第2話 転生者クロウと浮遊島
元地球人クロウがよくある異世界転生をしてから数年。
幸いチート能力があったおかげで人生ハードモードにならずに済んだ。
全魔法。文字通り全ての魔法が使えるという能力。
クロウはこの力を悪目立ちしない程度に使い、冒険者としてそれなりに快適な暮らしをしていた。
使命もなく、魔王がいないファンタジー系異世界に転生し当初は喜んでいたがただ一つ不満があった。
クロウは人外好きだった。
特に元の獣の姿にままで言語を話し二足歩行するケモ度の高い獣人がタイプだ。
異世界転生してからの目標の一つとして獣人をモフることに決めていた位だ。
しかしこの世界での獣人とはいわゆるケモ耳に尻尾を生やしただけのタイプの者たちのことを指し、クロウの好みの者であるケモ度の高い者たちは亜人として扱われ差別されていた。
そのためクロウが大手を振って彼女たちをモフることは難しかった。
クロウに与えられた力があればそんな差別をなくすことも可能だったが、そこまでする責任感はクロウにはなかった。
せっかく手に入れた自由だ。面倒事に首を突っ込んで手放す真似などしたくはない。
難しいことを考えるのをやめたクロウは結論を出す。
誰もいない場所で自分好みの獣人を集めて好き勝手に暮らすことに決めた。
そうしてクロウが定住の地として選んだ場所は幻の島と呼ばれる浮遊島。
大陸各地に残る遺跡や文献を調べて見つけたこの島はその名の通り空に浮かぶ島で古代文明の遺産の一つとされている。
クロウが見つけた浮遊島は所々劣化していた箇所はあったものの建造物はそのままの形で残っていた。
浮遊島は都市一つ分の大きさがありながらも地上から認識できない高度を保ち浮いている。
現在この世界では失われた技術が使われておりクロウ以外の人間は辿り着けない場所だ。
クロウにとってまさに理想的な場所だった。
建造物は神殿のような場所の周囲にいくつかの民家があるのみで周囲は遥か遠くまで青空と草原が広がる。
住人は誰も残っておらずクロウが好き勝手に使っても咎める者はいない。
こうして浮遊島を拠点として手に入れたクロウが次にすることは新たな住人の選定だ。