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悪魔の咆哮

帰り道には、また黄色い声が響いている。ふざけているとさえ思うが、多少、黒い疑心暗鬼が混じっている。結局、最初の衝突によって生まれる振動を受けた入れられる者のみが友人を手に入れられる。ただ、受け入れられない時は永久に離れなければならない。すると学校生活に支障があるかもしれない。その『かもしれない』が怖くて、お互いに衝突する前に衝突するか否かを判定する期間を儲ける。無意識にだ。ここがポイントだ。無意識は時に素晴らしく醜い事をする。ところで、俺はって?答えは…言わずもがなだ。無理に決まっている。人と話すと疑心にまみれて言葉が出なくなる。端的に、簡単に、一言で言うとしよう。俺は、




…コミュニケーション障害だ。




 気付けば、俺の周りには誰も居なかった。思考に集中していたらしく足が動いていない。


「…はぁ。」


 最近は溜め息しかついていない気がする。考え事をしていると体の動きが止まってしまう。悪い癖だが、これが良い時もある。昼休みとか休憩時間とか…。自分で考えてて泣きたくなるな。


「…帰るk…!」


 いきなりドンッ!という擬音が似合う空気に包まれた。風景は薄紫がかって空は雲以外は赤に染まった。はたから見ればオドロオドロしいがそんなことはない。空はルビーの様に輝かしく艶かしい。しかし、一体なにが?どうやって?なぜ?思考が追い付かない。どれも答えが出ない。


ガシュッ…デュク…バシュ…!


 金属と発泡スチロールがぶつかっている音がする。どうやら、次の信号を曲がったとこらしい。ゆっくり、密やかに、音をたてず。たどり着いた。そっと、顔をだして見よう。


「…!………?!……!」


 誰かが喋っていた。聞き取れないが、見たことのある鎧を着た赤髪が蜘蛛の怪人と戦っている。確か、緋川守だ。その横には見慣れない青髪がいる。青髪も鎧を着ている。


若干、蜘蛛の怪人の方が劣勢だ。胸が痛くなるのは、彼らは平等じゃないって事だ。緋川は剣を持って今にも殺そうとしている。しかし、蜘蛛の怪人はただ糸を吐くだけ。殴るわけでも殺すわけでもなく、ただ逃げようとするだけ。一体何をしたのだろう。しかも、糸には血が付いたように赤く、液体が滴っている。もしかしたら、蜘蛛の怪人はただわけもわからず此処に来てしまっただけではないか。彼らは蜘蛛の怪人に此処にいる理由は聞いたか?何も聞かずに殺そうとしているのか?怪人だから殺そうとしているのか?分からない、分かろうとも出来ない。いや、分かるんだ。自分の命がかかっているかもしれないとしたら、俺もするだろう。だが、頭で分かっていても、心が分かろうとしない。ただ、体が動かないだけなんだ。動かないだけ…なんだ…。


「グギャアアアァァァアアア!」


緋川が怪人に止めの一撃を繰り出したらしい。言葉になっていない言葉を発した怪人が爆発四散した。ただ、俺の目の前には、爆発四散する時に飛んできた金色のペンダントがあった。緋川が何か話している。ペンダントが何かを誇示するように開いた。緋川が怪人の死骸にやってくる。俺は、そのペンダントを持って走り去っていた。




ペンダントには、さっきの怪人の家族のような写真が嵌め込まれていた。




 目の前には、怪人が立っていた。俺は思わず尻餅をついてしまった。赤い瞳がこっちを見る。目が合ってしまった。




…殺される。




恐怖が喉を押し潰す。


「……ア……!」


怪人が何かを言いかけたその時、藍色の鎧を着た何者かが怪人の喉元を剣でかっ切った。


「ガフッ…!」


怪人が口から血のような物を垂らしながら、後ろに下がる。


「あなた、大丈夫だった?」


「ハ、ハハハ、ハイ!」


「だったら、早く逃げて!」


怪人が口から何かを吐き出す。


「怪人が…!」


「…?きゃっ!」


怪人が出した糸が鎧を着た女性を縛り、その場に俯けに倒れてしまう。その衝撃で剣を落としてしまう。


「うぐっ…!」


「大丈夫ですか!」


女性に駆け寄ると、こっちを向いて叫ぶ。


「早くあんたは逃げなさい!」


「!

 でも…!」


「でもも何もないわ!

 死にたいの?!」


「でもこのままじゃ貴女は…!」


「貴方に何が出来るの?

 いいから早く…!」


確かにその通りだった。


自分には何も出来ないし、そんな力も無い。でも…。


「でも…、もう目の前で誰かが死ぬのは見たくないんだ!」


その時、ネックレスが光輝き、彼の体を包み込む。


眩い光を放ったあと、そこにいたのは、赤い鎧を着た緋川守が立っていた。


「…!

 貴方、それは…!」


「…何だか知らないけど、これなら、アイツを倒せるんだろ?」


「え、えぇ。」


「だったら、話は早い。」


剣を持つ拳をギュッと握り、怪人の方に剣を向ける。


「さぁ、人助けだ!」


怪人が逃げようとする。

それを追いかけ、剣を振り上げる。


「でぇい!」


「…!」


 蜘蛛の怪人が剣に糸を巻き付けようとする。しかし、剣に触れた瞬間、切れてしまう。


「…?!」


「なぁ!何かを必殺技みたいなの無いのか?!」


「あるわ!

 柄の部分にある呪文を呼んで柄の宝石を押すの!」


「それなら!」


緋川は柄の部分に書かれた文字を叫ぶ。


「我共にあり!

 我懇願する!

 悪き魂を焼き払え!

 炎の民、サラマンダー!」


そして、宝石…ルビーを押す。すると、たちまち剣が炎を纏い、狼の頭を模した柄と鷹を模した剣が出来ていた。


「さぁ、フィニッシュだ!」


怪人に止めの一撃を喰らわせる。


「グギャアアアァァァアアア!」


怪人は断末魔をあげて、爆発した。


すると、鎧を着た女性を縛っていた糸もほどけた。


「ふぅ…、いっちょあがり。」


「まだよ。」


鎧を着た女性が立ち上がりながら言う。


「最後に、これを死骸にかけるの。」


そう言って、おもむろに鎧の下から取り出したのは綺麗な装飾を施されたガラスの瓶だ。瓶の中には液体が入っている。


「それは?」


「これは、ウンディーネに作って貰った聖水のような物よ。

 これを死骸にかけて浄化するの。」


死骸にかけると段々と溶けていく。


「なぁ、この鎧はどうやって脱ぐんだ?」


「あぁ、それならリムーブって言えば…ね?」


彼女の鎧が一瞬にして、消える。俺もリムーブと言い、鎧を消す。


「さてと、このあと暇?」


「はい、暇ですけど。」


「ちょっと着いてきてくれる?

 一応、報告しなきゃなんないから。」


「わかりました…、一つ教えてくれませんか?」


「ん?

 何?」


「名前聞いても良いですか?」


「あ、忘れてた。」


彼女は、ニッ!と笑って言う。


「私は、蒼咲八重。

 今後共々、ヨロシク。」

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