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HINA  作者: 瞳志
3/5

とある決意

「お風呂あったかーい!タオルでクラゲ作ったの、ほら!」

多分、2日ぶりの風呂だった。

ジーンが上がったあと、デュオに言われた通り風呂に浸かる。

ヒナがここまで機嫌がいいのも珍しい。

俺達に酷いことをした奴らは死んだ、あまりにもあっさりと。

そして、今こうやって生きている。

「お兄ちゃん、よしよし。」

突然ヒナに頭を撫でられる。

「どうした?」

ヒナは自分の額を俺の額に当てる。

「私はね、お兄ちゃん大好きだから。」

ヒナは笑ってる、傷だらけの体で。

俺を気遣った笑顔をしながら。

「お兄ちゃん、今まで頑張ってたんだよね。もういいんだよ。」

「……ヒナ。」

「私、わかってるよ。首を締めるときも、殴るときも、体に火をつけたライターを押し当てるときさえもお兄ちゃんは泣きそうになってたよね、辛かったね。私のことは気にしなくてもいいんだよ。」

「……。」

俺は黙る。泣きたくないのに涙が出てくる。

「これからどうしようか、美味しいご飯でも食べる?私といっぱいお話する?それともーーもっといいことする?」

誘惑するような眼差し。

「……。」

俺は黙る。

ヒナが俺を抱き締める。

ヒナに自分を誘惑させるように仕向けたのは、紛れもない俺じゃないか。

ヒナを大事にするつもりが、俺がヒナを傷つけている。今はただ1人の、俺がヒナを傷つけてる。

「上がろっか、あの2人が待ってる。ね?」

ヒナが声をかける。ヒナは優しい。

ヒナは悪くないのに、どうしてこんな目に合わなきゃいけないんだ。そう思うと、また泣いた。




風呂から上がるとジーンとデュオが片付けを終えていた。

2人とも珈琲を飲んでいる。

もう、アルコールの匂いはせず、2人の遺体もない。

「さぁて、もう少し仕事するか。」

「そうだな、お前まだ動けるのか?」

「私なら大丈夫、元気だから。」

ジーンは、そういうと俺達に鍵を渡した。

「君らにも手伝ってもらう、それはポケットにでも入れておいてくれ。ーー手錠の鍵だ。」

「どういうことだ?」

俺は鍵をポケットに入れる。

「そのまんまの意味!君たちには『商品』を演じてもらうよ。デュオ、向こうの返答は?」

「是非ともだとよ、さっそく今日からやってもらいたいって言っていた、機材はすべて用意してくれる。」

話が見えない。

「とりあえず、ほら。」

「……は?」

俺は手錠をされていた。

「トラック、荷台に乗ってもらう。」

「……。」

ヒナも手錠をされている。ジーンに連れられて俺は外に出ると、トラックの荷台に乗せられる。

「ほら、君も乗れよ。」

ジーンがヒナもトラックに乗せようとすると、

「お姉さん、お願いがあるの。」

「ん?」

「あのねーー。」

ジーンは耳を傾ける。その話し声は聞こえない。

「ーーそうかぁ、なるほど。少し考えさせてくれ。」

「うん、いいよ。できればのお願いだから。」

「できれば叶えてやりたいね。」

ヒナはうなずくと、トラックの荷台に乗る。

「なあ、何を頼んだんだ?」

「内緒、お兄ちゃんには。」

ヒナは俺にくっつくと、何か考え込み始めた。

「ーー私のこと、好き?」

「……ああ、とても。心から。」

「そっか。」

ヒナはそういうと何か決心したような顔をしていた。

それが怖かった。

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