39キス♡番外編 レオーネとデート前編
ある日、リーリエがコルニクス家の都合でお昼のデートに来れなかった時のこと。
いつも通り視察を理由にして城の外へ遊びに出かけていた。
視察場所は従魔省の現場、引退した従魔がいる厩舎だ。
つまり獅子の獣人レオーネの職場だったりする。
レオーネのお仕事は引退した従魔のお世話がメイン。
死亡した魔獣の運搬や埋葬なんかもしている。
従魔省のお偉いさんは経費削減がしたくて引退した従魔の管理も埋葬も廃止したいらしい。
だけど従魔師の多くはそれに反対している。
「レオーネ〜。
敷料の交換終わったよ〜」
敷料というのはおがくずやわらのこと。
これが寝床になるわけなのよね。
従魔が健康でいられるように毎日のように交換しなくちゃいけない。
「案外早かったな!
おお! きれいにできたじゃん!」
オスライオンのたて髪みたいにふっさふさなオレンジ色の髪と立派なたっぷんを揺らしてる。
「便利な魔道具のおかげだね♪
でも力仕事は苦手だよ〜。」
魔導リフト車のおかげで一度にたくさんの処理ができるけどやっぱり人力は必要。
「はは! かわいい従魔のためだからな!
ちょっと休憩するか」
「うん!」
厩舎から外に出ると青空の下に牧草地が広がっている。
その向こうは管理された国有林もあったりする。
聖王都の外郭のさらに外側だ。
放牧された従魔たちは従魔師と契約しているから逃げることはない。
契約うんぬんよりも確かな関係を築いてるのが一番の理由。
「わふ!」
「きゃ! サリーだ♪」
わたしの胸に飛び込んできたのはレオーネが内緒で拾ってきた黒狼の子ども。
「相変わらずちっちゃいままだねえ。
言うておっきいけど」
「そうなんだよ。
よく食うのにでっかくならないんだよ。
魔獣基準だけどな」
「大器晩成型かな?」
「わっふ〜♪」
「あ! こら!」
サリーが派手にじゃれてくるもんだから草に寝っ転がってべろべろされてしまった。
「あ〜あ〜。べたべただな。
こんなことしてるとやばいぞ〜♪
覚悟しとけよ?」
「あ! そうだった!」
正午前の太陽の日差しが隠れて急に影になる。
その原因は。
巨大な従魔たち!
「あはは〜」
「わふ♪」
狼やら鹿やら猪やら、いろんな従魔にべろべろ、がじがじと思う存分もみくちゃにされた。
「あはは! すっかりいいように蹂躙されてたな!」
「たは〜。全身どろどろだよ〜」
「くんくん。うへ! くっせ〜!」
「わっふん」
「ほんと従魔たちはサラ姫のことを気に入ってるよ!
たまにとはいえ、がんばって世話してるからだな!」
「なめられてるだけじゃない?」
「そうかもな!
あ〜、がじがじ甘噛みさせるのは確かに良くないな。
くせになって他の従魔師にでもがじがじしたら大怪我もんだし」
「わたしの頭はがじがじされてよだれだらけだよ」
「それだけ好かれてるってこった」
「う〜。うれしいけどね。
体をきれいにしたい〜」
「そうだなあ?
それじゃあ、昼飯がてら森の中の湖に水浴びでも行くか?」
「行く!」
「わっふ〜!」
お弁当に着替えにタオルにブラシとかバスケットに入れて準備万端♪
レオーネがピュイっと口笛を鳴らすと毛足がもふもふ長い猟犬みたいな中型従魔が走ってきてぺたんと腰を下ろした。
鞍と手綱、ワンセットを口にくわえて。
「かわいい!」
「よしよし。
アイリッシュはいい子だな!
こいつに乗って行こう」
鞍と手綱をしっかり装着!
「あたしの腰にしっかりしがみついてろよ」
「わかった!」
先に乗ったレオーネに引き上げてもらって背中から手を回す。
「……なんで胸を鷲掴みにするんだよ?」
「え? わたしの手にフィットするよ?」
「そこは腰だろ!?
落ちても知らねぇぞ?
行くぞ、アイリッシュ!」
「うわ!?」
アイリッシュはこの従魔の名前ね。
速い速い♪
長いもふもふをなびかせながら風のように走る♪
牧草地を囲む高い柵を軽々飛び越えて林の中を疾走する。
「気持ちいい〜♪」
「舌を噛むからあんましゃべんなよ!」
「わふ!」
サリーも並んでついてきてる。
まだ生まれてからそんなに経ってないのに魔獣ってすごいなあ。
「到着だ」
「わあ〜〜〜♪
なんて綺麗な湖!
わたし、ここ初めてだよ!」
白樺に囲まれた広々とした湖。
湖面は景色を反射して鏡合わせのよう。
「そうだっけ?
水浴びするのにちょうどいいんだよな。
さっそく汚れを落とそうぜ!」
わんこ従魔の背中から湖にダイビングするレオーネ。
とてもきれいなフォームでくるくると着水すると飛沫をあげていた。
崖のように高くなっていて水面まで距離があるんですけど。
足のつくところまで泳いで移動するとバシャバシャと作業着ごと体を洗い始めた。
「サラ姫もこいよ!」
「うん!」
こ、ここから飛び込むのか……
ちょっと怖いんですけど。
「えい!」
わたしは無敵ですけど運動能力は決して高くないんですよ。
おしりから着水して飛沫を派手にあげてました。




