No.12 洋館事件(創視点)【4】
あれ、予約投稿の時間ミスってる……機能を上手く使いこなせてないなあ……。今日中に改稿しますので少しお待ちくださいorz
飛び降りた先は、まあ予想通りゴミ捨て場だった。のだが、そこにはいくつもの人影が蠢いていた。
「なんだあ? おいアンタ、こんなところで何を……」
近くにいた男に尋ねたら肩を掴まれた。目の前で顎が外れるほどに口が開かれる。同時に撒き散らされる強烈な腐臭。
「汚い」
裏拳で頭部を消し飛ばす。どうやら死人のようだし、手加減なしだ。もっとも、人間であったとしても邪魔するなら容赦しないが。
よく見れば人影は全員ゾンビの上、這いつくばって何をしているのかと思えばみな一心不乱に残飯を口に運んでいた。ここはこいつらに餌を与える場所なのかもしれないな。
今ので他のゾンビたちにも俺の存在が気づかれた、が、何の問題もない。この程度の奴らがいくら群れたところで俺の障害にはなり得ないのだから。
襲ってくるゾンビを適当に吹き飛ばしながらシルヴィアの痕跡を辿る。ゴミ捨て場を出ると、一転して清潔感に満ち溢れた真っ白な通路に出た。足音がよく響くので探知しやすくて助かる。どうやら突き当たりの部屋に誰かいるようだ。ゴミの匂いもゾンビの腐臭も薄れたので嗅覚も使う。ルイスの依頼では捕らえられている第0班の一員がいるとのことなので、そいつかもしれないな。さらにその奥に妙な反応があるが、ひとまず気にしないことにしよう。
「第三実験室」というプレートの掲げられたその部屋に立ち入る。そこには檻が並んでおり、中は空だったり、何かの成れの果てのような肉塊が転がっていたりした。
「実験室、か。趣味の悪い場所だぜまったく……」
「……おい、変態野郎。いい加減ここから出せ。薬だろうと拷問だろうとわたしは口を割らないぜ」
檻の中を確認しながら歩いていると、棘々しさを多分に含んだ女の声がした。
「ああ? 勘違いすんな、俺はあのエセ紳士や怪物メイドじゃな――」
声がした方を振り返る。すると、両手を拘束された女と目が合った。……なぜか全裸の。
「……」
「……」
一瞬思考が止まったが、すぐさま目の前の光景を理解し、即座に手で顔を覆う。それからたっぷり溜めを作り、特大の溜め息を吐いた。
「――――はぁ。何してんだあの変態は」
「――ッ!! お、お、おまえ、コービットじゃ――!」
上擦った声を上げる女をもう片方の手で制す。
「落ち着け。今のは見なかったことにするから。おまえが沙羅の言ってた第0班のマリー・ヴェステンフルスだな? 俺は神崎創。依頼を受けて、沙羅と一緒にここへ来た」
「――! 沙羅が来てるのか!? 今どこにいる!?」
「恐らくはあいつもこの地下だ。スキーに来て迷い込んじまった一般人の学生三人と一緒にいる。とにかく檻を開けるぞ」
顔を隠したまま檻に近寄る俺の耳に、マリーの落胆した声が届く。
「――無理だ。鍵がかかってる。鍵を持ってるのはあのシルヴィアとかいうバケモノメイドだ」
時間が惜しい。馬鹿正直にシルヴィアから鍵を奪うなんてやってられるか。無視して鍵穴に手のひらを当て、型をとる。そしてその部分をそのまま隆起させ、強引に鍵を開けた。
「あ、開いた? なんで――」
「ちょっとした手品だ。ほら、これ着ろ。見ないでおいてやるから――」
「――後ろだ! 避けろっ!!」
羽織っていたコートを脱いで投げ渡す。その時、マリーから警告が飛んだ。振り返るが既に遅く、飛び掛かってきた犬のゾンビに俺は喉を食い千切られた。
「……ああ、クソ。死なないせいで注意力が鈍りに鈍ってやがる。いくらなんでもこりゃあ油断しすぎだぜ」
