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32.
このスペースは、樅ノ木名義で借りているということで、依杏と絵卯は連れて来られた。
ボックス型。長方形の雰囲気。
窓はあるが、やっぱり細長い印象。
部屋と呼ぶにも、相応しくない。
依杏は郁伽とシェアハウスを始めてから、寝室、ベッドのある部屋で、2段ベッドの下の方に寝ている。梯子付き。
その部屋は6畳ほどなのだが、今のトランクルームの幅は、更にそれよりも狭く感じるのだった。
「私物を預けられる上に、監視・防犯カメラの類は一切ない。あなたたちのような変な葬儀屋も、いずれは使うことになるかもしれないよ」
やけに鼻が高く、スラリとした背丈と手首の目立つ、樅ノ木有人。
数登珊牙よりは、若干低めの背丈。
立った姿勢で話すものだから、要するに依杏を威圧したいのが、見え見えである。
それもそのはず。
「え、樅ノ木さんて、探偵だったんですか……?」
と絵卯がぼそりと言う。
言われた樅ノ木も、依杏も同時に肯いてみせた。
やっぱり、そうだったか……。
五堂絵卯は、樅ノ木が探偵であることも、出入りしているのが探偵事務所であることも、知らなかったらしい。




