表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放シスターと放浪ゴブリンのもぐもぐ見聞録  作者: 風上カラス
第8章 勇者爆誕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/108

第99話 ルイスと竜の加護

「よし、準備はできたか?」


「おう!」


 サイトーの問いに、ユキチ――いや、勇者ヴァリディオンは金ぴかの剣を高く掲げて応える。ユキチは長剣はあまり得意ではない(使ったことがない)。だが、この剣は不思議と軽く、手にしっくりなじむ(これが勇者補正なのか)


「お、その剣、気に入ったかい?」


 腕輪越しに、うれしそうなサイトーの声が響く。


「それは聖剣アークライザー。勇者専用のアーティファクトだ。まずは敵を攻撃して必殺技ゲージを溜めるんだ!」


 突然謎の指示(何のゲームだよ)


「……は? ゲージ? なんだよそれ」


「いいから攻撃する!」


「はいはい……」


 ざしゅっ。


 ユキチは、広間の中央でいまだに静かに佇んでいる魔力の渦を、おもむろに斬る。 手ごたえは薄く、効いているのかどうかも分からない。渦は反撃も反応もせず、ただそこにあるだけだった。


「なぁ、おれの攻撃、効いてなさそうだけど……」


「大丈夫。そのまま続けて!」


 サイトーの指図のまま攻撃を続けると、聖剣アークライザーが淡く光を放ち始めた。


「今だ! その状態で叫ぶんだ――アークスラッシュ! と――」


「……え、やだよ。恥ずかしい」


 もはやこれは子供の(こんな茶番に)ごっこ遊びじゃないか(付き合ってられるか)


「ここまで来たら恥ずかしいもないだろ!」


「……分かったよ!」


「アークスラッシュッ!!」


 アークライザーの眩い光が奔流となって走り、魔力の渦を(あっけなく)一刀両断した(渦を破壊する)。しかも、魔力消費の(MPが枯渇する)感覚は一切ない(心配もなさそうだ)


「おお……これは、確かにすげぇ!」


 光の余韻の中で、ユキチは思わず(あの渦を壊せるとは)感動の声を漏らした(さすが特効武器)。だが、当然のことながら、終わった気になるのは早かった。断ち切られた魔力の渦の奥――そこから、黒い影がゆらりと姿を現す。渦の中心で力を蓄えていた魔王ガイラムだ。


 そこにはガラムの面影は、もはやどこにもない。肌は漆黒に染まり(どこから)頭にはねじれた角(どう見ても)背にはコウモリの(魔王にしか)翼が生えていた(見えない)


「え……おにい……ちゃん?」


 アリシアの声が震える。


「はははははっ! 爽快だ! 実に爽快だ! 力がみなぎってくるぞぉ!」


 静寂から一転、豪快に笑い声をあげるガイラム。その狂気の笑い声を前に、アリシアは言葉を失った。


「くそっ、ずいぶんおとなしいと思ってたが……そういうことかよ!」


 ユキチ――いや、勇者ヴァリディオンはすぐさま構えを取り直し、剣を振り上げる。その刹那、ガイラムがにやりと笑う。


「――よーい、どん」


 ジッ――


 ユキチの視界が一瞬で切り替わった。いつの間にか(あれ?)天井を見ている(なんだこれ?)全身焼けるような痛み(超いてぇ)そして激しい衝撃(呼吸も苦しい)。気づけば、床に叩きつけられていた。


