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「絵卯が事故に困っているわけではないって言ったけれど、困っているのは事実なの。顔バレしているんじゃないか、っていう悩み」
「ネット小説ですね」
と数登。
「そう。ただ私自身、絵卯の小説を直接読んだわけじゃなくってね」
と絢月咲は苦笑い。
「私、一応配信メインで売っている身だから。別の配信者の紹介で、小説のコーナーがあってね。それで絵卯のことを知ったわけ。はっきり言って、小説家としての絵卯へのサポートは手薄。それでも人気は出たし、顔バレの件についても当初は心配していなかったわけだけれど」
「絢月咲さんの方が、徹底していますもんね。その辺」
と依杏。
「要するに、身辺的に気になることが」
「あるわけ」
「でも、本人は居ない……。会ってみるほうが」
「良さそうなのには違いありませんが」
と数登。
「空中庭園に居たのは六人」