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追放シスターと放浪ゴブリンのもぐもぐ見聞録  作者: 風上カラス
第8章 勇者爆誕

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第96話 白竜

 一方その頃、アリシアたちはガラム(魔王ガイラム)と対峙していた。ガラムの傍らには、シロと呼ばれた白竜の姿がある。


「お兄ちゃん! もう魔王ごっこはやめて! 正気に戻ってよ!」


 アリシアの叫びも、仮面をつけたガラムの心には届かない。


「正気……? 私はずっと正気だよ。魔族の邪魔になる人間を滅ぼし、世界に安寧をもたらす。それが私の望みだ。……わが戴冠式を待たずに死に急ぐというのなら、それもよい。シロ、相手をしてやれ」


「ダメだ、アリシア。ありゃあ重症だぞ……」


 ギルがつぶやく。確かに――昨日、アルカナ宮殿で見た時よりも、ガラムの症状(魔王様ごっこ)は明らかに悪化していた。


「ガラム! 歯ぁ食いしばれ!!」


 ルイスが地を蹴り(こういうのは)拳を叩き込もうとする(たいてい、殴れば治る)。だが――バサァッ! 白竜が翼を広げ、その攻撃を遮った(させないよ)


「小さき者よ……我が主を害するというならば、その愚かさ、我が裁きをもって知るがいい」


 白竜の喉の奥が(なんだかとっても)光りはじめる(ヤバい感じ)


「ちょ、ドラゴンブレス!? いきなり!? ルイス! 退()いて!」


 アリシアが白竜の(ってかコイツ、)動作を察知して(しゃべれるのかよ)、警告する。


「だめだ! ここで退いたら、アリシア達を守れない!」


 ルイスの表情は真剣そのもの。ラムネは今、ユキチとリュートの戦場にいる。――仲間を守れるのは、今は自分だけだ。


「守備力強化!――よし、どんと来い!」


 ルイスが大盾を構え(やってやるよ!)地に足を踏みしめる(白トカゲ!)


「アリシア、ギル! 私の後ろに! 援護射撃は頼んだよ!」


「分かったわ!」


 アリシアはルイスの背に隠れ、ルメールを胸に抱く。ギルも隣に身を寄せ、次の動きに備えた。白竜のブレスが、あたりの空気を震わせる。


 キィィィィィーーーーー!


 甲高い音とともに、白竜の口から細く青白いブレスが放たれ、ルイスはそれを真正面から盾で受け止める。


「ルイス、今援護するよ!」


 アリシアがラグライドの竜神(ルメールのお母さん)から授かった竜の加護。黄金色の光が彼女の手から溢れ、ルイスの身体を包み込む。続けざまに、アリシアは呪文を唱えた。


苦悶!阿鼻叫喚(ハナノオクムズムズ)!!」


 白竜はブレスを吐きながら、どこか苦しそうにもだえる。


 そして――我慢しきれず、グジュン!


 大きなくしゃみを放つ。その拍子にブレスの軌道が大きく逸れ、周囲の建物を(ちょっと、)無差別に破壊した(危ないじゃない)


「あちっ、あちちっ!」


 ブレスが止み、ルイスはブレスの熱で真っ赤になった大盾を慌てて手放す。オリハルコンやミスリルといった伝説級の武具でもない限り、ドラゴンの一撃を受け止めるなど無謀にも程がある(無理をしすぎた)。そんなルイスをよそに、白竜はアリシアへと迫った。


「なんだ――いまのは。人間、何をした?」


「ふふふ、なんでしょうね。そして、まだまだ終わらないわよ!」


壮絶!小指(タンスノカドニ)……」


 アリシアが次の呪文を唱えようとしたその瞬間、彼女の胸の中からルメールが飛び出した。


「キュイ!」


「なんだこの子竜(ガキ)は。我の邪魔をするな」


 ぺちっ。


 白竜の前足が(子竜虐待、)ルメールを叩き落とす(断固反対!)


「あんた! 自分の子に何してるのよ!」


「子? 我の? 知らんな」


 その反応を見る限り、本気で認識して(あたしの勘違い?)いないようだった(いや、そんなことない)


「ふざけないでよ! ラグライドの赤竜! あなたくらいの立派な竜なら知らないはずはないでしょう!」


「ラグライドの……赤竜? ――あぁ、あの年増女か! ははっ! そうか、子供ができていたのか。 確かに、この白いウロコ――おれの子かもしれんな」


「年増女って……あんた! 彼女がどんな思いでこの子を私に託したかも知らずに……! この子はね! いつかあんたなんか足元にも及ばない、立派な竜になるんだから!」


「キュイ……!」


 地面に叩きつけられたルメールが、けなげに(アリシアの)立ち上がる(期待に応える)。思ったよりダメージは浅いようだ。


「もう怒った! あんたみたいに家庭を顧みない父親は、あたしがお仕置きしてあげる!」


 アリシアの身体から、竜の加護のエネルギーがあふれ出した。その光はまるで赤竜(母親)の怒りが乗り移ったかのように、烈しく燃え上がる。


「その加護――おまえ、何者だ!?」


「後見人って知ってる? 知らなければあとで辞書でも引きなさい!」


 アリシアがにやりと笑う。


「ルメール、よく見ておきなさい。あたしが教わった竜の奥義。これがあなたのお母さん直伝の――ドラゴンブレスよ!」


 アリシアの体内で、竜の加護の力を集約させる。腹の中で熱が高まるのを感じる。あたりの空気がゆらぎ、アリシアの口からは(人間離れした)煙が出てくる(感じになる)