「な!? おまえ、いったい――!?」
「……これも手品だ、つっても、流石に無理だろうなあ。ここまで見ちまったら」
正体を隠すことを諦めた俺は、犬ゾンビの首根っこをひっつかんで投げ飛ばす。人外の膂力で投げられた犬ゾンビは壁に激突すると、粉々に四散した。
唖然とするマリーに、改めて名乗る。もちろん、人間としてではない。
「――さて、改めて名乗ろう。俺は神崎創。沙羅の幼馴染みで、しがない探偵で、そしておまえらの敵である未確認生命体の第一号、ショゴスだ」
「なるほどな。事情は理解した」
ルイスの依頼や館に来てからのことを説明すると、マリーはそう言って一つ頷いた。当たり前だがもう全裸ではない。檻と同様に手錠を外し、脇に書斎から持ってきたコービットの手記を抱えて、俺のコートを着ている。
「この手記だけでも十分証拠になるかもしれないが、できれば実験されてた被験体のサンプルが欲しい。一つ確保したんだが、あの変態に服と一緒にとられちまった」
「……そういや、なんで裸だったんだよ。思わず溜め息吐いちまったぞ」
「うるせえ! あの変態、わたしが装備で透明になってるんだと勘違いして、何もかもとられたんだよ! 忘れろ! じゃなきゃぶっ殺してやる!」
顔を真っ赤にして怒るマリー。見ず知らずの男に裸を見られるなんてとんだ災難だったろうが、それで俺が怒られるのはお門違いだ。
「ハイハイ、できるもんならやってほしいよまったく……で、どうすんだよ?」
その時、隣の檻から小さな呻き声が聞こえてきた。見てみると、まだ幼さの残る少女が隅でうずくまっていた。特筆すべきは、その少女の頭から犬のような耳が生えていることか。コービットの手記にあった、他の研究施設から移送されてきた人狼の一人だろう。
「なんだ? どっか悪い所でもあるのか」
「……飢えてるんだよ。人狼ってのはどうやら人間よりも多く食事を摂らなきゃいけないみたいなんだが、あのメイドはそれが理解できなかったみたいで、食事が足りてないんだ」
人狼の少女を見ていたマリーが何か言おうとしたのを気づかないフリをして、檻を開けて少女に近づいた。
「……おなか、すいたよぅ……」
「食べ物が欲しいか?」
「……はい」
「ここから出たいか?」
「……みんな、殺された。出たいよ、ここから出して……」
「……おまえ、名前は?」
「……犬井、司」
「よし司、おまえに食い物をやる。この胸糞悪い場所からも出してやる。今までよく頑張ったな」
懐から水の入ったペットボトルとチョコバーを出して司に渡してやる。司は震える手でそれを受け取ると、涙を零しながら夢中でそれに齧りついた。
「……同じバケモンでも、あのメイドとはずいぶん違うんだな。優しいじゃないか」
「これでも元人間だ。まだ人の心を失くした覚えはねえぞ」
それに、優しいというならこの金髪の少女だってそうだろう。さっき司を見て悲しそうな目をしたのを俺は見逃さなかったからな。まあそれを言ったらほぼ確実にムキになるから口には出さないがな。
そうして夢中で食事を続ける司に追加の食料を出してやりつつ、時間がないということを頭の片隅に追いやって、俺とマリーはこの憐れな人狼の少女の腹が満たされるのを待つのだった。
予約投稿の時間ミスで途中のをあげてしまい、マジすいませんでした。なんかもう色々ダメダメだな自分……。
完全に言い訳ですが、病院で抜いてもらった親知らずの所がこぶとりじいさんみたいに腫れ上がってしまったので、更新は月曜の夜にするつもりでした。何度も何度もホントすいません。
えー、次回あたりで創視点及び第一章終わるはずですので、もうちょっとお待ちください。ホントすいませんでした。