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5.
レンガの建物、中はごくごく無機質だ。
よく眼にするような料金所があって、何台も何台も、細長い鉄の集合体。
ハンドルの部分というのは、前々から気になるところではあった。
もっと絵卯の気になるのは、ここの駐輪場の自転車の台数が一向に、減る様子がないように見えることだった。
サドルをやられたことがあるし、今回は完璧ないやがらせだ。
と思うことが何回もある。だがここを使う。理由は簡単。店が近く、一、二台空きのある時間帯には、彼女は滑り込んで駐輪出来ているからだ。
肌寒くもなく、暑くもなく。
緑のベレー、結んだ髪。普通のシャツに、というのが絵卯で、停めた場所の番号は毎回憶えていない。
そんな日に不釣り合いな恰好に見える男が一人。絵卯は、そちらへ眼が行った。