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凶運との邂逅

最近、学校にもようやく慣れてきた。朝の登校は遅く、午後の下校は早く。幸い、ここの学校は部活動は個人の自由らしい。素晴らしい学校なこった。で、肝心の昼休みはというと…。


「………はぁ。」


 屋上の出入口横のベンチで過ごしていた。ここは立ち入り禁止場所だから誰も来ないはずだ。屋根で陰が出来て陽は当たらないが、心地良く暖かい風が俺の思考を鈍らせる。眼前に広がるは学校周辺の街。親の作ってくれた5つ星の飯を食べる。実際、氷砂糖と水だけで良いが、この弁当のおかげで味覚は正常なままだ。ふと、遠くを見ると鎧を着た奴らときわどい衣装をきた褐色の悪魔っ子と戦っていた。案外視力は言い方なんだ。まぁとにかくあの集団に意識を向けよう。悪魔っ子の方は正直分からないが、鎧を着た奴らなら分かる。緋川守に青髪だ。ん?もう一人いるな…。黄色髪のロング…あぁ、初日に緋川守を誘惑していた女か。あいつは鎧を着ていないな。そういえば、辺りは暗くなってないが、連中が戦っているところはルビー色だな。ちょっと緋川守側が劣勢だが、悪魔っ子側は…余裕を見せた様子で帰ったようだ。あいつらも大変だなぁ…って、感心してる場合じゃない。早く食べないと授業に遅れる。




 今日も今日とて昼休みは屋上でランチタイムだ。友達は作らないのかって?作ったって面倒だ。個から集になるとすぐ他人を下に見ようとする。そんなのこの十五年間で身に染みたよ。何が正しいで何が間違っているかは今まで選択してきたつもりだが…いや、この話はまた今度にしよう。まぁ、良いだろう。昼飯を食べよう。


「………!」


 気が付くと、目の前の柵にもたれ掛かって外を眺めている金髪の女子がいた。どうやら俺に気づいていないらしい。気づかずそこまで行ったのか、逆に凄いな。


「…はぁ。

 なんで…。

 ………ひぃ!」


 どうやらこっちに気付いたようだ。てか、いきなり驚くのは失礼だ。


「あああ、あんた誰よ?!」


「あんたとは失礼だ。

 れっきとしたこの学校の生徒だ。」


「…名前は?」


 名前…か。名前は不便だ。名前を教えるとそれさえも脅しに使う。だとしたら…。


「…君、好きなデザートは?」


「え?」


「好きなデザートだ。」


何を言ってるんだみたいな顔するな。これは必要だ。


「えぇーと、スコーンだけど…。」


「じゃあ、スコーンと呼んでくれ。」


「…ふざけてるの?」


「ふざけていない。

 屋上は立ち入り禁止だからな。

 下手に名前を言ってばらされるのを回避する為だ。」


「そんなことしないのに。」


ムスッとした顔をするな。


「保証はないだろ?」


「そうだけど…。

 じゃあ、あたしは…。」


俺の弁当を見るな。


「パンがあるから、ブレッドって呼んで。」


「じゃあ、ブレッド。

 もう戻った方が良い。

 授業開始の五分前だ。」


「えぇ!

 早く行かなきゃ!」


ダッシュでさって行ったな。まるで台風だ。さて俺もそろそろ戻るかな。弁当は…、後で食べるか…。










悪魔の格好をした女子に突然私はさらわれ、とある廃工場で手足を縛らされて座っていた。


 最初は、昼休みに転校生と仲良くするアイツが気になったから後をつけただけだった。でも、いきなり現れた悪魔っ子に誘拐されてしまった。


「私を…どうする気?」


「どうするつもりもない。

 ただ、緋川守をおびき寄せる為の餌だ…。」


「餌ぁ?!

