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初クエスト

ギルドカードを手に入れ、ゴブリン退治の依頼(クエスト)を受けた春大とエミリアはその足で街の外にあるゴブリンがいるという森へと向かう。


今朝通った北の門ではなく東門を通り、道なりに歩く。

30分ほどで森の入り口に着く。


高い木が何百本と生えており、下にはあまり光が入ってこない。まだ昼過ぎだというのに遠くの方は見えない。

ジメジメとした空気と視界が悪いことで嫌な雰囲気になる。


『こりゃ、予定より早く切り上げなきゃまずいかもな』


『そうですね。一応魔法で光はなんとかなりますが、早いうちに方をつけたほうがいいと思います』


春大はにやりと笑い、エミリアの方に鼻を近づける。

くんくん、と匂いを嗅ぐ。


『それに・・早く風呂に入りたいしな。さっさと終わらせて宿を取ろう』


『なっ・・!!』


この2日間、野宿に野宿を重ねていた為風呂などあるはずもなく、エミリアは自身の水魔法で軽く洗い流すという簡易的なものしかできなかった。

そんな身体の匂いを嗅がれ、羞恥で顔が完熟トマトのように真っ赤になる。

少し涙目になりながらうつむくエミリア。


『・・・はるとさん、いじわるです』


消え入りそうな弱々しい声を出す。

反対に春大はにやにやと笑う。


ぬふふ、可愛いやつよ


悪代官のようなセリフが春大の脳内に流れる。


なかなか顔を上げずにとぼとぼと歩くエミリア。

さすがにからかいすぎたかと思い始める春大。

エミリアが、急に顔を上げる。遠くを鋭く見据えながら警告する。


『ハルトさん、なにか前方から来ます。おそらくゴブリンだと思いますが。』


『ふむ、まっっったくわからん』


『鈍いんですよ・・・・いろいろ』


自信満々に言い切った春大に、呆れたような、どこか責めるように返すエミリア。さっきの意趣返しだろう。


しばらくすると、ガサガサという音ともに五匹ほど奴らは現れた。

そいつらは全身緑色の肌。額にある小さな角。赤く爛々とひかる目。獲物をみつけて歓喜に歪む口。

身体の局所には小汚い布切れを巻いており、手には錆びている短剣や長剣をそれぞれが手に持っている。


きたない。くさい。それが春大のゴブリンに対する印象である。


そのゴブリン達から強烈な臭気が漂ってくる。雑巾を腐った牛乳に浸し10日間放置したものにアクセントでおっさんの靴下をブレンドした特製 腐巾 のようである。いや実際にやったことはないが。


そいつらーーゴブリンはこちらを指差し、ギャギヤァと耳をつんざくような、高い金属音のような声を上げる。

完全にこちらを獲物と決めつけ、油断している。


あいつらが油断してるうちにやりますかね


先手必勝。早速ぶん殴ってやろうとエミリアの手を離し、勢いよく走り出す。

その春大の真横を、ぶぉおん!と何かがとんでもない速度で通り過ぎる。

固まる春大。


あれ、デジャブ?


そして目の前にいたゴブリンの一匹がやはり、ブゴッと豚のように声をあげ後方にぶっ飛ぶ。


恐る恐ると後ろを振り返ると、突き出しまた手を下げるエミリアがいた。


やべぇ、怒ってる。


おそらく春大の先刻の発言によるものだろう、かなりの怒気を感じる。


いきなり仲間がやられるとはおもっていなかったのだろう。何が起こった?という表情を浮かべ固まっているゴブリン。


次の瞬間、キャアアアアアアアアア!!

