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追放シスターと放浪ゴブリンのもぐもぐ見聞録  作者: 風上カラス
第8章 勇者爆誕

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第89話 ジェネス大陸

魔王を倒すのは、いつも勇者。

そしてその時、ゴブリンは勇者になったのだった。


──聖女行伝 第8章「魔王と竜王」より

「うおっ! 覚悟はしてたけど、本当に寒いな!」


 それが、先陣を切って車から降りたギルの第一声だった。アルカナも寒かったが、ここの寒さはその比ではない。凍える風が頬を刺し(辺り一面雪景色)コートの隙間からも(着込んだはずなのに)冷気が入り込む(寒くてしょうがない)


「ほんとだ。ねぇ、見て! すごいよ、息が白い!」


 アリシアは楽しそうにギルに(寒さなんて気にしない)向かって息を吐く(。無邪気なもんだ)


「あぁ……わたしも、こんな風にブレスを吐けたらいいんだけどね」


 続いてルイスが遠い目をして息を吐く。ため息が白い霧となり(基礎体温が高いからか)ドラゴンブレスの(辺り一面に、すごい)ように空に舞った(量の霧が立ち込める)


 ぷるぷる……。ラムネは体を小刻みに震わせる。寒すぎるようだ。そっとルイスの足元にまとわりつく。


「なんか……義手の継ぎ目がめっちゃ痛む……。アリシア、例の魔法、頼めるか……?」


 転送魔法による魔力切れで、息も絶え絶えの(動くのも限界の)ユキチが、左肩をおさえながらよろよろと車から降りてきた。


「オッケー、任せて!」


 アリシアは右手を上げると、ユキチに新しく作ってもらった呪文を唱える。


「――極寒対策!押競饅頭!(サムサフキトバース)!」


 次の瞬間、肌を刺していた(あら不思議。寒くなく)冷気がやわらぎ(なったどころか)ふわりと暖かな風が(ほんのり暖かいくらい)パーティーを包み込む(の居心地の良さ)


「おおっ……すごい! 本当に寒くなくなったぞ!」


 ギルが驚きの声を上げる。


「うまくいって何より。それにしても……うふふ。ギル、その顔……!」


 アリシアは笑いをこらえようとしたが、どうしても吹き出してしまう。


「なんだよ、失礼な。なかなかのイケメンだろ?」


 ギルは胸を張り、得意げに決めポーズを取る。白い息が、鼻から蒸気のように吹き出す。


「ぶふっ!」


 思わず吹き出すルイス。こっちも笑いをこらえるのに必死だ。それも無理はない。ユキチの力で老化の効果を無効にしてもらったギルは、それまでのひげ面のおっさん(筋肉おじさん)から一転、精悍な二十代の(あんたは誰だ?)青年になっていたのだ(謎の好青年が爆誕)


 確かに、イケメンなのは否定できない。だが、それまでの包容力ある年長者の雰囲気とはあまりにもかけ離れており、旅を共にしてきた仲間の間では、違和感が半端なかった(もはや全くの別人)


「ユキチは本当にすごいな。おれの老化を解除してくれて、感謝しかないぜ」


 ギルは軽く拳を構え、パンチとキックの(軽くシャドー)コンビネーション(ボクシング)を繰り出す。心なしか動きにもキレが増していた。


「いいなあ、ふたりは。あたしなんて“魔力不足だから派手な技は向いてない”って言われちゃったんだから」


 ルイスが肩を(残念ながらブレス)がっくり落とす(を吐くのは無理)


「そんなこと言うなよ、ルイス。魔力消費なしで基礎ステータス倍増なんて、世の中から見たらチート級だぜ」


 ギルが励ますと、「そうよね」と、ルイスも少し照れくさそうに笑った。


「でも、一番強くなったのは――きっとラムネだよね」


 アリシアの言葉に、ユキチがうなずく。


「ちがいない。あのスキルの組み合わせは反則だ」


 ラムネが新しく編み出した技は、ラムネがもともと持っていたスキル――分裂・寄生・体力吸収・魔力吸収・ゴーレム操作を組み合わせた極悪コンボ。ラムネの分体が対象の体内に潜り込み、寄生しながら相手の生命力と魔力をじわじわと奪っていく。そして、体力が弱ってきたら、ゴーレム操作で相手の身体を自由に操る。


 通常の攻撃魔法は体内への攻撃(ミクロレベルの対処)を想定しておらず、体内に効果を発揮しそうな神聖魔法でさえ、ホーリースライムであるラムネには通用しない。唯一の対応策は――ラムネと同等の能力を持つスライムをぶつけて駆除すること。だが、そんな存在、この世にラムネくらいしかいないだろう。つまり――一度寄生されたら、死ぬ以外に方法はない(チェックメイト)と言ってもいい。