()()()!」


 次の瞬間、アリシアの口から放たれたのは、先ほどの白竜の(青白い)ブレスとは正反対の、真紅の炎。それはまさに、赤竜が吐き出すブレスそのものだった。魔力だけなく、何か体の中の大事なものが消費されていく感覚。そういえば赤竜(ルメールのお母さん)が言っていた。"――ドラゴンブレスは、命を燃やす炎"。けれども、思い悩んで(今やらないで)いる場合じゃない(いつやるってんだ)


「ぐぅ!? なぜ人間がドラゴンブレスを――!」


 白竜が咆哮をあげ、再び青白いブレスを放つ。二つの炎は空中でぶつかり合い、赤と青の光が入り混じって、激しい閃光を放つ(威力は拮抗している)。轟音とともに、激しい衝撃波が周囲に広がる。


「すごい……」


 ルイスが思わずつぶやく。「ブレスを吐きたい」それがルイスの夢だった。が、その夢は実現しないということはルイス自身が知っていた。だが今、仲間が必死の形相(すごい顔)で、ルイスの夢を目の前で実現している。竜と正面からぶつかり、互角に渡り合うアリシアの姿に、嫉妬心や劣等感(うらやましい)すら感じる(とか嫉妬する)隙もなく、純粋な感動がルイスを支配した。


「アリシア、頑張れ!」


 ルイスは無意識に叫んでいた。アリシアと白竜――体格も力も違う。それでも、アリシアの放つブレスは、白竜のブレスに全く引けを取っていない。――だが、アリシアの顔には次第に疲労の色が(さすがに限界が)浮かび始めた(近づいていた)。ブレスの勢いが弱まり、膝が震える。


(――もう、もたない)


 そう思った瞬間だった。


「キュイィー!」


 ルメールがアリシアの頭の上――いつもの定位置に飛び乗り、彼女と息を合わせるように口を開いた。


 キィィン――!


 甲高い金属音のような響きとともに、ルメールの口から白く輝くブレスが放たれる。それは父親譲りの細く鋭い炎――しかし白竜(父親)のものよりも、ずっと純白で、鋭く、まぶしかった。


 白い光が一直線に白竜のブレスを貫き、そのまま白竜の巨体をも貫通する。


「……な、に?」


 あまりに一瞬の出来事に、白竜は何が起きたのか理解できなかった。いつの間にか、無敵を誇った鱗に(最強と言われる)ぽっかりと穴が開き(身体に傷ができている)、――そしてしばらくして、そこからどくどくと赤い血があふれてくる。


 白竜とアリシア、ふたりのブレスが止んだのは、ほぼ同時だった。


 どぉん――。


 地面が揺れる。白竜が崩れ落ちると同時に、アリシアの体も糸が切れたように音もなく倒れた。


「アリシア!」


 リュートとの戦闘を終えたユキチが駆け寄る。左腕は欠けたまま。激戦で破損した義手はリュートの近くに転がっている。


「ごめん。ちょっと頑張りすぎちゃった……。ルメールのことで、つい、むきになっちゃったよ」


 アリシアはかすれた声で笑う。ドラゴンブレスは、確かに命を燃やしたのかも(寿命を縮めたのかも)しれない。けれども後悔はなかった。ルメールと一緒に、あの白竜(クソ親父)に一発かませたのだから。


 青白い顔で(とても)ぜいぜいと息をする(体調が悪そうな)アリシアを、皆が心配そうに見守る。


「キュイ!」


 瀕死のアリシアの上に、ルメールが飛び乗った。


「おいルメール、今アリシアの魔力を吸うのは――!」


 ユキチが慌てて止めようとする。空気を読まずに、いつもの食事を始める(今魔力を吸われたら、)つもりかと思ったのだ(アリシアが持たない)


 だが、ユキチの予想に反して、ルメールはアリシアのお腹の上にちょこんと座ると、おもむろに口を開いた。


「オロロロロロロ……」


 ルメールの口から、光る液体のようなものが流れ出し、それがアリシアの体にふりかかる。


「これは……? まさか神聖魔法? いや、違うな」


 ギルが魔素の流れから(これは一体)状況を分析する(どういう状況だ)


「そうか……ルメールはその前に食べたアリシアの魔力を戻しているのか」


「なるほど、そういうことか。ちょっと絵面的にはどうかと思うが……もともと自分の魔力なら、吸収も早そうだな」


 ユキチが苦笑(どう見てもゲロを)しながらつぶやく(浴びているよな)


 すると、アリシアの顔に血色が戻ってきた(回復の兆しがある)


「――あったかい……。ありがとう、ルメール」


(いいってことよ)


 そのとき、アリシアは初めて――ルメールの“声”を、確かに聞いた気がした。

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