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焼け落ちた  作者: たしぎ はく
オリジナル
5/12

七月一六日~八月三日

     ======

  七月一六日(水)・   :晴れ《図書館》


 おもちゃの宝石は俺が盗んだ。

 ツジくんが唐突に言った。

 胸ポケットから、本当に宝石を出して見せた。だから悪いのはこいつじゃない、こいつをいじめるのはやめろ、私を指差して言った。

 イジメラレテなんかない! 


 そう叫びたい気持ちになった。でも、私はみじめに俯くしかなかった。

 イマナカがムカついたからやった。ツジくんはそう言った。私は、よくわからなかった。どうしてツジくんがそんなものを持ってそんなことを言うのかが。

 なぜなら、

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 これ以上はページが燃えて読むことができない。いや、目を凝らせば読めるかもしれない。それを私はむしる。

 ここから先は、ごっそり半年分以上のページが落ちているようだ。次の日付は五月一二日になっている。

 三年生になってからの日記帳。だんだん今に近づいてくる日付。


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  五月一二日(火)・   :雨《家》


 イマナカとその取り巻きが同じクラスになったと悲しんだ始業式から、一か月ほど過ぎた。

 もちろんイジメは続いている。でも今はもう平気。ツジくんが私を守ってくれるから。ツジくんが私を助けてくれるから。

 私はやっぱりツジくんのことが好き。これは一年生から変わらない。

     ======


 そこでページをちぎり取る。


 携帯が鳴った。

 初期状態からまったく変えていない着信音。待ち受けすらもデフォルトのままだ。送信者の名前を確認して、電源を切る。

 携帯は高校の合格祝いに買ってもらった。

 どうせメールや電話をしてくる人間などいない。先ほどのメールだって、ただのダイレクトメールだった。


 ページの下半分がちぎれてしまった日記をめくる。

 どうやらまた飛んでいるらしい。三年生の一学期はたったの一枚、次は夏休みだ。


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  八月三日(月)・   :晴れ《川》


 私たちの街には、遊泳ができる川があります。

 水は澄んでいて、川底もやわらかい砂。町を真上から見て北側が岸、南側が山。西から東に水が流れています。

 草は南側に少量生えている程度で、川幅は二十メートルくらい、西から東に百メートルくらいが遊泳可能エリアです。

 つりが禁止で、ポイ捨てなんてさせないとばかりに近くにはたくさんのごみ箱。


 今年は、ツジくんに誘われて川に来ました。

 急だったのでスクール水着しか用意できませんでしたが、ツジくんは私が来てくれたことに喜んで、言及はされませんでした。

 最近は、こうしてよくツジくんに誘われて遊びに行きます

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