第4話 二人の奴隷
「おはようございますご主人様」
「おはよう」
クロウがリビングに行くと羊の奴隷が朝食の準備をしていた。
「おはよう、主殿」
畑仕事から白熊の奴隷が戻ってくる。
三人で朝食を囲む。
クロウが二人の奴隷を迎えてから一週間。羊と白熊の奴隷は浮遊島での生活に大分馴染んできたようだ。
クロウが購入した二人の奴隷は亜人にしては珍しく元はとある貴族に仕えていて、羊はメイド、白熊は畑や庭の管理とそれぞれ仕事を任されていた。
しかし主人が亡くなると、その親族たちにより二人は奴隷として売られたのだという。
クロウがこの二人を選んだのは二人がもふもふの獣人なのは当然として、本命は彼女たちが持つ隠しスキルだった。
羊が持つスキル『全料理』と白熊が持つスキル『農業・極』。
どちらもクロウが探していたレアスキルだった。
クロウが快適な生活をする上で一番重視していたのは食事だった。
転生者であるクロウにとってこの世界の食事は味気ないものだった。
クロウが来る以前の転生者たちが手を加えようとした痕跡は見受けられたが、日本の食べ物とは程遠く満足できるものではなかった。
そのためクロウは自給自足することでその問題を解決することに決めた。
しかしクロウは簡単な料理しかできない上に作物に関する知識は無い。
それならば知識と技術のある者を見つければいい。
クロウの持つ鑑定スキルはその者が習得できる潜在スキルまで見ることができる。
この世界の人間を信用していないクロウはスキルを持つ者を奴隷から探すことにした。
奴隷といっても誰でもいい訳ではない。探すのは亜人、特にもふもふから見つかれば更に良い。
クロウの趣味も多分に入っているがきちんとした理由もある。
この世界では地位の低い亜人たち。
この世界の人間は亜人たちさほど興味がない。それならば彼女たちが持つ有用なスキルを見落としている可能性が高い。
そうして亜人の中にもしかしたら探しているスキル持ちがいるかもしれないと当たりをつけていたが、その考えは正解だったようだ。
まだ二人はスキルを習得していない状態だがスキルと近しい仕事をしていたので、クロウが手伝えば近い内にスキルを使用できるようになるだろう。
一ヶ月後。
クロウの目の前には元の世界でおなじみの料理がたくさん並ぶ。
羊と白熊はクロウの手助けもあり、無事スキルを習得することができた。
こうしてクロウは理想の食生活を手に入れることができた。