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もくもくもくも

作者: 石動 友

もくもく くもくも もくもくも。


 おそらに もくもくとした おおきなくも、もくもくもが うかんでいます。

 かぜに ふかれて、ゆらりゆらりと ながれていきます。


もくもく くもくも もくもくも。


 なっちゃんは なきむしで、いつも ないては、みんなを こまらせていました。

 あんまり なっちゃんが ないているものだから、なみだの つぶが あつまって、なっちゃんの あたまの うえに くもが できてしまいました。

 それでも なっちゃんは なきやまないので、くもは どんどん おおきくなって、とうとう なきむしなっちゃんは くもに のみこまれてしまいました。

「うわーーん。くもに なっちゃったよー。いやだよー。うわーーんわん」

 なっちゃんを のみこんだ くもは、ふわりふわりと そらに うかんでいきましたが、なっちゃんが ますます なきつづけるので、ずっと あめを ふらせる いやなくもに なりました。


くもくも ざーざー なっちゃんぐも。


 そんな なっちゃんぐもを みて、もくもくもが、いいました。

「そんなに ないて あめを ふらせてしまったら、みんなが こまってしまうよ。なきやみなさい」

 もくもくもに そういわれても、なっちゃんは なきやみません。

「くもさんだって、たくさん あめを ふらせているじゃない」

 なきながら、なっちゃんは いいかえしました。

「わたしたちは、かなしいから あめを ふらせている わけじゃないんだよ。

 あめが ふらないと、きや おはなが おおきく なれないんだ。だから、みんなの ために あめを ふらせているんだよ」

 もくもくもは、おそらを たびして、せかいじゅうに あめを ふらせているのです。

「みんなの ことなんて しらない! はやく もとに もどりたい!」

 なっちゃんは いうことを きかず、なきつづけました。

 なっちゃんが なけば なくほど、くもは おおきくなり、あめを ザーザー ふらせます。

 もくもくもは すっかり こまって しまいました。

「くもの せいかつも そう わるくは ないよ。ないて ばかり いないで、まわりを みてごらん」

 もくもくもは なっちゃんぐもを つれて、おそらを たびすることに しました。


もくもく くもくも ふたつならんで もくもくもくも。


 みんなを こまらせる なっちゃんとは はんたいに、もくもくもは みんなに すかれていたました。

「さあ、みんな あめだよ」

 もくもくもが あめを ふらせると、きや おはなは おおよろこんびです。

「ありがとう、もくもくもさん」

 おひさまが もくもくもに あいさつを します。

「もくもくもさん、こんにちは」

「やぁ、たいようさん、こんにちは」

 とりが もくもくもに はなしかけます。

「さいきん むこうでは あめが ふって いないようだから、いって あげると いいよ」

「ありがとう、とりさん」

 ときどき かぜが、もくもくもの かたちを かえてくれます。

「あ、あのくも、くるまみたいな かたちを しているよ」

 こどもたちが、うれしそうに もくもくもに てを ふります。

 もくもくもは そのみため どおり、とても りっぱでした。

 もくもくもと いっしょに おそらに うかんでいるうちに、だんだん なっちゃんは、なかなくなり、あめも ふらなく なりました。

 もくもくもの いうとおり、くもの せいかつは そう わるくは ありませんでした。

 おそらの うえは とても きもちが よく、のんびりと しています。

 なっちゃんの こころも、おそらの ように はればれとして、ひろくなって いきました。

 いままで なくほど いやだった ものごとが、なんだか なんでもないことの ように おもえてきました。

 そして、ないて みんなを こまらせて ばかりいて、じぶんは わるいこだったと きが つきました。

 なっちゃんが なかなくなると、くもは だんだん ちいさく なっていきました。

 すると、ふうせんが のぼってきました。

「あら、ふうせんだわ」

 なっちゃんは くもから てを だして、ふうせんを つかみました。

 したを みると、ないている こどもが います。

 きっと、このふうせんの もちぬし なのでしょう。

「わたしが、ないている あのこに ふうせんを とどけてあげよう」

 なっちゃんが そういうと、くもは ますます ちいさくなって、なっちゃんは ゆっくりと したに おりはじめました。

「ばいばい、もくもくもさん、ばいばい」

 なっちゃんは、 もくもくもに さよならを しました。

「さようなら、おじょうちゃん。もう なくんじゃないよ」

 もくもくもも、 なっちゃんに さよならを しました。


さよなら ばいばい もくもくも。


 なっちゃんが じめんに おりてきて、ないている こどもに ふうせんを わたして あげると、そのこは えがおに なりました。

「ありがとう」

 それから、なっちゃんは あまり なかなくなりました。

 でも、ときどき おそらを みあげては、また くもに なりたいなと おもうのでした。

 おそらには きょうも、もくもくもが うかんでいます。


もくもく くもくも もくもくも。


もくもく くもくも もくもくも。



おしまい

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