 なんであたしが…?!」


「誰でも良かったが、緋川守をつけていたのがみえたのでな。」


「あ、あああたしはアイツの事つけてなんかないし…!」


「嘘をつけ。

 大方、彼に恋しているが、別の女と仲良くしているのに嫉妬しているんだろ?」


図星だった。


「まぁ、そんなことはさして気にはしない。

 餌になってくれれば良いんだ。」


「一体、アイツがなんなのよ…。」


「そうか…、まだお前は見たことが無いのか。

 なら、おもしろいものが見れるぞ。

 もうすぐ…な。」


そう言い終わると、工場の扉がバタン!と開いた。



「メラース!

 とうとう追い詰めたぞ!」


「そうだな。

 じゃあ、変身してみてくれ。

 彼女の前で…な。」


あたしの目の前には、アイツがいた。


「か、薫!

 お前、一体どう言うことだ!」


「保険をかけるのは当然だろう?

 どうする?するか、しないか?」


「何ためらってんの!」


「…蒼咲さん。」


「早く変身しなさい!」


「でも…、薫を戦いに巻き込みたくない。」


「いま変身しないと全員死ぬわよ!」


何を話しているの?転校生と一緒に…。


「薫!

 この事はクラスの皆には内緒にしてくれ!」


 すると、アイツの身体が赤く燃え上がり、鎧を着ていた。


そして、転校生も水を纏い、アイツと同様、鎧を着ていた。


「…え?」


「やっと、したか。

 では…。」


悪魔っ子 メラースは、あたしを尻尾で巻き付ける。


「ついてこい!」


いきなり廃工場の屋根をぶち破り、大空へと舞った。


「キャアアアァァァアアア!!!」


下を見ると、アイツと転校生も空に舞い上がっていた。


「待て!」


「待てと言われて待つヤツがいるのか?」


アイツが剣で斬りかかると、メラースは両手の鉤爪で防ぎ、アイツの腹にキックする。


「おりゃあああ!」


転校生がメラースの背後を取ろうとするが、かわされそのまま、アイツの方へ押し流す。


「うわ!」


「おっと。」


アイツが転校生を抱き止める。


抱き…止めるですって~~~!


「大丈夫ですか?」


「えぇ。

 それより、まずは彼女の救出ね。」


「じゃあ、ゴニョゴニョ。」


「わかったわ。

 一か八かね。」


アイツがこっちへ突進してくる。


「うおおおぉぉぉおおお!!!」


「なんどやっても同じだよ。」


またメラースが両手の鉤爪で防ぐ。


「いまだ!」


メラースの後ろでいつの間にか転校生が剣を振るっていた。


「うぐっ…!」


その瞬間、私に巻き付いていた尻尾は離れ、重力に逆らえず落ちる。落ちる?落ちる!


「キャアアアァァァアアア!!!」


「おりゃあ!」


アイツがアタシを抱き止める。


「ふぅ、大丈夫か?」


「う、うん。」


「そりゃあよかった。」


メラースが、こっちに来る。


「あらら、油断していたようだ。」


「まだやるのか…?!」


「いやいや、流石に今日は疲れた。

 今日の所は、失礼するよ。」


そういって、メラースは去っていった。




「本当に悪かった。」


アイツが私に謝る。


「いいわよ。

 さっきから許すって言ってるじゃない!」


「いや…でも…。」


「まぁまぁ。

 落ち着いて、二人とも。」


転校生が仲裁に入る。


「どんな知り合いなのよ…?」


「いやぁ、いろいろあってな。

 怪人に襲われそうになったのを助けてくれたんだ。」


「そ、そう。」


「まぁ、その時たまたま、俺も力を持つことが出来たんだけど。」


「ふ、ふぅん…。」


長い間、会っていなかったからなのか、すごい遠くの存在に感じる。


「ありがとうね。

 転校生も。」


「当然の事をしたまでよ。

 でも、やっぱり素直に嬉しいわね。

 どういたしまして。」


笑顔でアタシに言う。


「じゃあ、もう授業の時間だから。」


その時のアタシは、これまで生きてきた中で、誰よりも小さい存在だと思った。

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