調停者と卑怯者
今日は午前中授業だった。まぁ、皆が帰るのを待つために屋上に来ているんだが…。しょうがないじゃないか、今日は部活も無しなんだから。部活が無しだと帰る連中も多いじゃないか。人が多い所は嫌いだ。ただでさえクラスに居るのも嫌なんだから。まぁ、2~3時間したら全員が帰る頃だろう。心地よい風が包んでくれる。ちょっと…眠ろう…か…。
カー…カー…カー…
やばい…寝過ごしてしまった。いやまさか夕暮れ時になるなんて予想外にも程があるじゃん。屋上…恐ろしい子…!まだ学校は開いているな。さぁて、帰るとするか。
ズドン…!パリン!
何かが崩れる音と窓ガラスが割れる音が聞こえた。急いで下に行って見るとあの時の悪魔っ子が瓦礫に埋もれていた。急いで瓦礫をどかし安否を確認する。
(まだ息はあるか…。)
砂煙の向こう遠くの上空に緋川守の姿が見えた。
(とりあえず、彼奴らが居なくなるまで、悪魔っ子を別の場所に運ぶか…。)
「………、ここは…?」
「保健室だ。
まだ休んでいると良い。」
「…なぜ助けた?」
「…は?」
「私は…人間じゃない。」
そんな台詞は漫画でしか聞いたことがないぞ。
「人間か人間じゃなかろうが関係ない。
まして、俺の周りで人を殺してもいないだろ。」
あぁ~、言っちゃった。
恥ずかしい~。
「…お前は、変わってるな。」
そういうと、少し笑った。やばい、可愛い。ただ、このほんわかムードを邪魔する音がした。
「メラース!
ここに居るのか!」
部屋の外から緋川守の声がした。
「ここか!」
緋川守が保健室のドアを開けた。
「ん?なんだ?」
緋川守の目には、ベッドに横たわる生徒がいた。
「ここに誰か来なかったか?」
「いいや、ただ廊下を走っていく音は聞こえたな。」
「…!
どっちに行ったか分かるか?」
「たしか…、あんたが来た逆に走っていったかな。」
「ありがとう!」
そう言って、緋川守は走って去った。
さて、とりあえず…。
「君は、もといた世界に帰れるのか?」
ベッドの下に隠れていたメラースが答える。
「いや、長期間休まなければ無理だ。
第一、先の戦いで歩けそうにもない。」
「そうか、だったら…。」
下にいるメラースにひょこっと顔を見せながら言った。
「俺の家に来るか?」