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追放シスターと放浪ゴブリンのもぐもぐ見聞録  作者: 風上カラス
第7章 サミット開催

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第80話 グリル・ド・ヴァンブラン

「いやー、この店、あたりだね! すごいよ、ユキチ!」


 アリシアはミディアムレアに焼かれた肉をフォークで突き刺し(上品とは言えないが)、口いっぱいに頬張る。脂の香りと肉汁が口の中で弾け、満足そうに目を細めた(もう死んでもいい)。テーブルの上には、ステーキのほかにも、チーズがたっぷり(食べても、)かかったサラダや(食べても)ソテーされた野菜が(幸せが)並べられている(いっぱい)


 個室を用意してもらったので、ラムネもルメールも他の客の視線を気にすることなく、落ち着いて(最高級のお肉を)ステーキを食べている(パクパク食べている)。まぁ、彼らはもともと他人を気にする性格ではないが。


「へへ、喜んでもらえて何よりだ。スコア4.8は伊達じゃないな」


「本当に。こんなおいしいお肉、初めて食べた! それにしても、便利すぎるわね。その地図! あたしも欲しいくらい!」


 フォークをくるくる(はしたないですよ。)回しながら(アリシアさん)、アリシアが興奮気味にユキチに食いつく。ユキチはナイフで肉を切り分けながら、肩をすくめた。


「あの地図はおれの職業、“トラベラー”の能力を利用したものだから、アリシアにはちょっと無理かもな……。あ、でも、アリシアの職業にあった魔法なら作ってやれるかも」


「え……! ほんと? って、あたしの職業、"巫女"ってよくわからないものだったけど」


 地図の魔法は使えないと聞いて、ガックシするが、後半のセリフで(感情がジェット)一気に機嫌が戻る(コースター状態)


「あぁ、それならアルドラから教えてもらったよ。巫女はね。お祈りをして神様と会話する職業なんだってさ。だから、そうだな……やってみないとわからないけど、神様のお告げとか、占い的なものとかならいけるかも」


「いいね! 占い! 他には何かすごいことできないの?」


 アリシアはパンでステーキの(気持ちは分かるけど)ソースをぬぐいながら(、下品ですよ)、興味津々の目を向ける。


「他にって言われてもな……おれもこの能力使えるようになったばっかだから、よくわかってないんだよ。でも、あまり目立ったことすると――だからさ」


 そう言ってユキチは、自分の首を(BANされて)切るジェスチャー(おさらばよ)


「なるほどねー。なんかその感覚、あたしのオリジナル魔法に近いかも」


 アリシアはグラスをくるりと回し、うっすら笑う。


「やりすぎるとうまくいかなくなるから、ほどほどを狙う感じ」


「オリジナル魔法?」


 ギルが聞きなれない単語に反応する。アリシアは「あっ」と小さく口を開き、視線をそらした。だが、観念したように(仲間に隠し事)笑って肩をすくめる(はできない)


「まぁ、ギルならいいか。あのね、あたし神聖魔法を研究してたら――対象をくしゃみさせたり、小指の痛覚を過敏にしたりする魔法ができちゃったの」


「……どんな研究してたのよ。ほとんど呪いじゃない」


 ルイスが思わず吹き出す。


「え? ギル気づいてなかったのか? 結構頻繁に使ってたけど」


「……いや、なんか魔法唱えてるな。とは思ってたが、まさか神聖魔法を改造していたとはな。――知ってたら止めてたぜ」


 ユキチの問いに、ギルはフォークを持つ手を止め、難しい顔で(そういえばこいつ)アリシアを見つめた(教会の偉い人だった)。ランタンの明かりが、その瞳に揺らめく。


「なるほど。神聖魔法を……そのような使い方をするとはな」


 一瞬の沈黙。アリシアの背筋が(う、怒られ)ピンと伸びる(るかな……?)。内心ひやひやしながら、笑ってごまかそうと口元を引きつらせる。


 だが――返ってきたのは、意外なひとことだった。


「すごいな! そんな発想、おれにはできなかったぜ!」


「えっ……?」


 驚くアリシアをよそに、ギルは笑って人差し指を口に当てる(秘密のジェスチャー)


