四月十日~七月七日
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四月十日(木)・春季休暇課題テスト:はれ《いえ》
好きだと告白された。
でも、私はツジくんが好きなので、断っちゃいました。
クボくんは悲しそうな顔をしたけれど、でも、諦めてくれたようです
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ページが一枚、音をたてた。
紙を握り潰す音だ。そのまま手を開くと、一枚、紙が落ちた。
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四月一一日(金)・とくになし:あめ《図書館》
可愛い子ぶりっこだと言われた。
無視された。
机に死ねと書かれた。
クボが可哀相だと思わないのとののしられた。
同じクラスになったばかりのイマナカさんに髪の毛をつかまれた。
わたしはクボくんが好きなの、そう言って叩かれた。
私の意見は、自由は、可哀相はどこ?
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ページに、なにかに濡れた後乾いたような皴が走っている。
土曜日、日曜日と読み流し、日付がまた月曜日になる。
そこで、火の手がこちらの足元にまで迫っていることに気づき、部屋を出て、二階廊下の壁に背を預けた。
きっとその時火の粉でも飛んだのだろう。
ページが、一部焼け落ちてしまった。
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四月一四日(金)・とくになし:あめ《図書館》
土日をはさんでも、私は無視されていた。
クラスの誰も、私と
目を合わ ない
話を いてくれない
クラスに、 の居場所はなかった。
私の居場所は、ほとんど誰も寄り付かない、学校のなかにある図書館だけ。
辞書を曳くと、憂鬱の漢字と意味が載っていました。
すごく、憂鬱
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ある水準を突破した火の勢いが、急激に強くなる。爆発したかのような炎に、たまらず階段をおりた。一階。
今度は日記は無事だった。
空の鳥かごが、空虚な瞳のように火を映して橙色をしていた。違う、これは己の目に映る炎の色か。
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六月六日(金)・なし:あめ《いえ》
死んじゃえ
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殴り書きのような筆致で、一言が書き込まれている。
インコのもの、鮮やかな黄緑の羽が挟み込まれている。
手にとって見ていたそれを、火に焼べた。火は階段を舐めはじめていた。
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七月七日(月)・七夕:くもり《図書館》
おもちゃの宝石。私は盗んでない
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また数ページが飛ぶ。
既に解けて火に食われたか、それとも誰かが破り去ったのか。わかるのは、ここに数ページ分の記録があったことだけ。なんと書いてあったのかも、もう定かではなかった。




