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追放シスターと放浪ゴブリンのもぐもぐ見聞録  作者: 風上カラス
第7章 サミット開催

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第79話 聖都アルカナ

「ねー、どこの宿もいっぱいなんだけど」


「困ったな」


 不平たらたらの(おれに言われても)アリシアに(どうしようもない)困り顔のユキチ。アルカナはサミットが開催されるということで、辺りは各国の関係者で(いろんな国の人が)ごった返していた(行きかっている)街の中央広場には(これ幸いと)旗と看板が並び(屋台が乱立し)、屋台からは肉の焼けるにおいや、甘い香りが立ちのぼっている。


「こうなったら、先にハセガワにコンタクトとってみようか。うまくいけば宿も抑えてくれるかもしれない」


 そう言うと、ユキチは腕輪を(ちょっと近)口の前にもってきて(未来的なポーズ)、呪文を唱える。


「シーキューシーキュー、こちらユキチ。アルドラ、聞こえるか?」


 しばらくすると、腕輪から返答があった。


「ユキチさん、聞こえてます。どうしましたか?」


「アルカナに着いたので、ハセガワとコンタクトを取りたい。ついでに宿の手配も依頼したいのだが、可能だろうか」


「わかりました。少し時間がかかるかもしれません。ちょっと待ってくださいね」


「助かる。じゃ、先に夕飯食べてるよ。よろしく頼む」


「任せてください」


 通信が切れる感覚が腕輪に伝わってくる。


「ちょっと時間かかるって。先飯食おうぜ」


「すごい。今の会話、あたしにも聞こえてた」


「わたしも」


「すごい魔法だな」


 みんなこの腕輪の(なにこれ、)技術に感心する(すごすぎる)


「これ、ひょっとして別行動の時にも会話できて便利なんじゃない?」


「そうだな。戦いのときに別行動の仲間と連絡が取れるのはかなり便利だ」


「違くて! 混んでるお店の席取りに便利って話よ」


「あぁ……」


 残念な何かを察して(おまえは、そういう)遠い目をするギル(やつだよな)


「……そうだな。席取りに便利だ」


 みんな優しいまなざしをアリシアに向ける。


「……なんか今、バカにされた気がするんだけど?」


「気のせいだよ」


 ユキチが肩をすくめ、笑いをこらえる。そして話を戻してギルに質問する。


「ところでギル。大司教なんだから、ここには来た事あんだろ? どこかお勧めのお店はあるかな?」


「あ……アルカナに、おいしいお店は――()()()()?」


 ルイスが突然つぶやく。


「どうした、ルイス?」


「どこか悪いの?」


 ルイスの口から、彼女に似つかわしくないオヤジギャグが飛び出して、動揺する仲間たち(これは異常事態だ)


「……しにたい」


 ルイスはうつむきながら、(いまだに錯乱状態)耳まで真っ赤(のようだ)


「 ふふふ。おれは好きだぜ! ルイスのそのギャグ。でもなぁ、ここに来るときは、たいてい教会で食事を済ませるからな。すまん。街中の食堂はよくわからん」


 気を効かせて、話題を戻すギル。


「そうかー。しょうがないな。みんなは何が食べたい? アルドラには申し訳ないけど、観測所では味気ない食事しかなかったから、おれは正直がっつりと肉が食べたい」


 ルイスの状態を気にしながらも、ギルの話題の(肉を食えば)流れに乗っかる(何とかなるだろ)