「まぁ、教会的にはちょっとマズいから、おれたちだけの内緒にしとこうぜ」


 そう言って、ニカッと歯を見せて笑う。その笑顔に、アリシアはようやく息をついた。


「よ、よかった……てっきり説教されるかと思ったよ」


「何を言う。探究心は人間の一番大切な気持ちだろ!」


 ギルはジョッキを軽く掲げる。


「他人に何を言われようが、好きなことはやったもん勝ちだぞ」


「……ギル、いいこと言うじゃない。でも、だからって、飛行テストに他の人を巻き込まないでくれよ……」


 ルイスもにんまりと笑ったが、昼間の“エア・グライダー事件”を思い出して、またテンションが下がる。


「あぁ! あれはごめん! でもできると思ったからさ! 実際できたし!」


 ギルは慌ててフォローするが、正直ルイスには(ルイスには言い訳)全く響かない(以下のたわごとだ)


 そんな中、アリシアはすでに別のことに気が付いてしまった。


「ねぇユキチ」


「ん、なんだ?」


「前にさ、あの光の魔法、作り直してくれたじゃん?」


「あぁ、アリシアビーム(ラ・ルース)な」


「あれ、すっごく使いやすくなったの! ……もしかしてさ、他の禁呪系の魔法も、あたし用にカスタマイズできたりする? ってか、今アリシアビームって言った?」


「……言ってないよ。ってかアリシア、おまえ、禁呪を使いこなして世界征服でも狙うつもりか?」


「ちがうちがう!」


 アリシアは両手を振って否定する。


「これからあのリュートと正面切って戦うことになるなら、使えるものは全部使いたいなって思っただけ」


「まぁな……気持ちはわかるが、禁呪ねぇ。できるできないで言ったら、たぶん――できる。魔法を一から作るのは時間かかるけど、既にある魔法なら改良は早いかもな。威力が落ちるかもしれないけど、考えておくよ」


「ほんとに?」


 アリシアの瞳がぱっと輝く。


「ついでに、アリシアのオリジナル魔法も強化できるかもしれない。希望があれば言ってくれ」


「えー、ほんとにー!? じゃあ、はがれたかさぶたの裏に――」


「いや! なんだかわからないけど、聞きたくない!」


 アリシアが魔法の説明(恐ろしい話)を始めようとすると、ルイスから拒絶反応が出る。


「――地獄だな」


 その先を想像してギルも身震いする。その横で、ぷるぷると震えるラムネがテーブルの上に乗り、“ぼくにも何か魔法ちょうだい”とでも言いたげに弾んでいる。


「わかったわかった」


 ユキチが笑う。


「やりたいことがあればアリシアに伝えてくれ。アリシアの希望と一緒に考えておくよ」


「やったね、ラムネ!」


 アリシアがラムネを持ち上げると、ぷにゅっと音を立てて跳ねた。


 ユキチは続ける。


「ギル、ルイス。おまえたちも何かあれば言ってくれよ。できるかどうかはわからないけど、アリシアの言う通り、持ち駒は多いに越したことはない」


 ギルは腕を組み、少し考えてから口を開いた。


「ありがとう。考えてみるよ。……ちなみにだが、おれの身体強化魔法の“老化デメリット”をなくすとかもできるのかな」


「どうだろうな。――魔法の術式を直接見てみないとわからない。あとで詳しく教えてくれよ」


「助かる」


 ギルは静かに礼を言った。


「じゃあ、わたしは!」


 ルイスが勢いよく手を挙げる。


「ルメールみたく、ブレスを吐きたい!」


「ブレス……って、ドラゴンブレスか?」


「うん! めっちゃかっこいいじゃない? 炎でも氷でもいいの、何か吐いてみたいの!」


「そ、それはなかなか難易度高そうだな……」


 ユキチは苦笑しながら頭をかく。確かルイスの職業は戦士。魔法力も低く、とてもブレスを吐ける(適正はない)ステータスではない(に等しい)


「ちょっと時間をくれないか。似たようなことができないか調べてみるよ」


「ありがとう! うれしいな!」


 ユキチの気持ちも知らず、ルイスは尻尾をぶんぶん振りながら、グラスの酒を一気に飲み干した。


「ルメールは……このままで大丈夫そうだな」


 ユキチが視線を向けると、ルメールはテーブルの下で丸くなって眠っていた。ステーキをたらふく食べたからだろう。小さな羽根がぴくぴく動き、寝息に合わせて尾が揺れる。


「寝る子は育つっていうけど、さすがに寝すぎじゃないか?」


「それがルメールの“充電”なんだよ、きっと」


「こいつの場合、充電しかしてない気がするけど」


 ユキチとアリシアが笑って肩をすくめる。そんな和やかな時間の中――突然、みんなの魔法の腕輪が軽く震える。


「シーキュー、シーキュー……」


 腕輪から聞こえるのはアルドラの声。ハセガワと連絡が(そろそろお食事)付いたようだ(タイムも終了)。アリシアが残ったご飯を慌てて口にほおばる。

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