第1話 奴隷少女と黒ローブ男
王国のとある都市にある奴隷商館。
国から合法的に認められているとはいえ、人目につきにくい都市の中心から外れた場所に店を構えていた。
店に黒のローブを被った男が入る。
「いらっしゃいませ。お久しぶりですクロウ様」
店に入るとスーツ姿の店員が黒ローブの男を出迎える。
「会長はいるか?」
「ご案内いたします」
店員の案内で奥に進む。
「こちらでお待ち下さい」
客間のような部屋に案内される。しばらくすると、
「ようこそクロウ様。本日はどのような御用でしょうか?」
この奴隷商館の会長と思われる身なりの良い男が入ってくる。
「奴隷を見せてもらおう」
黒ローブの男ことクロウの目的は奴隷のようだ。
「数人入っております。ただいま連れて参ります」
しばらくして奴隷商館の会長が数人の奴隷を連れてくる。
「クロウ様、こちらになります」
会長の後に続いてやってきた奴隷たち。
奴隷一人一人を確認するクロウ。
「これを貰おうか。支払いはいつもので頼む」
「お買い上げありがとうございます」
クロウは一人の奴隷を購入した。
購入手続きを済ませ奴隷商館を出るクロウと奴隷。
奴隷商館から離れ人目のつかない路地裏に入る。
「少し目をつぶっててね」
先程の高圧的な態度から一変し優しい口調で奴隷の少女に話しかけるクロウ。
そして二人はその場から姿を消す。
「ここどこ?」
奴隷の少女が目を開くとそこは先程までいた路地裏ではなく、青空と草原の広がる場所にいた。
「ここは浮遊島だよ」
フードを外し微笑みながら優しく話しかけるクロウ。
「浮遊島?」
「名前通り空に浮かぶ島だよ」
「?」
頭にハテナマークを浮かべる奴隷の少女。どうやらクロウの言葉をいまいち理解していないようだ。
「ごめん、よくわからないよね。後でちゃんと説明するよ。そうだ、これは必要ないから外そうか」
クロウは奴隷の少女の首輪に手を掛ける。すると首輪はあっさりと外れる。
奴隷の少女の首輪は隷属の首輪と呼ばれるもので、高度な術式で構成されており簡単に外せるものではない。
「あっ、これ外したらだめなんだよ。おこられちゃう」
奴隷の少女が慌てる。
「大丈夫だよ、ここには僕たちしかいないから。それに君は僕たちの家族になるんだからこんな物は必要ないよ」
「家族?」
「そうだよ。今日からよろしくね」
元奴隷の少女に手を差し出し握手するクロウ。