11/54
11.
「で、ゲームから人が出てくるわけでもなし」
と依杏。
絢月咲が言う。
「いない人が居たのよ。で、被害者が出たわけ。その『いない人』を実際に見たのは、二人だったそうよ。被害者を含めれば三人。通称『空中庭園』を道楽まじりで造っちゃった人ってことになる」
「絵卯さんが、そこを小説の背景として書いたと」
と数登。
「Eguri、絵卯さんの情報はどこから?」
絢月咲は追加で新聞記事も取り出して、置いた。
被害者の名前は、五堂忍とある。
「被害者ってことは、やっぱり……事件……」
依杏が、切り取られた新聞記事を見ながら、言った。
「○日の15時から、集まっていた人たちが居たっていう」
「そう。それで被害者も以前、『いない人』を見た経験があるそうなの。被害者は亡くなった」
「亡くなった……」
依杏は青ざめる。
何回か、というか九十九社へ来てから彼女は、数限りなく、とは言えないものの。
遺体に接する機会があって、紙面を通してだの実際にだの、いろいろだ。
そしてまだ、遺体に慣れない。
「五堂絵卯の情報、ね」
と絢月咲。