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ゴーレム

 地鳴りが、とまらない(どんどん大きくなる)


「——っ!?」


 ユキチがとっさにアリシアの腕を引き、二人は警戒態勢に入った(状況を確認する)。遠くに見えるロシアナ大聖堂。その荘厳な建築(ランドマーク)が、雷鳴のような音とともに崩れ落ちていく(あっけなく倒れる)


「うそでしょ……」


 アリシアが、呆然とした(信じられないと)声を漏らす。その瓦礫が崩れる煙の中から、黒い影が現れる。それは——巨大な岩人形(ゴーレム)だった。


「……はぁ? なんだよアレ」


「見りゃ分かるでしょ。ゴーレムよ」


「いやいや、でかすぎるって。遠いからわかりにくいけど、ちょっとした丘くらいの大きさだぞ。」


 ゴーレムの全身は大聖堂の壁で構成されているようだ。ところどころにステンドグラスがはまっていて、キラキラ光っている(微妙におしゃれ)


「……なあ、アリシア。あそこ、頭に乗ってるのって……」


「——大司教……!? なんで……?」


 確かに、ゴーレムの頭にいるのは大司教だった。 遠くからでもよくわかる、あの白と銀の豪華絢爛(なんとも悪趣味)な装束《恰好》は大司教にしか許されないものだ。ゴーレムの額の部分にくっついているように見える。


「なんであんな危ないところに」


 アリシアがつぶやいたそのとき、ゴゴゴ……、と地面が揺れた。 ゴーレムが、ゆっくりと足を踏み出したのだ。


「お、おい……街に向かってるぞ……!」


「ちょっと待って、まさか——」


 巨体が一歩を踏み出すたびに、土埃が舞い上がる(大パニック)。 通りに並ぶ家屋がその衝撃で崩れ始め(屋根から潰れる)、街にも悲鳴と煙が上がる(人々は泣き叫ぶ)


「うわぁあああ!」


「こっち来るぞ、逃げろーーっ!」


 人々の怒号(大混乱)の中、倉庫の積み荷が崩れ(あっちも)馬車馬は暴れだし(こっちも)噴水が砕け散る(ひどい有様)。 ゴーレムはまるで玩具を踏みつけるかのように、街の一角を押し潰していく(行進を続ける)


「……なあアリシア……ひょっとしてあれが、“星の卵に迫る危機”ってやつ、なんじゃないの?」


「どうかしら……わからないけど、少なくとも私たちの寝床と晩ごはんの危機ではあるわね」


 ユキチが、揺れで地面に落ちてしまった、誰かが丁寧に焼いていた肉(おいしそうなステーキ)を拾って、軽くはたくと口に入れる。


「俺たちの俺たちの楽しい祭りを邪魔しやがって……やっちまおうぜ」


「ええ。ごはんの恨みは高くつくわよ」


 アリシアも肉を拾って食べる(怒りをあらわにする)




「はぁ、やっと着いた。近くで見ると、やっぱりでかいわね。」


 混乱する街を走りながら(結構疲れたけど)、なんとかゴーレムの目の前に到着した二人。


 まずは小手調べと、ユキチは足元に転がっているこぶし大の(ちょっと大きな)石をスリングにセットして、ゴーレムの巨体に向かって投げる。


 カンッ!


「……効くわけないよなぁ」


 ユキチは攻略の糸口を探る(正攻法はあきらめた)


「任せなさい!——壮絶!小指致命傷タンスノカドニアシノコユビガ!!》」


 アリシアの神聖魔法《呪い》が、ゴーレムの足先へと突き刺さる。


「今よ、ユキチ!あいつの足の小指はかなり弱ってるはず!」


「わかった!……ってなぜ足の小指!?」


 ユキチは跳びかかり(首をかしげながら)、ゴーレムの足の小指らしき場所にナイフを突き立て——


 カンッ!


「っ……だめだ、刃が通らねぇ!!」


「おっかしいな〜……あ、そうか。ゴーレムは無機物だから、回復魔法をベースにしたあたしの魔法が利かないのかも」


「もっと早く気づけぇ!!」


「ごめん。でも思い出した!ゴーレムの弱点は核よ、ユキチ。核を破壊すればゴーレムは崩壊する!」


 胸を張って(自信ありげに)ゴーレムを指さすアリシア。


「核って言われても、あのでかい図体のどこにあるんだよ!」


「決まってるじゃない。こういうのは頭にあるって相場が決まってるわ!」


「なんか胸にあってもおかしくなさそうだけど」


「額の文字を消しても倒せるって何かの歴史の本で読んだ気もするから、弱点は頭よ!間違いない!」


「えぇ……でも頭って、大将(大司教)がちょうど貼りついてるぞ。」


「そういうこと!つまり、大司教が核なのよ!さっ!そうと決まれば、ユキチ、やっちゃいなさい!なんかあっても、それも運命……!神のみ心のままに——死んだらごめんねっ、大司教様ッ!!」


 よくわからない言い訳(ぐだぐだなお祈り)を始めるアリシア。


「うわぁ……大司教様、俺は悪くありません。悪いのは全部このへべれけシスターです……」


 ユキチはぶつぶつつぶやきながらゴーレムの腕を軽やかに登り、肩の上へ。額の大司教に動きはない(は気づいていなそうだ)。 速攻でナイフを構えながら大司教に蹴りを繰り出すが——


 つるっ!!


「ぐっ……!? なんだこれ……防御魔法か?でもぬるぬるしてる!?」


 大司教を囲っているバリアのようなそれはユキチの攻撃を受け流すと、ぷるぷる震えている(シャボン玉みたい)


「この感触……まさかスライムか……!?ひょっとして野生化したラムネの片割れ……?なんでここにいるんだよ……」


 ユキチが攻撃しているにもかかわらず、大司教は一言も発さず、ゴーレムの額でじっと虚空を見ている(まさか死んでないよな)。よく見るとその手には、一冊の本—— 黒い革の表紙(重々しい造り)見覚えのある装丁(物々しい飾り)あの地下図書館で見た(鎖でぐるぐる巻きの)禁書と同じもの——が抱えられていた。


「……それって……まさか……」


 ユキチの目が、本のタイトルを捉える。


どすけべシスター(意味は分からないが) ローション地獄(大変いかがわしい)


「……………」


「なんだそれ!!!」


 思わず絶叫していた(本当になんだそれ!)。ゴーレムの上でユキチは両手を広げて天を仰ぐ。


「この教会、まともな本がひとっっっつもねぇ!!!」


 下でアリシアがユキチの叫び(断末魔)を聞きつける。


「ちょっと!?大丈夫!?大司教はどうなってんの!?」


「すまん。ちょっと動揺した!俺は大丈夫だ!」


 ユキチは気を取り直し、態勢を整える(大司教に向き合う)。もう一度、今度はナイフで攻撃する。だがやはり、バリア(スライム)が邪魔して、ユキチの攻撃をはじく。ラチがあかないと踏んだユキチは、一旦アリシアの元に戻る(ゴーレムの足元に戻る)


「スライムが守ってて、俺の攻撃、全然通らねぇ……!」


「スライムが?」


「あぁ、なんとなくだけど、野生化した方のラムネだと思う。」


「さすが大司教……。一筋縄ではいかなそうね。一旦引いて、作戦を練りましょう」


「……わかった」


 悔しそうにユキチが応える(ゴーレムを見上げる)


「必ず止めてやるからな、それまで一人でぬるぬるしてな!変態野郎!」


 一時撤退《今に見てろ》。 勝つためのヒントは(次は)必ずどこかにある(絶対に勝つ)

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