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焼け落ちた  作者: たしぎ はく
オリジナル
2/12

四月十日~七月七日

    ======

  四月十日(木)・春季休暇課題テスト:はれ《いえ》


 好きだと告白された。

 でも、私はツジくんが好きなので、断っちゃいました。

 クボくんは悲しそうな顔をしたけれど、でも、諦めてくれたようです

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 ページが一枚、音をたてた。

 紙を握り潰す音だ。そのまま手を開くと、一枚、紙が落ちた。


     ======

  四月一一日(金)・とくになし:あめ《図書館》


 可愛い子ぶりっこだと言われた。

 無視された。

 机に死ねと書かれた。

 クボが可哀相だと思わないのとののしられた。

 同じクラスになったばかりのイマナカさんに髪の毛をつかまれた。

 わたしはクボくんが好きなの、そう言って叩かれた。

 私の意見は、自由は、可哀相はどこ?

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 ページに、なにかに濡れた後乾いたような皴が走っている。

 土曜日、日曜日と読み流し、日付がまた月曜日になる。

 そこで、火の手がこちらの足元にまで迫っていることに気づき、部屋を出て、二階廊下の壁に背を預けた。

 きっとその時火の粉でも飛んだのだろう。

 ページが、一部焼け落ちてしまった。


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四月一四日(金)・とくになし:あめ《図書館》

 土日をはさんでも、私は無視されていた。

 クラスの誰も、私と


 目を合わ ない

 話を いてくれない


 クラスに、 の居場所はなかった。

 私の居場所は、ほとんど誰も寄り付かない、学校のなかにある図書館だけ。

 辞書を曳くと、憂鬱の漢字と意味が載っていました。

 すごく、憂鬱

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 ある水準を突破した火の勢いが、急激に強くなる。爆発したかのような炎に、たまらず階段をおりた。一階。

 今度は日記は無事だった。

 空の鳥かごが、空虚な瞳のように火を映して橙色をしていた。違う、これは己の目に映る炎の色か。


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  六月六日(金)・なし:あめ《いえ》


 死んじゃえ


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 殴り書きのような筆致で、一言が書き込まれている。

 インコのもの、鮮やかな黄緑の羽が挟み込まれている。

 手にとって見ていたそれを、火に焼べた。火は階段を舐めはじめていた。


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  七月七日(月)・七夕:くもり《図書館》


 おもちゃの宝石。私は盗んでない

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 また数ページが飛ぶ。

 既に解けて火に食われたか、それとも誰かが破り去ったのか。わかるのは、ここに数ページ分の記録があったことだけ。なんと書いてあったのかも、もう定かではなかった。


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