせてもらうけれど、次ウチの病院に来る時は、是非ともその素敵な身体を調べさせてちょうだいね――隅々まで」


 訂正。この人もヤベェ。


「ぼくたちも興味あるなあ。ね、シェリー?」


「ええ、とっても興味があるわエリー。このお兄ちゃんはわたしたちがさわっても()()かしら?」


 続いてやってきたのは無邪気な笑みを浮かべた幼い少年と少女。双子だろうか、よく似た顔立ちの二人はなぜかお互い片方の手を繋いで片時も離そうとしない。繋いでいない方の手には手袋をしており、そこには『3』の文字が刻まれていた。


「うふふ、初めまして。わたしは錫奘(しゃくじょう)寂蓮(じゃくれん)と申します。しがない尼僧ですが、どうぞよろしくお願いします」


 最後にやってのは僧侶さん。柔和な笑みを浮かべ、雰囲気こそ穏やかだが、この人が一番ヤバい。

 見た目は妙齢の女性なのだが、体捌きが尋常ではなかった。普通の人間より強化しているはずの俺の聴覚が、足音をまったく拾えなかったのだ。

 足運びが自然すぎて、まるで最初からそこにいたかのように気づけば目の前にいた。こと体術においては俺どころか俺の知る限り最強だった父を遙かに凌ぐかもしれない。

 にこやかに挨拶する寂蓮さんの法衣の袖に『1』の文字。班員はこれで全員だとすると、俺は八番目の班員――あの双子が二人揃って『3』番目の班員とするならだが――になる。


「しかし、人外じみた奴らばかりとはいえ、まさか()()()()()寂蓮に続いて本物の人外が入ってくるとはね……しかも沙羅、あいつの元同級生だったんだろ? そこんとこどうなんだよ」


「いや、わたしも創がわたしの知らぬ間に人間でなくなっていたとは思わなかったのだが……少々複雑な気持ちだが、それでも彼と一緒に戦えるのは嬉しく思うよ」


 わらわらと集まってきた班員たちに対応する俺の姿を見て、ルイスが笑っていた。


「あはは、さっそく仲良くなれたみたいでよかったよ。それじゃあ、会議はこれでおしまい。また何かあれば呼ぶから、その時はヨロシクね~」

 うーん、サブタイトルに誰視点とかいらないかな? どうすればいいかよくわかんないや……。

 はい、というわけで、新章始まりました。

 ちなみにメンバーの数字ですが、これは創の予想通り加入順となっています。ですので、創の数字は八ですね。日本ではむしろ七よりも八の方が縁起のいい数字とされることもあり、わたしは七よりも八の方が好きです。

 次回もなるべく一週間以内に更新するつもりです。ではまた~。

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