明確にこちらを敵と認めたのだろう。叫びながらこちらにむかってくる。元々ブサイクな顔が怒りでさらにエグいことになる。


即座に魔法を使おうとするエミリアを手で制する。

とりあえず戦ってみたい春大。


「ま、待つ必要もないし。こちらからも行かせてもおうかなっ!」


ゴブリンが春大の元にたどり着く前にこちから迎撃に移る。

そのスピードは目にも留まらぬ速さ、というわけではないがゴブリンよりかは遥かに速い。


ゴブリンもこちらに向かって走っているということもあり、先頭をはしるゴブリンと春大の距離が一瞬で詰まる。

勢いを殺さず、右ストレートにのせる。


グシャっという音ともにゴブリンの鼻が砕け散る。すこし、うしろに仰け反るゴブリン。


そのまま後ろからくる3匹も同じ要領で殴る、殴る。


ギギャァァァアア


全員鼻を砕かれ、手に持っていた短剣や長剣を落とし、痛みで地に伏せる。鼻を押さえるてから緑色の血がぼとぼと落ちていく。


「・・・完全に攻撃力不足だな。」


うんざりしながら、ゴブリンたちが持っていた短剣を拾い上げる。

そろそろ痛みになれたのか、最初に殴った一匹が起き上がり、自分に背を向けている春大に攻撃しようとする。

その手には再び拾った長剣。


春大に向けて一直線に向かってくる突き出されたその刃。


しかし、その刃が春大に届くことはない。

振り向きざまに身を低くし、前に出る。髪の毛の何本かが長剣にふれ、ぱらぱらと宙に舞う。


驚きで目を見開くゴブリン。その喉元に短剣を差し込む。ビクンと一回大きく痙攣し完全に生命活動を停止する。


そいつを倒す間に他の奴らも回復したようで立ち上がる。

アホの一つ覚えみたいに、春大の元にやってくる。その手には何もない。


「・・おっら!!」


二閃、三閃と奴らの喉元を切る。

少しの間生きていたが、すぐに倒れこみ動かなくなる。


「・・・ふぅ」



戦闘がひと段落したとこでエミリアが走ってくる。

傷の有無を確かめるように春大の体を触る。


『怪我は、怪我はないですか?』


『ああ、かすり傷もないぜ!』


『そうですか、よかったです。』


ほっと息を吐き、安心したように胸をなでおろす。


『しかし、攻撃力なさすぎるなおれ。なんか買わないとマズイな。でもお金ないしなぁ〜。この剣を使うか・・・錆びてるけど。なぁ、どう思うエミリア?』


自身のあまりの攻撃力のなさに若干落ち込みつつ、錆びた剣を見つめながらエミリアに話を振る。


『そうですね。やっぱり武器はいいのを使ったほうがいいと思います。わたしなら野宿でも構いませんし、宿代も装備にまわしますか?』


『い、いや、宿代なんて微々たるものだから、最初のうちはこの錆び短剣つかうよ』


恐ろしいことをさらっというエミリアに、慌ててかぶりをふる春大。


『暗くなる前にできるだけ稼ぐぞ。ちゃんとした所に留まるためにも、装備を買うためにも

とりあえず、ツノを剥ぐの手伝ってくれ』


『わかりました』


エミリアに短剣を渡し、自身も剥ぎ取りを開始する。


エミリアが魔法でぶっとばしてしまったゴブリンは残念ながらツノも粉砕されており、4個になった。それに気づいたエミリアは泣きそうな顔をして、ものすごい勢いで謝ってきた。

ブルーになったエミリアをなんとかなだめ、新たな獲物を探し森を歩く。


日が暮れ始め、あたりがより一層暗くなる

かなりの時間探しているがなかなか他のゴブリンに出会わない。


森と太陽の位置を確認する。


『ゴブリンを狩れなかったのは残念だけど、そろそろ戻ろう。どうも結構深くまで来たみたいだ』


周りをよく観察すると木の色が気持ち黒くなっているような気がする。


『・・・どうして、あれからゴブリンに遭遇しないのでしょうか?こんな奥まで来たのに』


『・・・さぁ、な。全滅したわけではないだろうな。なんせ繁殖力が異常に高いやつらだ』


嫌な予感がする。


『・・・戻ろう。なんか嫌な感じだ』


即座に進路を変える春大。


こうして2人は街に戻り、ギルドに以上のことを報告する。


なんとなく一回話した人の方が話しやすいので登録の時と同じ人を選ぶ。


『ーそれは妙ですね。ゴブリンが一定するいるから初心者でも稼ぐことができるのに』


何かを考えこむように目を閉じる受付の人。


そしてはっと思いついたように勢いよく顔を上げる。緊迫した顔持ち。固い声で春大とエミリアに告げる。


『・・・もしかしたら、ゴブリン・キングかもしれませんね。

一応ギルド長に報告してきます。2人は一応ここで待機していてください』


どこかへ走り去っていく受付の人。

残されたのは、何が起こっているのかわからず呆然とたっている春大とすこし緊張した顔持ちのエミリアだった。

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