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HINA  作者: 瞳志
2/5

オーディエンス

突然入ってきた左耳にピアスをした男に、俺は唖然とする。

「落ち着けよ、ほら。外してやったぞ」

男は俺にほとんど興味ないようだった。そして、ジーンの手錠を男は外した。

「助かった、デュオ。――服は?」

ジーンは男に渡された濡れタオルで体を軽く拭く

「男物しかなかった。脱衣場に置いてある」

「それで十分だ、さて」

タオルを投げ捨て、ジーンは俺を見る。

「ハハハ……」

思わず笑いがこみ上げた。俺はどうでもいいがヒナは大丈夫だろうか?

「連れていくんだろ、コイツら」

「まぁな、来るだろ?ヒナだっけ、あの子も一緒に」

俺は驚く。俺とヒナを助けてくれるのか?

「……あぁ、しかしなぜ俺らを?」

今さっき出会った相手を助けるのか?

「後から説明する、中々地下室にしては快適だったな」

ジーンは来ていたシャツを脱ぎ捨て上裸になる。褐色の肌は綺麗で無駄のない体つきだった。触ったときは男みたいに硬いと思ったのに。

「風呂入ってくる、片付けよろしくね。」

そう言うとジーンは地下室を出た。

「お兄ちゃん、どうするの?」

「……ヒナ。」

俺はヒナの手をしっかり握る。

「事情はわからないがここから出られるみたいだ、行こう。」

「うん」

俺はヒナと共に地下室に出た。頭から血を流して倒れている男2人がいた。左耳にピアスをした男がいた、人を殺した後のわりにはニコニコと笑っている。

「お前らも後で風呂入れ、それまでそこにいろ。俺は荷物まとめてくる――そうそう、俺のことはフレンドリーにデュオとでも呼んでくれよ」

デュオはそう言って笑う、そして他の部屋に出ていった。

俺とヒナは残される。

「死んじゃったね、あの人達。」

俺がヒナを殺しかけるまで殴らせたり、無理やりライターを押し当てて火傷を負わせるのを撮り続けた、あの2人はもういない。

だが、手の震えが止まらない。アイツがさっきまで飲んでいたであろう酒のアルコールの匂いが耐えられない。気持ち悪い。アイツから血が出ている。

あぁそうだ、いつだかヒナを切り裂くハメになったことがあって、その傷口に消毒液の代わりに酒をかけたんだっけ?

ヒナの服を無理矢理脱がせていたぶって……最後に酒飲ませて乱暴したこともあった。

酒の入ったビンでヒナを殴って、そのあと顔を水に沈めた。

アイツらの言うことを聞かなければ殺されてただろう、だがヒナをボロボロにしてしまった。ヒナは1回も俺に対して不満をもらしたことはない。

俺はなんてことをしてしまったんだろう、それなのにヒナを抱いたのだ。ヒナを慰めるつもりが、本当は自分を慰めたかっただけじゃないか。俺はヒナを殺そうとした。ヒナを傷つけた、全部俺が悪い。俺がいなければ良かった。

「……お兄ちゃん、お兄ちゃん!!!!!」

はっとする。気がつくと俺はソファーにヒナと寝転んでいた。 ヒナは涙目だった。

「お兄ちゃん、辛そうだった。」

ヒナは俺を抱き締める。

「ご、ごめん。しばらく隣にいてくれ。」

「いいよ、ずっといるよ。」

ヒナは優しい。俺は泣いた。

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