七月一一日~七月一五日
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七月一一日(金)・ :晴れ《図書館》
あいかわらず教室はうるさかった。
おもちゃの宝石なんて私は盗んでいない、というかそもそもそんなものに価値を見いだせるようなお子様ではないし、ペットのインコを殺したりなんかもしていない。
チーは、私が家に帰ったら玄関の上り框で冷たくなっていたのだ。
父は猫に食われたとか何とか言って形だけの同情をしてくれたのだけど、そういえば、父の言葉を聞いてからくらいからです、私の周囲に雑音があふれ出したのは。
死ね。消えろ。なんで学校に来ているの。どうして生きているの。楽しい? 嬉しい? なら死ねば。
最近は、何を言われてもあんまり悲しくない。かも
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上り框。
別に気にすることではない。
一年半と少し前の話なのだから。
火の手が階段を舐め始めた。
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七月一四日(月)・ :晴れ《図書館》
いい加減お前ら見てて鬱陶しいんだよ、やるならよそでやれ。
その一言を、はたして私は待ちわびていたのでしょうか。もしそうだとしたら、それはそれで、なんか私が卑怯者みたいでいやです。
私は弱くない。
それはともかく、私には今日、救いの手が差し伸べられました。救い、と表現することには非常に違和感があるのですが、恐らく間違いではないと思います。結果として、私へのいじめがほんの少しだけ軽減されたのですから。
今日は、無視と、私の席に給食が配られなかったことくらいしかありませんでした。
結果的に救ってくれたツジくんには、感謝の気持ちを表すべきかなぁ。なんか複雑な気持ち
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そうだそうだ、ツジくんがついに立ち上がったのだった。
きっと嬉しかったのだろう、でも自分がいじめられていることから少しひねくれてて、誰かに守られるなんてまるで自分が弱いみたいで。認めたくなかったのだろうということが文面からなんとなく察せられる。
この時はまだ、ツジくんのことを好きだったのだろうか。
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七月一五日(火)・ :晴れ《図書館》
ツジくんのことは好きだった気がする。
一年生から同じクラスで、出席番号順で並んでいる今の席順だと、私の右斜め前の席に座るツジくん。
今日も、横か後ろの人に見せてもらえばいいのに、忘れたからってわざわざ私の教科書を借りたし。私のことを無視しない人が教室にいる。叫んで、殴って蹴って、暴れて拒絶したかった。
自分がひどくみじめなケモノな気がして涙が出てきたから、走って図書館に逃げ込んだ
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ああ、なんだ。
どうやら、まだツジくんのことは好きだったらしい。しかし揺れている。
ページを繰る。そろそろ背中が熱くなってきた。火は、階段の真ん中あたりを舐めていた。




