第7話 猫の亜人
浮遊島にエルフと世界樹を連れて来て、ロボ娘が現れてからしばらく。
クロウは再び奴隷商館へやってきていた。
クロウにとって必要なスキルを持つ羊と白熊を手に入れたのに奴隷商館にやってきた目的は物資の調達である。
クロウは浮遊島を手に入れてからはなるべく人との接触を避けたいと考えていた。
人目に触れる回数が増える分、トラブルに合う可能性も高くなるからだ。
食料や家畜など必要なものは大抵浮遊島へ移動させたのだが、細々とした日用品など全て浮遊島だけで賄えられる程の余裕はまだない。
なのでこうして定期的に必要なものを調達しにこの奴隷商館にやってきていた。
奴隷商館では本来このようなことを行なってはいないのだが、クロウはこの奴隷商館において特別待遇を受けることができていた。
「支払いはこれで頼む」
世界樹の葉を1枚渡す。
「確認させていただきます。っ!確かに本物の世界樹の葉に間違いありません」
鑑定スキルを持つ店員が驚きながらもクロウの出した世界樹の葉を本物と認める。
「クロウ様、お渡しするものは本当にいつも通りのものでよろしいのでしょうか?」
奴隷商館の会長がクロウに問いかける。
「ああ、問題ない」
大事なのは一つの場所で全ての用事を済ませることができること。
品物の品質がきちんとしていれば何の問題もない。
それに世界樹の葉に見合った品物など最高級のアイテムでないと釣り合わないだろう。
そんなものは求めていないし、下手に貰っても余計なトラブルを招く原因となるだけだ。
面倒事は全て奴隷商館に任せている。
クロウが選んだだけあって、この奴隷商館の会長はかなりのやり手だ。
国内外でそれなりに顔の効く人物で、クロウが渡す貴重な品々も怪しまれずに取り扱うことができる。
世間ではお抱えの凄腕冒険者が仕入れているということになっていた。
「新しい奴隷が入ったら連絡致します」
「ああ、頼む」
しばらくして再び奴隷商館にやってきたクロウ。
奴隷商館から連絡があり新しい亜人の奴隷がやってきたそうだ。
奴隷商館には連絡がとれるよう魔導具を渡してある。
遥か遠いクロウのいる浮遊島と連絡がとれる位の高性能な魔導具は今の時代では作ることができず、クロウが渡したものは遺跡で発掘した古代魔導具の1つだった。
クロウは楽に連絡が取れればいいな位の気持ちで渡していたが、奴隷商館の会長はクロウからの信頼の証としてこの古代魔導具を受け取っていた。
「皆、今日から新しい家族が増えた。仲良くしてほしい」
「よ、よろしくおねがいしますっ!」
クロウは奴隷商館から連れてきた猫の亜人を浮遊島の面々に紹介する。
「よろしくねぇ~」
「おう、よろしくな新入り」
元奴隷の先輩である羊と白熊が猫に挨拶をする。
ちなみに羊と白熊の隷属の首輪は浮遊島にきて少ししてから外している。
すぐに外すことができたのだが、初めて見る魔導具のためクロウが色々と確認していたからだ。
「そこの世界樹にはふれてもいいが、いたずらはしないように」
「マスターの新しい家族ですね。はい、認証いたしました。今後よろしくお願いいたします」
エルフとロボ娘が挨拶する。
こうして浮遊島にまた新たな住人が増えた。