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5キス♡魔獣と秘密の花園

「ところで……わたしが言うのもなんですが、護衛はつけなくていいんですか?」


「街歩きはね。いらないって言ったの。

パパはね、わたしに甘いのよ!

わがまま言えば大抵なんでも聞いてくれる!」


あ、またジト目でわたしを見てる。

そうは言ってもね?

わたし直属の近衛騎士団は話が違う。

護衛はいらないと言ったわたしの言葉に不承不承頷いてはいたけれど、きっとどこかでわたしたちを見守ってくれてると思うよ?

我が主君のために!ってね?

いないかもしれないけど。

その場合はわたしに人気がないということになってしまう!?


「それはちょっと悲しい!」

「なにが悲しいんです?」

「そ、そりゃあ、養護施設の視察にはちゃんと護衛や関係者がくるわよ?

公務ではないんだけど一応ね。

あ! 買い物する時間がなくなっちゃうよ!

最後の買い物が終わったら養護施設に行こうね!」


あっちのお店に行ったりこっちのお店に行ったり。

二人であれこれ吟味してお買い物が楽しい♪




「こんなにいっぱいの荷物になるのでしたら、荷物持ちなり馬車なりお願いした方が良かったんじゃないですか?」

「へへ。あんまりそこまで考えてなかった」


「しょうがないですね。

あちらの大通りから運行している魔導路面車に乗って行きましょうか?」

「ナイスアイディ〜ア!

そうね。そうしよっか!」


二人で両手いっぱいの重い荷物を抱えて大通りに向かって歩き出す。

商街区はどこも大勢の人が行き交っている。

やっぱりこの街は活気にあふれていていいなあ♪

パパや役人さんたちががんばってる証拠だね!


「ふう! やっと大通りに出たね!」


商街区から出てすぐにある大通りはこの街の大動脈の一つ。

運搬用の魔導車や路面魔導車とか交通量がとても多いんだよね。

でもなんでか今日は少ないような?


「停留所は……あった!

誰も並んでないよ。リーリエ、一番乗りだね!」

「一番は始発に乗った人だと思います」


反応がそっけない。

むう。まだわたしの名前を一度たりとも呼んでもらったことがないし。

暗殺の日から一ヶ月も経ってるのに、なかなか打ち解けてくれないなあ?



「重たかったあ!」

「買いすぎるからです」

「だって子どもたちに喜んで欲しいじゃない!」

「それはいいことだと思います」


わたしもリーリエも抱えた荷物を舗装された石畳におろす。

わたしの体は刺されても平気だけど、重いものはちゃんと重たい。

おでこの汗を拭う。

今は初夏だし、日中はそれなりに暑いもんね。

リーリエも重たかったみたいで汗をかいていた。

きらりと輝いて美しいったら♪


「リーリエ、時間見てくれる?」

「え〜と。次の便は……五分後、もうすぐですね」


懐中時計をポッケから取り出して確認してる。

それじゃあっと♪


「きゃっ!?」

「あは♪」


リーリエがかわいい悲鳴を上げた理由。

振り向こうとしたほっぺによく冷えた瓶詰めドリンクをぴとっとあてたから。


「冷たいでしょ?

リーリエ、これ飲んで」


「……ありがとうございます」

「どういたしまして〜♪」


保冷バッグの中から、もう一本取り出してコルク栓をキュポンと外すと微発泡の割にシュワシュワっと弾ける泡がこぼれる。


のどを鳴らしてごくごくごっくん♪


「ぷっは〜!

レモン果汁の炭酸が冷えてておいっし〜!

ね!」


「おいしいです……

けぷっ! あ!」


小さな可愛らしいげっぷで口元を抑えるリーリエ。


「くぅ! なんてかわいい!」


思わず拳を握りしめて力んでしまう!


「か、かわいくなんてありません。

こほん……ほっぺにあてるのはもうやめてください。

心臓がびっくりします」

「ほおほお。クールな暗殺令嬢でもドキッとしちゃうことがあるんだね?」


「生きてますから当然です」

「リーリエのかわいい一面を発見!

うっれしいなあ♪」


わたしの一言で困ったようなほんの少しだけ口元をむにむにしてる感じがかわいい!


「お! 来た来た!」


あっちの方に小さく見える路面魔導車がこちらに向かってきてる。

舗装された石畳に埋め込まれた鉄製のレールの上を走っている。この都市における民の足でもある。

動力はもちろん魔力。

路面魔導車用に施された術式によって加工されたレールを魔力が伝わって稼働している。

でもやっぱり交通量が少ない。

なんでだ?


「なんだか様子がおかしいです」


「ほえ? なんだあれ?

ゆっくりなはずの路面魔導車がとんでもないスピードだね?」


停留所で止まらず、わたしたちのスカートがめくれる勢いで通り抜けて行ってしまった。

乗ってた人たちのなんて楽しそうなこと。

ていうか悲鳴をあげてた。


「惜しい!

もう少しでリーリエの秘密の花園が見えるとこだったのに!」


「何を悔しがってるんですか?

追いかけてくる魔獣がきます」

「おお! でっかい黒狼ブラックウルフ

魔獣運搬車から脱走でもしたかな?」


50人は乗れる路面魔導車の2倍はおっきい。

恐らくだけど予想は当たってる。

魔獣の体には引きちぎられた拘束帯がまだ残っているから。

軍隊か冒険者か知らないけど、生捕りにした魔獣を従魔省なり冒険者ギルドなり施設に運んでる最中だったんだろう。

偶然なのか暴走する魔獣のせいなのか大通りを利用している車両も少ないし、歩道を行き交う人も少なくて良かった。


「「きゃああああああ!」」


少ないってだけでいないわけじゃないんだよね。

見れば小さな女の子を抱えたお母さんが恐怖のあまりか歩道にしゃがみこんでいる。

う〜ん。あの黒狼ってば明らかにあの母娘を狙ってるよね?

お腹空いてるのかな?


「リーリエ、よろしく!」

「はい」


クールでそっけないリーリエの瞳がしっかりと応えてくれた♪


あの時からこの一ヶ月、いろいろ試しては来たけれど?

リーリエ以外の実践ははじめてかな?


とっとっとっと!

軽快な足取りで母娘の元へ走りつく。


「訪問用のドレスを汚さないようにしないとね!」

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