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7キス♡クッキーと純白

「サラお姉ちゃんだ!」

「一ヶ月ぶりだね!」

「今日は何して遊ぶの!」


門を開けて敷地に入ると、待ってましたとばかりに3歳から10歳程度の子どもたち数十人が笑顔で歓迎してくれる。

この養護施設では身寄りのない子、ひどい虐待にあった子たちはもちろんだけど、ちょっと特殊な子どもたちも保護しているんだよね。


「おお〜♪

みんな相変わらず元気だねえ!

今日はみんなでクッキーを作って食べようか!

ちゃんと色々買ってきたからね!」


子どもたち「わ〜い!」


喜ぶ子どもたちの群れから数人の男の子、女の子がリーリエの背後に回り込んでる。

おお? もしかしてわたしもやられたあれをやるつもりかな?


「「「「わっ!」」」」

「ひゃあ!?」


子どもたちが背中やおしりを叩きながら駆け抜けていく。

びっくりした勢いで飛び上がってずべんと転ぶリーリエのスカートがはらりと。

秘密の花園!

と思ったら暗殺的なショートパンツだった!

まあ、これはこれでドキッとしたからあり!

暗器な刃物は別の意味でドキッとするけど。

子どもたちも引いてるし。


「ご褒美にアメちゃんをあげよう!」

「あげないでください」


むすっとしてるのもかわいいなあ♪


「あは〜♪

わたしもここに初めてきた時にやられたんだよね。

なんていうか洗礼の儀式みたいな?」


そんなやりとりをしてたら近寄ってくる初老の女性が一人。

この養護施設の院長先生だ。

落ち着いた色のワンピースを身につけて飾り気もなく品の良い感じ。

前に来た時よりもちょっと服が傷んでない?


「姫様。

今回も多額の寄付と子どもたちへの素敵なお時間をありがとうございます。

おかげさまで子どもたちの新しい服や教材を買えますし、食事も充実させていただけました」


「いいんだよ〜。

お小遣いから出してるんだし!

それより自分の服を買ってくださいね!」


「お心遣い感謝申し上げます。

ですが、年老いたわたくしにはこれで充分でございます」


謙虚!

穏やかな微笑みを浮かべてるし!

でもね?


「やっぱりそう言うと思った!

でもね?

ご自身の身なりも整えた方が子どもたちも安心ですよ?」


実際、今のやりとりで心配そうな眼差しを向ける子もいるし。

そんな子どもたちの視線に気づいたみたい。


「あら? それは気づきませんでしたわ」

「それじゃあ、これを受けとってくださいね?」


今日の買い物の理由の一つだったんだよね!

落ち着いた色合いの似たようなワンピースを数着。

もちろん高価なものじゃない。

ごくありふれた一般的なもの。


「まあ! わたくし……涙が……」

「ふふ♪ これで子どもたちも安心だね!」


院長先生の涙を見た子どもたちのなんて嬉しそうなこと!


「姫様、心からお礼を申し上げます。

わたくし、長いことこちらでお勤めさせていただいておりますが、子どもたちがこれほど明るい笑顔を見せてくれるのは姫様がいらっしゃるときばかりです」


「なんていう偽善者っぷり。

いい格好をして人気取りも大変ですね?」

「リーリエが辛辣!

ちゃんと子どもたちのこと大好きだよ?」

「未来の支持者増産中ですね」

「増産してはいないけど!?」


「リーリエ様? あなたは……」

「……お久しぶりです。院長先生」

「やっぱり! まあまあ!

なんて綺麗に成長して! 姫様と共に視察にいらっしゃるなんて!

公爵様には……」

「院長。そのお話は無用にございます」


「ああ、失礼いたしました。

あんなに無口だった子がしっかりお話しできるようになって、わたくしはうれしいですわ。

それにあなたが最初に始めたドッキリ遊びをご自身も受けてしまうなんて。

あの頃はいつも決まった女の子を驚かせていましたっけ。

ふふ、おかしなものですね」


「おおう!?

養護施設におけるドッキリ遊びの創始者がリーリエ!

しかも決まった女の子を?

もしかしてその子が好きだったの?」

「……」


ふいっとそっぽ向かれたけど、きっとそうに違いない!


「わたしのこと好きになってくれる可能性大だね!

俄然やる気が出てきたよ!」


「可能性はマイナス1000%です」


「でもさあ、そのショートパンツはあんまりだよねえ?

ていうか暗殺用の装束だよね?

やっぱりもっとかわいい純白のレースな下着とかじゃないとね!

今度一緒にランジェリーショップに買いに行こう!」

「お断りします」


「ダメ〜!

日中は必ずわたしとデートすること!

これも交わした約束の一つでしょ〜♪」

「デートじゃありません。

行動を共にするだけです。

……あんな約束するんじゃなかったです」


ふふ〜♪

ランジェリーで着せ替え、絶対するからね!

楽しみ〜♪




そして施設の厨房で始まるクッキー作り♪

お昼ごはんも終わって後片付けを終えた料理人さんたちと交代だ。

院長先生はわたしのお供にきた調査官たちと院長室で近況や運営状況なんかを打ち合わせてると思う。

ここにいるのはわたしにリーリエと子どもたちだけ。

じゃなかった。

一応護衛として、わたし直属の平服姿の騎士もいる。


小麦粉にバターに粉砂糖に卵、チョコレートにドライフルーツなどなど。

さっきフードショップで買ってきたごく普通の食材。

わたしは王女だけど、社交界とかに出席しないで引きこもっている間にお菓子作りとか自分のやりたいことばっかりをやっていた。

パパはそういうところもわたしに甘い。


さてと、クッキー作りの進み具合はどうかな?

リーリエは安定感のあるポンコツで粉をひっくり返しては子どもたちに謝罪していた。

殺気がこもってそうなクールな謝罪に子どもたちがドン引きしてるんですけど。

わたしもしっかり粉をかけられた。

これはあれだね。

粉をきれいに落とすイベントをしないとだね。

それはともかく、みんな楽しそうにしてるなあ♪

やっぱりお菓子作りは楽しいよね♪


「ねえリーリエ?

院長先生と子どもの頃のことを話してたけどさ?

公爵のパパと一緒に視察とかで来たことあるの?」


「……わたしは一時期だけこの養護施設にいたんです」

「早い話、公爵パパの養女になったのね?

そんなこと言っちゃうなんて院長先生もうっかりだったね。

あれ? でもリーリエってわたしと同じ日に生まれて誕生の報告があったはずよね?」


「乙女の秘密です」

「乙女の秘密じゃ、しょうがないかあ!

まあ、今度その気になったら教えてよ」

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