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焼け落ちた  作者: たしぎ はく
オリジナル
7/12

三月一日~三月一一日

 ページをむしる。下半分が不完全にちぎれた。

 また数ページ飛ぶ。一気に三月も終わりの終わりだ。


     ======

  三月一日(火)・   :晴れ《教室》


 ツジくんは私を慰めてくれたけれど。

 私はそれに素直に答えることができなかった。

 そういえば、父が死んでから、まだ泣いていなかった。

 私は、入学した時より段々と冷淡な人間になっているのかもしれない。そう言ったら、悲しすぎてまだ頭が追いついてないだけだよ、と優しく言ってくれました。

     ======


 またちぎる。

 あと二ページしか残っていない。


     ======

  三月十日(木)・卒業式の予行演習:晴れ《体育館》


 明日は卒業式だけど。

 私は乾燥しているから、泣かない。涙なんかでない。いじめからは解放されるだろうから、喜びの涙くらいなら出してやっても良いが、それも難しいだろう。


 クボくんの告白を断った私に嫉妬したイマナカさんだったけど、実は、三年生の夏休みくらいから付き合い始めている。

 それなら別に、私をイジメること、その理由もないのではないかと思うのだけれど……


 お前を見ていると腹が立つ

 暗い

 キモい

 臭い


 イジメるのに、理由なんていらないようだ。

 どうせ明日は卒業式で、クボ&イマのバカップルにももう会うことはない。あと一日辛抱すればそれで

     ======


 そこが最後のページだった。

 次のページは白紙。

 だから、だから。


 私は。


 そこに、ペンを立てる。

 今日の日付を書き、何が起こったのかも書いてゆく。


 むしってちぎって持っておいたページが手のひらの汗で少し湿ってしまっていたけど、関係ない。あとは、書くだけだ。書いて張るだけだ。

火の手はもうすぐそこまで来ていたけれど、私は、火の手なんてそっちのけで文字を書き連ねていく。

 ペンは白の海を泳ぎ、黒く汚していく。


 さぁさぁ皆様お立合い、されど目は逸らしゃんせ、これは見世物ではありません、ただのお目汚しに御座い――


 いつか図書館で読んだ小説の、道化の言葉(セリフ)が、口をついて出る。。

 確認しなくてもわかる。


 嗤っている。笑っている。己の全身全霊を賭して笑っている! 

 馬鹿みたいに! 楽しそうに! 三年間溜められてきたすべてを吐き出すがごとく!

 狂ったような笑い声が遠くで聞こえた。


     ======

  三月一一日(金)・ソツギョウ式:火事《地獄》


 朝方……いや、深夜? とにかく夜遅くに、だ。

 たぶん四時くらいだったと思う。

 ツジくんが我が家にやってきた。

 こんな非常識な時間にごめん。電気ついてるのが見えたから……

 申し訳なさそうに笑うツジくんを、私は部屋に上げた。彼が来るのはなんとなくわかっていた。こんな時間に来るとはさすがに思わなかったけど。

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