「……っ、首輪が……守ってくれたのか……?」


 どうやら、ガイラムに首を落とされかけた瞬間、サイトー製の魔法の首輪が何かしらの力で守ってくれたらしい。


「そうだよな……おまえは、時間も止めるんだよな……」


 息を荒げながら、ユキチが皮肉をこぼす。


 ガイラムは楽しげに微笑んだ。


「今度は――よーいどん、聞こえたかい?」


「……あぁ、おかげさまでな」


 ユキチは軽口を返しつつ、自身にフォーカスシフト(魔法無効化)をかける。そして、再び聖剣アークライザーを握りしめ、魔王へと斬りかかった。


 ――パラレルシフト。


 ユキチの姿がいくつもに分かれる。無数の世界線から導き出された有効打が、ガイラムへと襲いかかる。


 しかし――


「フッ」


 ガイラムは黒い翼をはためかせ、空中へ舞い上がる。無数の斬撃は空を切るのみで、次々と消えていった。


「流石に……ここまでは届かんようだな」


 宙に浮かぶ(安全地帯、)ガイラムの口元に(発見しちまったな)、勝者の笑みが浮かぶ。次の瞬間、彼の周囲にいくつもの光球が現れた。テニスボールほどの大きさの、禍々しい魔力の塊。


「そのまま床にはいつくばって――死ぬがいい!」


 光球が鋭い刃に変化し、一斉にユキチへと殺到する。


「させないっ!」


 いつの間にか意識を取り戻していたルイスが、ユキチの前に飛び出した。激戦をくぐり(ドラゴンブレス)抜けてきた(すら防いだ)大盾を構え、雄叫びを上げる。


「守備強化ッ!」


 今日何度目に(自然と使いこな)なるかも分からない(せるようになった)、防御スキル。しかし今回は、ルイスよりも先に盾の方が限界を迎えようとしていた。ガイラムの魔力の刃が次々とルイスの盾に突き刺さり、亀裂が走る(盾が悲鳴を上げる)


「くっ……ここまで、か……っ!」


 ついにルイス愛用の大盾が砕け散り、破片が宙を舞う(守る手立てがなくなる)。盾では勢いを防ぎきれなかったいくつかの魔力の刃が、ルイスの身体に突き刺さる。


「ルイス!! これを使えっ!」


 ユキチは背中に背負っていた金色の(センスの悪い)盾をルイスに投げ渡した。


「うっ……重っ!? なにこれ、腕が折れそう……っ!」


 ルイスはその盾を無事キャッチするが、その重さに(とても装備)思わずよろめく(できる感じじゃない)


「ルイス君、それは勇者専用武具だから、君じゃ扱えない! ユキチに任せるんだ!」


 腕輪越しにサイトー(指示厨)の声が響く。


「ええい! なめるなよ!」


 ルイスが叫ぶ。


「わたしだってな――いつまでもこのパーティーの足手まといではいられないんだ! ラグライドの竜戦士の力、みせてやるっ!」


 サイトーの冷静な助言が、逆にルイスの(ルイスの)闘志に火をつけた(逆鱗に触れた)。この旅で、彼女は痛感していた。自分にはユキチのような速さも、ギルのような格闘センスも、アリシアのような魔力もない。


 ――それでも。


「大事な人を救うのに、見ているだけなんて……できるわけがないっ!」


 その瞳に宿るのは、戦士の決意。黄金の盾を持ち上げようとする姿を見て、ユキチが息を呑む。


「ユキチ! 守りはわたしに任せて! おまえは――ガラムを頼む! あたしじゃ……あいつは止められない!」


 震える声で叫びながら、涙をこらえるルイス。その言葉に、ユキチは小さくうなずいた。


「オッケー……頼んだぜ、ルイス」


「キュイィ!」


 その時、アリシアの胸元で、ルメールが鳴いた。ルメールの鳴き声と同時に、ルイスの身体が淡い金色の光に包まれる。


「これは――? 竜の加護……?」


 アリシアが息をのむ。


「おああああああーーッ!!」


 ルイスが雄叫びを上げると、金ぴかの(勇者専用の)盾が持ち上がる。さきほどまで重くて持ち上げられなかったその盾が、まるでルイスの思いに応えるように、ルイスの手に収まっていく。


「熱いね!こういうご都合主義。嫌いじゃないよ。というか大好きだ!」


 サイトーの(いいぞー。)楽しそうな声(もっとやれー!)が、腕輪から響いてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