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焼け落ちた  作者: たしぎ はく
オリジナル
8/12

ソツギョウ式(火事)

 書きなぐる。髪の毛が焦げるのも厭わずに。


     ======

 ツジくんは言った。


 俺、新聞配達のアルバイトしてるんだ、と。

 いつもは三時くらいから配り始めるんだけど、今日はちょっと早めに終わらせて出てきた。もしかしたら君が起きてるかもしれないと思ったから。

 

 それで、一体何の用?


 私は言った。


 ツジくんは恥ずかしそうに後ろ手でゴソゴソしながら言った。


 俺、告白しに来たんだ。


 私はいった。


 へえ、誰に?


 ツジくんは、右手は体の後ろのまま、左手で頭を掻いて言った。


 君にだよ。俺は君が好きなんだ。今日は卒業式だから……。つい先走って、こんな時間に来ちまった。でも、好きだ。よかったら俺と、付き合ってください! お願いします!


 私は言った。頬を赤らめ、興奮絶頂といった様子のツジくんに。


 もちろん構わないわ。


 ツジくんは驚いたような、歓喜と達成感が入り混じったような顔で頷いた。


 でも、と、私は言った。


 条件があるわ。難しいことじゃない。


 ツジくんは言った。


 なに? と。


 だから私は言ったのだ。


 ちょっと、私のひとりごとに付き合って。


 ツジくんは。


 あ、ああ、それくらいでいいなら喜んで!


 地獄の釜は開いた。

     ======


 髪が焼ける匂いに顔をしかめる。あと少しだ。あと少しで、私の独白は終わる。


    ======

 そうね、まずは。


 私は言う。


 今ツジくんが後ろ手に持っているものを当ててみましょう。指輪? 花束? なにかしら。まさかラブレター?


 ツジくんが言った。


 今日はどうしたの? そんな変な喋り方で。普段より饒舌だし……


 私は言う。歌う、上機嫌に。


 私は、ずっとこういう喋り方をしていたはずよ。気づいていなかったのかしら? あんなにも長い時間を一緒に過ごしたのに。

 それに。

 話を逸らさない頂戴。私は、今、独り言に付き合ってもらうと言いながら、ツジくんに質問したの。だから、この一瞬は会話よ。まさか普通の会話にも付き合わないつもり?


 ツジくんは言う。


 つ、付き合うよ! これはね、その、ばれてしまって形無しなんだけど、その、君にプレゼントしようと思って。


 私は更に言う。


 そう、なら、楽しみにしているわ。

 それなら次に、そうね、ツジくんが、私の部屋に取り付けたものについても聞いてみようかしら。


 ツジくんは狼狽して言った。


 つ、つけてねぇよ! さすがに……えっと、その、……ぁ、女子の部屋にカメラなんか取り付けたりするわけないだろ!


 そう、と私は相槌を打った。まるで独り言じゃないけれど、ここからがひとりごとだ。ツジくんに何を言われようとも、独り言は独り言。

 今から、ちぎりとった日記を貼り付けていく。だいたい同じような内容のことを言ったので、時間短縮になるはずだ。

 私は、おもちゃの宝石を、実は(・・)持って(・・・)いる(・・)

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