2.
ステンドグラスとまではいかない。
花びらを一つ一つ切り離したのを、押し広げて花の形の模様に、再構成したような。
石畳。確かに「床」ではあるけれど、一つ一つ角を切られた石片でつなげられた、地面というべきか。
コンクリートは好かなかったらしい。
この地面を造ったのは、都市部の重役が命じたからとかそういうのではなく、あくまで個人の道楽という範囲である。
彼女が「地面」へ招かれたのは、決して多い回数ではない。
それでも、小さな石段を下りて、この石畳の地面に足を下ろす感覚は、彼女の中でとても鮮明なものになっていった。
まだある。
続いていく石畳は言うなれば、緑の中のテラス。
工夫を凝らしたテーブルや椅子があり、彼女の視界にはそこが無人のことが多かったが、人々が招かれたのも一、二回ではない。
白いドレスを着て、その長い裾を引きずって歩くような。
そんな女性像を置いたらよく似合うような、緑の中のテラス。
そして緑は、ここを造った個人の道楽に含まれる。
所謂、庭園だ。
「一つ目の床」と書いたが、彼女が足を下ろした経験のあるのは、その場だけ。
宙に浮いた地面。
そんな印象が、彼女の中では強かった。