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焼け落ちた  作者: たしぎ はく
オリジナル
9/12

ハッキョウ式

 私のカバンの奥底で、おもちゃの宝石がついた指輪が眠っているからだ。もしそんなことを自白しようものなら、イマナカさんは、嬉々としてそこを穴と狙ってくるだろう。だから、言い出せるはずがなかった。ゆえに、厳重に隠蔽した。隠して、何事もなかったかのように振舞う。

 それだから、ツジくんのポケットからおもちゃの宝石が出てきた時に。いったいなんなのかと、思ったのである。


 私はツジくんに語りかけた。


 私のカバンに、入れ忘れたと思った宝石を、偽造して、庇ってみせたのでしょう。理由? それは今から話すわ。


 私はツジくんのことが一年生からずっと好き。


 だったのに。ツジくんは、私のイジメに裏からこっそり加担している。おそらくは、私に大掛かりなドッキリをかけている。ツジくんに好意を抱かせることこそがワナなのだ。


天気予報士が予報を外すことなんてよくあることだ。だから、植木鉢が降ることだってあるだろう。でも、私は知っている。父の頭上に落ちた植木鉢のおいてあった四階の教室に、ツジくんとクボくん、イマナカさんがいたことを。


 悲しくて頭が追いついていないだけだよ、とツジくんは言ってくれたわ。私は言う。


 私はね、この時からもうすでに気づいていたの。あなたが、私へのいじめに加担していたことを。だから、父の上に植木鉢が降ったのだって、あなたたちの仕業。それをした張本人が慰めてくれるものだから、悲しいんだか滑稽なんだかよくわからなくなっちゃって、それでなんの反応もできなかったの。


 ツジくんは言った。


 違う! 違うぞ! 俺は、お前をたすけ――


 言葉を遮った。


 

 楽しかったか!

 お前ら!

 私をいじめていたすべての人間どもよ!

 私は無力じゃないぞ!

 だから見ていろ!

 どうせカメラかマイクで声はそちらに届いているだろう!

 だから見せしめにまず!

 私の前にいる!

 この最愛の!

 一年生の時からずっとずっとずっとずっとず――――っと好きだったツジくんを!

 この手で!

 殺します!


    ======

 

 これで最後、グランドフィナーレまであと少し。


     ======

 まず私は、あらかじめ(・・・・・)用意(・・)して(・・)いた(・・)包丁で、ツジくんを刺した。心臓は筋肉の塊で、私みたいな非力な女性では容易に貫けない。だから、喉を掻き切った。つぎに足の付け根。最後に脇。

 計五か所を切りつけて。


 簡単に絶命してしまったツジくんを見て、ただ純粋に興奮した。人の命を一つ、無為に消したという全能感に酔いしれた。

 それから、なんの未練もなくツジくんに火をつけてから。

 ツジくんの握り締められた手を開いてみた。


 なにも、握られていなかった。


     ======


「あああああああああああああああああああああ!」


 服にも火が移りそうだ。最高に気分がハイになったので、思わず叫んだ。あまりの興奮に、体中のあらゆる体液をぶちまけて、そこらをびくんびくん跳ね回りたくなる。

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