8キス♡餌付けと職権濫用
子どもたち「いっただきま〜す!」
食堂でみんなと肩を並べて実食タイム。
子どもたちみんな喜んで食べてる♪
かわいい型抜きをいっぱい買ってきたから、食べるのもより楽しいってものよね♪
「騎士さんたちもどうぞ♪」
平服姿で立ちっぱなしの騎士さんにも配る。
わたしの騎士ちゃんの他にパパ直属の騎士さんもいるんだよね。
今日は公務ではないので、それぞれ騎士とは分からないような服装にしてもらってる。
みんな遠慮しながらも口にしてくれた♪
美味しいって顔を綻ばせてくれる。
嬉しいなあ♪
席に戻ると隣のリーリエが微動だにしないで座ってる。
「ん? リーリエは食べないの?」
「暗殺の危険がありますから」
「いや、自分で作ったんでしょ?
あ〜ん。
うん、バターたっぷりサクサクで美味しい!」
「毒を仕込んでおきたかったです」
「どんな恋の相手もイチコロなやつ?
それなら夜のデートになったら仕込めばいいんじゃない?」
「日中は暗殺禁止なんて約束もしなければよかったです」
「夜間は暗殺オッケーって約束でしょ?
昼はわたしと仲良しデート!
夜はわたしを暗殺なデート!
10の約束のうちの二つだね!」
「おかしな約束です。
お菓子を食べてるだけに。
ふへ」
「ダジャレもぽんこつ!」
自分のダジャレでウケてるし!
「リーリエの残念なところもかわいいよ〜!
ほら、あ〜ん♪」
「自分で食べれます」
「だめ〜♪
わたしの手から食べて欲しいの♪
約束でしょ?
はい、くまさん♪」
「…………」
ぷるんとした唇が開く。
目をつむってて可愛い。
ぱくん
もぐもぐ
「はい、もう一個♪
今度はうさちゃんね♪」
ぷるんとした唇が開く。
目をつむってて可愛い。
ぱくん
むぐむぐ
「はい、もう一個♪」
今度は自分から食べに来た!
おお! 餌付けタイムが楽しい!
「ねえ、リーリエ?
わたしのこと好きになった?」
「こんなことで好きになったりしません」
ふいっと顔を背けるリーリエのほっぺが心なしか赤い気がする?
「ちゃんと約束覚えてるよね?」
「……言いたくありません」
「じゃあ、わたしの口から言うね?
昼のデートで、わたしを好きにさせることができたら暗殺をやめて、わたしのお嫁さんになること!」
「知りません」
「その代わり、夜のデートに限ってリーリエのほっぺにわたしがキスをするまで暗殺してもオッケー!」
「今すぐ暗殺したいです」
「それは約束違反だよ〜」
約束のうちの一つ
昼は行動を共にすること
ただし両者の同意があれば別行動可
またラーサラ・ルパ・ベルトールの意思により同行不可を認める
約束のうちの一つ
夜間のみラーサラ・ルパ・ベルトール暗殺の自由を確約
ただしリーリエ・コルニクスの頬に接吻したらその日の暗殺は終了
約束のうちの一つ
両想い確定で暗殺中止、リーリエ・コルニクスを無罪放免の上、結婚
約束のうちの一つ
暗殺に成功した際、リーリエ・コルニクスを無罪放免とする
「もちろん分かってます。
あくまで気持ちを表明しているだけですから」
「はいはい。
そのうちわたしのことを好きにさせてあげるんだからね!
それはともかくさ?
まだ昼の時間が残ってるし?
リーリエがばら撒いてくれた小麦粉のおかげで?
わたしもリーリエも頭から真っ白だし?
この後、温水プールがあるスパリゾート ルパイアンズに行こうか!」
「ええー」
すっごい嫌そうな顔してるし。
でもね?
問答無用♪
だって昼は行動を共にすることっていう約束があるからね♪
「じゃあご挨拶したら早速行こう!」
子どもたちとしっかり後片付けをして調理室もきれい!
みんなに見守られながら養護施設をあとにした。
ん〜♪
手を振ると笑顔で振り返してくれる子どもたちがかわいい♪
「姫様、後ほど調査の詳細な報告をさせていただきますが、前もってお耳に入れておきたいことが」
「イリスちゃん、どうしたの?」
馬車に乗り込むときに近衛騎士の一人が神妙な面持ちで声をかけてくる。
そのまま三人で馬車に乗る。
女子の割には背が高くて、わたしより一つ年上の女の子。
リーリエほどじゃないけどお胸が発達していてやっぱりうらやましい。
太陽光やランプの明かりによって深緑や赤紫に変わって輝く瞳はまさに変彩金緑石。
真紅に輝くような長髪はハイポニーテールにしているし、おくれ毛に可愛いチャームをつけてるあたり乙女心を忘れてない。
彼女はわたしの近衛騎士団一番隊隊長。
お出かけの時は大体イリスがついてくる。
とある侯爵家の長女なんだけど、ちょっと事情があったりする。
まあ、うちの騎士ちゃんたちはいろいろある。
「ある組織が子どもたちを多数引き取りたいと名乗りをあげているそうです」
「一度に?
ふ〜ん。なんだろね?
なんか怪しいなあ」
「はい。子どもたちを一度に組織が引き取るなどあまり考えにくいことです。
お戯れがすぎる姫様の支援があるとしっかり公にされていれば、そういうこともなかったかと思われますが。
よろしければ他の施設も含めて状況や背後関係をお調べいたします」
お戯れって言われた!
苦言!
「はいはい。
だって公にしちゃうと公費で処理しなくちゃいけないじゃない?
そんなの嫌だしめんどくさいし不便だし」
「こういうことをされることも役人たちに不評を買われてる原因の一つかと」
「そうだねえ。
この養護施設は王女としてじゃなく個人として別名で支援してるだけだからね。
わたしの管理下にあるここを変なやつに手を出されたくないしなあ。
断るように助言した方がいいよね?
じゃあお願いできる?」
「は。かしこまりました。
馬車でのお送りは観光エリアの入り口まででよろしいでしょうか」
「分かってるねえ♪
よろしく〜」
馬車なんて乗らなくても魔導車にすればいいのに。
王族の移動は馬車に決まってるなんて古い伝統を守らなくてもいいのになあ。
まして、あの養護施設には個人として行ってるのにさ。
近衛騎士のみんなが許してくれないんだよねえ。
やっぱり今度から魔導車にしてもらおう!
「お待たせリーリエ。
なんかめんどいことになりそうだよ。
膝枕してもらってもいい?」
「ダメです。
それよりもほんとにプールに行くのですか?
水着がありませんが」
「大丈夫〜。
ちゃんと用意してあるから!」
「……なぜにわたしのサイズをご存知で?」
「王族の諜報機関を舐めないで欲しいな♪」
「職権濫用です」
「役得!
それに見れば大体分かるし。
かわいい水着を用意してあるからね!」
そんな会話をしながら馬車に揺られて観光エリアの入り口に到着。