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追放シスターと放浪ゴブリンのもぐもぐ見聞録  作者: 風上カラス
第4章 窮地と再起

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第38話 蜃気楼

神よ! 無垢なる卵料理に

純真なるトマトの情熱と

神聖なる清涼感を与えたまえ!


──ギル福音書 第4章「絶望の章」より

 ラグライドを出発したアリシア一行。族長から手渡された竜神の干し肉(リュージンジャーキー)を、アリシアはさっそくかじっていた。


「んん〜、これ、噛めば噛むほど味が出るわ。ちょっとスパイス効いてるし!」


 はむはむ。ルメールもおいしそうに食べる。


「おい、食いすぎんなよ。それは保存食だってわかってんのか?」


 ユキチがぼやく。それに、その肉、ルメールのお母さんなんだが……。いまだにラグライドの流儀(食べて供養すること)に慣れないユキチ。


「だってぇ、竜神の干し肉よ? いつ食べても栄養満点、加護つき、ありがたや〜でしょ」


 (ラムネ)特殊な車輪(砂漠専用装備)で砂漠を突っ走る。白布で覆われた車体は、太陽の熱を跳ね返していて、中は思ったより涼しい。飲み水はキンキンに冷えているというわけではないが、十分確保できている(飲むには問題がない)こんな贅沢して(砂漠の旅ってもっと)バチが当たらないかな(危険なはずだよね)


「ほんとに砂漠? ぜんぜん暑くないわ」


 アリシアは頬杖をつき、遠くの揺らめく砂の輝きを眺める(キラキラしててきれい)


「竜神の祝福のおかげもあるのかもな」


 ギルがアリシアを見つめる。よく見ると確かにアリシアの周りが薄く光っている(光の膜で覆われている)


「なるほど。じゃあ快適すぎるのも頷けるってもんだ。ありがたい話だぜ」


 ユキチは懐から白地図を取り出すと、広げながら大きなあくびをひとつ(リラックスモード)


「気を抜くのはいいけど、砂漠は油断できないからな。盗賊とか、魔獣とか」


 ギルは腕を組み、窓越しに流れる砂丘をじっと見つめている。


「それにしても、この地図、面白いな。どうなってるんだ?」


 ルイスは興味津々で、ユキチの広げた白地図をのぞき込んだ。


「おれも仕組みはさっぱりなんだ。多分、エルフの技法なんじゃないかな。ゼンブレア大陸で、俺のテイムマスターが入手したっぽい。ほら、ここから色が付き始めてるだろ? これがずーっと俺の旅の軌跡になってて面白いよな」


 地図の上では、ユキチが通った道が色づいており、長期滞在したところは枝の節目のようにふくれている。それでも、地図のほとんどの部分は真っ白のままだ。


「確かに。こうなると、塗り絵みたいに地図を全部埋めたくなるな」


「そうなんだけど、全部埋めるには、何もない山とか海岸とか行かなくちゃいけないし、同じような場所を行ったり来たりすることになるから、結構しんどいんだよな。今はとりあえずはアリシアの巡礼付き合いながら、主要都市に色を塗ってる感じかな」


「本当だ。ラグライドも色がしっかりついてる」


 自分の故郷に色がついていて、ルイスはうれしそうだ。


「ところでギル、どこを見ても砂漠なんだけど、方向はこっちであってるのかしら?」


 アリシアも地図をのぞきながらギルに尋ねる。


「ああ、こっちでいいんだ。ユキチの地図のおかげで現在地がはっきりわかるから、助かってるよ」


 ギルは頷きながら、外の警戒を続けている(油断はしない)。一行はラグライドから砂漠を越え、休憩地として知られるオアシスの街──セレナ=ミラージュを目指していた。そこは長旅の冒険者や商人たちが必ず立ち寄る中継地であり、砂漠の真ん中で豊かな水源を抱えた「幻の街」と呼ばれている。というのも、街の近くにはいろいろな地理的要因が重なり、あちこちに緑の影や湖面がきらめく蜃気楼を映し出すからだ。本物のセレナ=ミラージュはそこにあるのに、幻影に惑わされて方向を見失う(たどり着けない)旅人が後を絶たない。


「お、あれが街じゃないのか?」


 ユキチが前方を指差した。砂丘の先には、確かに湖のきらめき(オアシス)が広がっていた。


「……残念ながら、あれは蜃気楼だ」


 ギルがため息をつく(ユキチ、おまえもか)


「えぇ? 本物にしか見えないんだけど」


 アリシアも驚く。


「おれも巡礼したときは、あれに惑わされて……死ぬ思いをしたよ。気を付けてても本物にしか見えないよな」


 ギルは苦笑する。


「ひぇ……砂漠ってシャレにならないわね」


 アリシアが青ざめる(謎の殺意に恐怖する)


「本当なら太陽や星を使って、慎重に方角を確かめながら進むんだけど、おれたちにはユキチの白地図があるからな。本当に助かるぜ」


 ギルがユキチの背中を軽く叩いた(マジ感謝!)


「それにしても、普通のラクダなら一週間はかかる行程を……一日で移動できてるんだが……このスピードも異常じゃないか?」


 ルイスが改めて地図を見ながら驚く。


「車内も快適だし、ラムネにも感謝だよ。それに何より、移動日数が短いと水と食糧の消費が少なくていいのが、本当にすごいわ」


「それについては、これの車を作った俺にも感謝だな」


 ギルが胸を張る(自己主張の塊)


「はいはい、出ました。自慢モード」


 アリシアが冷たく流す。


「まぁ、事実ではあるけどな。正直、この乗り物はすげぇよ」


 ユキチが素直にほめる(すごいものは、すごい)。そうこうしているうちに、遠くに本物のオアシスが見えてきた。陽炎の向こう、砂漠のど真ん中に、椰子の木と青い水面が確かに揺れている。


「おおー……本当にオアシスだよね?」


 アリシアは思わず身を乗り出す(自信がなくなる)


「このにおい……本物だな。巡礼経験者の知識と、不思議な地図と、ラムネの車に感謝」


 ルイスが変なお祈りを始める。


「感謝!」


「キュイ!」


 アリシアとルメールが続く。普通なら、砂漠を越えて無事オアシスに到着した安堵と疲労で泣いてもおかしくない状況だが、アリシアたちには通じない(は常識を逸脱している)。笑いながらセレナ=ミラージュに入っていく。

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