 ユキチはこのラムネの分体――(たね)と呼んでいる――を、メンバーそれぞれの武器や小手に仕込んだ。敵を傷つけた瞬間、ラムネの“種”が体内に入り込み、そこから先はもう、ラムネの餌食。どんな防御も、神聖魔法も意味をなさない。


「……容赦ないね」


 アリシアが(ラムネが世界を支配)肩をすくめると(できるんじゃない?)、ユキチは小さく笑う。


「あのリュートや魔王と戦うんだろ。こんくらいでちょうどいいよ」


 そう言いながらも、ユキチも苦笑いする(でもオーバーキルかな)


「で――寒くなくなったところで、どこに向かったらいいのかな?」


 アリシアが辺りを見回す。一面、見渡す限りの白、白、白。雪原に光が反射して、(そもそも、ここは)距離感すらつかめない(一体どこなのさ?)


「わるい。おれの地図も真っ白で役立たずだ……」


 ユキチも申し訳なさそうに白地図をしまう。が、ふと名案を思い付く。


「――あ! こんなときこそ、アリシア、おまえの出番だろ!」


「え、また私?」


「当たり前だろ。アリシアが俺たちパーティーの生命線だからな。頼りにしてるんだぞ」


「まったく……おだてたって何も出ないわよ」


 そう言いつつも、アリシアの頬がゆるむ(しょうがないなぁ)


「で、何したらいいの?」


「おまえの“巫女”の力で、どっちに進めばいいか占ってほしいんだ」


「え、巫女ってそんなこともできるの?」


「さぁ?」


「さぁって、ずいぶん無責任ね!」


「しょうがないだろ。聞いたこともないレア職なんだから。でもよ、アルドラの説明だと“神の声を聴いて民に伝える”とか言ってたろ? だったら、“神のお告げ”的な感じでいけんじゃねぇかな?」


 アリシアは(人ごとだと思って、)ため息をつき(適当なこと言って)、空を仰ぐ。雪雲の切れ間から(だいたい巫女って)うっすらと光が(なんなのよ。あたしは)差し込んでいた(シスターだっつうの)


「ずいぶん適当ね……。まぁいいわ。やってみるわよ――どうせ、他に手もないしね」


 アリシアは手を合わせ(巫女使いが荒いわね)、目を閉じて、集中する。


(神様のことばを――みんなに届ける――)


 そして、頭の中にひらめいた(その場しのぎの)呪文を唱える。


「――招福!無病(キョウノウンセイ)息災安産祈願(ナンジャラホイ)!」


 その瞬間、空から一枚の紙が、ひらひらと舞い降りてきた。


「え、なにこれ?」


 アリシアが慌ててキャッチし、読み上げる。


********

ユキチ=サイトーの今日の運勢:【大凶】


今日は何をしても裏目に出る日。でもくじけないで。

笑って過ごせば厄も逃げる。つらいときほど笑顔を忘れずに。


願い事: 焦って動くと逆風が吹く

待ち人: 来る。来なければ会いに行くべし

失せもの: 探しているうちは見つからぬ

旅立ち: するべからず。大事なものを失う

商い: 値切ると損をする

学問: しっかり時間を取るべし

相場: 焦って動くと逆風が吹く

争いごと: 沈黙は金、反論は泥沼

恋愛: まもなく好機が訪れる

転居: 厄介者が付いてくる。慎重にするべし

出産: できるが、とにかく安静に

病気: 長引くが、治る

縁談: しっかり話をきくこと


今日のラッキーカラー:白

********


「……なんじゃこりゃ」


 ユキチが絶句する。


「なんじゃこりゃって、どう見ても占いの結果でしょ? でもあんまり良いこと書かれてないわね。ユキチ、無理しちゃだめよ」


「そんなこと言われても、もう旅立っちゃってるし……。おれ、なんか大事なものを失うのか?」


 そんな風に言われると、なんだか不安になる。


「さぁ?」


 アリシアも(当たるも八卦、)首をかしげる(当たらぬも八卦)


「ま、とにかく探し物は“探しているうちは見つからない”らしいわ。――だからご飯にしましょう!」


「え、さすがにちょっと早くない? もう少し探索しよう」


 ルイスが冷静(そんな変なのに)にツッコむ(構ってられるか)


「それもそうよね。こんな開けた場所でキャンプもないしね……。じゃあ、結局どっちに行こうかしら。占いにも書いてないし」


 そのとき――


「キュイ!」


 ルメールが、珍しくアリシアの頭の上で鳴いた。


「え、ルメール。こっちに行きたいの?」


 アリシアがルメールが見つめる方向を指をさし、ギルが目を細めて周囲を見回す。


「……確かに。そっちの方額は魔素の流れが濃くなってる――気がする。だぶん」


「よし! じゃあルメールの勘を信じて、レッツゴー!」


 再び車に乗り込む一行。こうして、魔大陸ジェネスの探索は、序盤から見通しもつかぬまま――特にユキチは大きな不安(イヤなおみくじの結果)を抱えて幕を開けた。

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