第6話 遺跡の遺産
「ここが伝説の浮遊島…」
クロウに連れられエルフと世界樹を浮遊島にやってきた。
エルフは浮遊島の光景に感動していた。
エルフの伝承で浮遊島は幻の聖地として代々語り継がれており、エルフたちにとって浮遊島にくることは名誉なことらしい。
持ってきた世界樹の若木は2メートル程の大きさで、エルフ曰く数十年でようやくここまで育ったとのこと。
世界樹を持ち出したことを咎められないかエルフに聞いたが問題ないとのこと。
世界樹の管理についてはその地域のエルフに一任されており、世界樹を危険に晒さなければある程度の融通は利くという。
それに世界樹の若木を浮遊島に移動させたことには異論ところが感謝したいとまで言われた。
実は世界樹の若木が植えられていた地域はあまり成育に適しておらず、人目から隠すために仕方なくそこにいたそうだ。
そのため世界樹の成育が進まなかったという。
クロウは世界樹の若木を植える場所をエルフと相談する。
「ここが良さそうだな」
エルフが選んだ場所は遺跡の近くの荒れ地だった。
ここには建造物はなくそれなりに広いスペースがあるので世界樹が成長し大きくなっても大丈夫だろう。
それに遺跡の近くなのはクロウにとっても都合が良かった。
おそらくこの辺りには昔、世界樹が植えられていたと思われる。
ここに世界樹を再び植えればきっと何かが起こるはずだ。
世界樹の若木を荒れ地のスペースに植える。
すると世界樹の若木の全身が光り出す。
「な、何が起こっているんだ!?」
驚くエルフ。どうやらこの現象について知らないようだ。
クロウは世界樹の若木を鑑定すると世界樹は浮遊島の魔力を一気に吸い上げているようだ。
世界樹は光りながらぐんぐん成長していく。
しばらくして光が収まる。
世界樹は10メートル以上にまで成長した。
「ずいぶん大きくなったなぁ」
「立派ですね〜」
様子を見に来た白熊と羊がまじまじと世界樹を見る。
一方エルフは感動の涙を流し世界樹をじっと見つめていた。
クロウは世界樹が落ち着いたのを確認すると遺跡の中へ向かう。
中に入るとは以前とは違い照明が内部を明るく照らしていた。
どうやらクロウの予想通り世界樹は浮遊島の遺跡を起動させる鍵で正解だったようだ。
他に変わったところがないか確認していると、以前はただの壁だった箇所に扉が現れていた。
クロウが扉の前に立つと扉は自動で開きはじめる。
扉の先には階段があり地下へと道が続いていた。
クロウは階段を下る。真っ暗だった道はクロウが立ち入ると照明が灯り、道の先々まで照らす。
しばらく階段を下る。体感的に地下2階程の深さまでやってきたようだ。
階段を下りきるとまた新たな扉がクロウの目の前に現れる。
クロウが扉の前に立つと扉は自動で開きはじめる。
扉の向こうは広い部屋で奥には大きなカプセルが鎮座していた。
クロウは部屋を見渡す。部屋には大きなカプセル以外には何もない。
カプセルの前にやって来ると、カプセルを開ける扉部分に電卓のようなボタンが付いていた。
どうやらカプセルを開けるにはパスワードが必要なようだ。
しかしクロウにはそのパスワードに心当たりがない。
一度地上に戻ろう。クロウがカプセルから背を向けた瞬間、
ドンッ!
何かがカプセルの中から扉を叩く音が響く。
ドンッ!ドンッ!
叩く音は次第に強くなり扉の形が歪んでいく。
そして、
ガシャン!
カプセルの扉が破られる。
中から何かが出てくる。
クロウが身構えていると、
「おはようございます、マスター」
この世界には似つかわしくない人型ロボが現れたのだった。
現れた人型ロボには敵意はなく、クロウを主と認識しているようだ。
鑑定してみると、人型ロボは女性型で古代の技術の粹の結晶とも呼べる存在だった。
ロボ娘はこの浮遊島の管理と守護を目的として作られたらしく遺跡の機能や使用方法などを把握していた。
ロボ娘と共に地上に出るクロウ。
「皆様、今後よろしくお願いいたします」
エルフたちに挨拶するロボ娘。
突然現れたロボ娘に最初は面食らっていたエルフたちだが次第に打ち解けていった。
ロボ娘の登場は予想外だったがクロウはじめ浮遊島の住人たちに無事受け入れられた。