第9話 亜人連合
「ああ〜幸せ」
「もふもふ〜」
クロウと猫はファードラに埋もれ幸福そうにしている。
ファードラが浮遊島に住むようになってしばらく。
クロウは暇さえあればファードラのモフモフを堪能していた。
猫も当初はファードラの大きさにビビっていたが、今ではすっかり慣れクロウと共にファードラのモフモフの魅力の虜になっていた。
「彼らの様子はどうかね?」
「はい、全員精力的に訓練しております」
「そうですか」
クロウ御用達の奴隷商館。
奴隷商館の会長が従業員の報告を聞いていた。
2人の話す彼らとは奴隷商館にいる亜人たちのことだ。
この亜人たちはクロウが購入しなかった者たちだが皆優秀なスキルを所持していた。
クロウは奴隷商館に来た際は必ずここの奴隷たちの鑑定を行なっていた。
クロウの鑑定は普通のものとは違い、その者の潜在的な能力まで見ることができる。
クロウが必要としないスキルでも世間にとっては有用なスキルはたくさんある。
そういったスキルを持つ奴隷たちの育成を奴隷商館では積極的に行なっていた。
奴隷商館の会長が驚いたのは、亜人たちに優秀なスキル持ちが特に多いことが判明したことだ。
しかしこの世界では亜人たちの立場は低い。
いくら優秀なスキルがあっても彼らの地位は上がらないだろう。
それどころか嫉妬した権力者に命を狙われかねない。
そこで奴隷商館の会長は彼らが活動できる場所と組織を用意することにした。
亜人たちはいわゆる非合法な地下社会で活動することになる。
普通ならば危険な場所なのだが、亜人たちの中でも特に優れたスキルを持つ者たちを選抜することにより亜人たちは地下社会でも一目置かれるようになる。
亜人連合。
亜人のみで構成された彼らはいつしかそう呼ばれるようになった。
そんな彼らだがクロウのことを信仰していた。
自分たちの可能性を見いだしたクロウに亜人たちは感謝してもしきれない恩がある。
しかし彼らはクロウの下で働くことが許されていない。
ならばせめてクロウが必要としている奴隷商館を守るために活動していた。
そしてもし奴隷商館がクロウを裏切るようなことがあれば亜人たちは刺し違えても阻止すると決めていた。
亜人たちの隷属の首輪は奴隷商館が管理しているが今の亜人たちであれば短時間であれば命令に背くことが可能となっていた。
ちなみにそのことを奴隷商館の人間たちは知らない。
こうしてクロウの預かり知らぬところで彼を信仰する信者が生まれていた。