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追放シスターと放浪ゴブリンのもぐもぐ見聞録  作者: 風上カラス
第8章 勇者爆誕

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第91話 バーキッシュ=バーミリオン

「申し遅れました。私、皆様の案内を任されました、バーキッシュ=バーミリオンと申します。どうぞよろしく」


 バーキッシュと名乗る好青年(イケメン)は、丁寧に頭を下げる。拍子抜けたようにアリシア達もつられておじぎする。


「こちらになります」


 バ―キッシュに案内されたのは何もない広間(玉座ではなかった)――いや、奥になにかある。アリシアが目を凝らす。


「椅子――? 違う。人?」


「お気づきになりましたか?」


 いたずらそうな目でバーキッシュはアリシアを見つめる。そう言われてアリシアはハッとする。


「まさか、――リリア?」


 見覚えのある長い金色の髪と白い肌。椅子に見えたそれば、全裸で四つん這いになっているリリアだった。白い肌に黒い拘束具が食い込んでいる。顔は目隠しをされ、口にはさるぐつわがはまっている。長い間そうされていたのだろう。床には汗とよだれで水たまりができていた。


「そう、無様にも人間ごときに負けた、バーミリオン家の恥さらしさ」


 ドカッとリリアに(バーキッシュの)座るバーキッシュ(態度が突然変わる)。「ううっ」とリリアのうめき声が漏れ、胸の突起の先についている鈴がチリンチリンと音を立てる。


「家具がしゃべるな!」


 パァン!バーキッシュがリリアの尻を叩く。


 リリアがのけぞる。再び鈴の音が鳴り(豊満な胸が揺れ)、だらしなく口からよだれが垂れる。アリシアは見ていられないと目を逸らす。


「こんな……ひどい。やめて! バーミリオンって、あなた、リリアのお兄さんでしょ? どうしてこんなことを……」


「これはね――私の愛情だよ。仕事もろくにできない役立たずへのな」


 バーキッシュは無造作にリリアの髪を掴み、ゆっくりと頭を持ち上げた。目隠しを外すると、整った顔立ちの(金髪に紅眼。)兄妹が並んで見える(確かにそっくりだ)。だが、リリアの目には生気がなく、頬の色も失せていた。もはや抵抗する力は残っていなそうだ。


「私たちはね、勝ち続けなければいけないんだ」


 バーキッシュの声は低く、震えていた。


「それなのにこいつときたら、人間ごときに負けて、そのくせ平然と戻ってきて、友達だの何だのとほざきやがる。おかげであのリュートや、ガイラムって奴らに先を越されて、このざまだ――! くそっ、くそっ!」


 バーキッシュは立ち上がり、苛立ちをぶつけるように、リリアの腹部めがけて何回も蹴りを放つ。リリアは呻きながら床に転がる。


「やめなさいって言ってるでしょ!」


 いつの間にかアリシアが二人の間に入り、低い声で怒りを露わにした。普段の軽口は消え(アリシアは珍しく)、顔には真剣な決意が浮かんでいる。


「敗者は勝者に従う――それがバーミリオン家の掟だったよね……。では、バーキッシュ=バーミリオン、あなたに決闘を申し込みます」


「決闘――?」


 その言葉にバーキッシュの顔色が変わる。(リリア)へ八つ当たりしていた怒りが引っ込み、代わりに残忍な笑みが浮かんだ。


「人間ごときが、私に決闘を――おまえ、お客様扱いされて自分が偉くなったとでも思ったのか? それとも、この役立たずにたまたま勝ったことで、自分が強いと勘違いでもしているのか?」


 アリシアは拳を固く握りしめた。


「どちらでもないわよ。もしあなたが勝ったら、私を二つ目の椅子にするなり、魔王になるための交渉材料にするなり、好きにすればいい。――でも、私が勝ったら、リリアを解放するって約束して」


 バーキッシュは(こいつ、本気か?)しばらくアリシアの目を見返した。広間の空気が張りつめる。リリアは身体の自由が利かないまま床に転がって、小さな呼吸を繰り返している。


「ふん……愚かな気概だ。だが、いいだろう――お前が勝てば、妹は自由にしてやる。だが、お前が負ければ……」


 バーキッシュの言葉はそこで切れ、冷たい笑みをアリシアに向ける。アリシアは後退せず、決意を顔に(堂々とバーキッシュ)刻んだまま答えた(に対峙する)


「構わないわ。あなたの好きにしなさい」


「おい、アリシア!」


 アリシアの剣幕に口を挟む暇もなかったユキチが、さすがにその発言を聞いて止めようとする。だが、時すでに遅かった。


「その決闘、受けた! もし私が負けたら、この役立たずをおまえにくれてやる。ついでに、私自身もおまえの椅子にでも何にでもなってやろう!」


 バーキッシュの声が広間に響く。


「……え、えぇ?」


 ユキチが思わず(なんか今変な条件)素っ頓狂な声を上げる(を入れなかったか?)


「大丈夫、ユキチ。あたしに任せて!」


 アリシアは振り返ってウインクする。その無根拠な自信に、(いやおまえ、負けたら)ユキチは頭を抱えた(全部終わりなんだぞ?)


「いや、任せてって言われてもな……!」


 アリシアは頭の上にいたルメールをルイスに預け、軽い準備体操(ストレッチ)を始める。ギルとルイスも、顔を見合わせて(こうなっては見守る)黙り込んだ(ことしかできない)。不安は隠しきれない。


「じゃあ、準備はいい? バーキッシュ。ルールは――先に“まいった”って言った方が負けでいいかしら?」


 軽く肩を回しながら、アリシアは明るい調子で確認する。その軽さとは裏腹に、空気はピリついていた。


「もしくは――死んだら負けだ。そこまで大口を叩くんだ、自分の力不足で命を落としたとしても文句はないな?」


 アリシアは明るい調子のまま、あっけらかんと返答する。


「死ぬのは嫌だけど……それでいいわよ」


 広間に静寂が落ちる。ユキチはため息をつき、心の中でぼそりと呟いた。


(やれやれ……なんか面倒なことになったな。けど――アリシアは言い出したら止まないからな。しょうがない)

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