「 分かる! あたしもお肉食べたい! ルイスは?」


「いいよ。どこでも」


 ルイスはいまだに、ショック(錯乱状態)から立ち直れずにいた。低いテンションでやる気なく回答する。


「よーし! おいしいお肉屋を探すぞー!」


 肉の焼けるにおいをかぎ分けようと、鼻をひくひくさせるアリシア。


「 そういうことなら、実は試してみたいことがあるんだ」


 そう言うと、ユキチはおもむろに首輪に触って呪文を唱える。


「――エグゼクト」


 すると、ユキチの目の前に黒いウィンドウがあらわれた。


「ここで、こうして……と」


   list restaurant,

  distance < 500m & keyword="steak" & score > 3.5

   >>plot map radius=600m

  display map


 指を動かして、何やら変な文字を入力する(見慣れない文字列)。するとしばらくして、黒い画面の上に地図が表示された。


「うまくいった!」


 うれしそうなユキチ。


「すごい。地図が出てきた」


 アリシアが(こんなことも)目を丸くする(できるんだ)。黒いウィンドウには、ユキチが持っている地図と違い、街の俯瞰地図が浮かび上がっている。道には小さな光点が点滅していて、宿や食堂の場所が示されているようだった。画面の端には「スコア」「レビュー」などの見慣れない文字が並んでいる。


「これは面白い……」


 ギルが目を細める。みんなで地図を覗くと、ユキチが説明する。


「この中心の点がおれたちな。で、この変な形のマークがそれなりにおいしいお肉が食べられるお店。星マークが多い方が評判が高いぞ」


「なるほど。こう見ると、近くに3軒もあるな。みんな同じレベルだな」


 ギルが早速地図の見方を理解する。


「え、なにそれ、すごい!」


 アリシアも大興奮。


「じゃあ、この近くのお店はどんな感じかな……っと」


 ユキチが指先でひとつの光点をタップすると、黒い画面が拡大し、店の名前と説明文が浮かび上がる。


 【グリル・ド・ヴァンブラン】

 名物:アルカナ牛のステーキ

 評価:4.8/5.0

 混雑度:やや高。空席あり。


「アルカナ牛……」


 アリシアがごくりと唾を飲み込む(食べたい食べたい……)


「名前からして高そうだが……」


 ギルが苦笑いする。


「いいじゃん、今日くらい。エクシリア帰還記念ってことでさ!」


「わかった。わかった」


 アリシアの執着心に根負けするギル(今日くらいは、いいか)


「で、場所は、この四角がこの建物だから、そこの先の角を左に曲がってすぐだね」


 ユキチが地図を見ながら、店の場所を確認する。


「本当にあるのかなぁ~?」


 そう言いながら、アリシアはわくわくした様子で先に走っていった。


「すごいな、ユキチ」


 ギルも関心する。


「へへへ、アルドラとの集中特訓の成果だよ。早速役立ってよかった」


「でもさ、この能力、宿探すときに使えばよかったんじゃないか?」


「……そう言われれば……。まぁ気付くのが遅かったってことで」


 ユキチは頭をかきながら苦笑いする。その時、通りの向こうから元気な声が響いた。


「お店、あったよー! しかもすごいおいしそう!」


 アリシアが両手を振りながら駆け戻ってくる。


「よし! 今日くらいは奮発するか!」


 ギルが笑って、ルイスの肩をぐいっと引き寄せる。


「ほら、ルイスもいつまでもくよくよしていないで、行くぞ!」


「……うん。肉、食べる」


「よーし、ルイス。復活だ!」


 ギルは自分がその要因(そもそもギルが無茶)を作った元凶だと(しなければ)気づかないまま(こうはならなかった)、ルイスを肩を組んで道を歩く。街の通りには、異国の客や冒険者たちが行き交い、通り全体が宴のような活気に包まれていた。目的の店――「グリル・ド・ヴァンブラン」は、煉瓦造りの二階建て。扉の上には金色の牛の紋章が掲げられていた。


「おおう。――見るからに高そうなお店……」


「なぁに、いざとなったら、また商業ギルドのギルドカードを見せて、オルネアに泣きつこうぜ!」


 聖職者とは思えない(本当に大司教なん)提案をするギル(だよね。この人)。「がはは」と笑いながら、重厚な扉を押した。温かな光と、焼けた肉の香りがふわりと外へ流れ出す。

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