31キス♡ハグとなでなで
「皆さん、ラーサラ・ルパ・ベルトールです!
先日は商街区での火災事故への対応と国民の避難誘導をありがとうございました!」
「ました」
深々〜〜〜ぺこりとカーテシーをする。
驚く警備隊員さんたち。
びっくりな計画の実行日を発見してくれたペーシェちゃんたちとお別れした後、お昼も食べずに魔族が大暴れした商街区を担当する警備隊の駐屯地を訪れていた。
公式には魔族のことを公表していない。
あくまでも大火事。
だけど警備隊の中では魔族の情報は共有されていると聞いている。
各階フロアを回っては大きな声で挨拶して自席に座る隊員さんたちの元へ順番にクッキーを配っていく。
料理長にお願いして作ってもらった日持ちのする300人分のお菓子。
こういうことは早い方がいいからさ。
ほんとは手作りしたいとこだけどさすがに時間が足りない。
料理長さん、急いで作ってくれてありがとう!
「あの……ほんとに王女様ですか?」
「うん! そうだよ♪
そういうあなたはおばあちゃんの手を取って優しくエスコートしてあげてましたよね?
すっごくかっこよかったです♪
えっと、ダンケさん?」
「さん?」
「俺の名前……うそ……はい! ダンケです!
このクッキー食べないで大事にとっておきます!」
名簿は夜のうちにしっかり目を通しておきました。
「あはは♪
そんなこと言わないで食べてください♪
もうすぐお昼だし♪」
「だし」
リーリエさん?
なぜ語尾だけ合わせてくるのかな?
こんな感じで出動中の隊員さんを除いて御礼を言えました!
みんな喜んでくれて良かった♪
「ファーラちゃん、次は王立病院までお願いします♪」
「します」
移動は城からずっと魔導車を使ってる。
やっぱり馬車より快適だし早いしよく寝れる。
運転手はいつもおんなじファーラちゃん。
車いじりが好きなドワーフの美人お姉さま♪
王立病院の個室に到着。
「え? えええ!?」
ベッドに上半身を起こした黒髪の女性、あごが外れそうなくらいに驚いてる。
魔族に憑依されていた警備隊員。
「そんなにびっくりしなくてもいいのに。
ヒタムさん、体の具合はどうですか?」
「ですか?」
ベッドに腰掛けさせてもらってハグをする。
「す、すすす、すっかり元気です!」
「良かった♪
リーリエの風魔法とわたしの体当たりで怪我をさせたわけだし心配してたんだよね。
まだ退院できないのかな?」
「かな?」
「気にしないでください!
退院したいんですがもっと検査が必要とかで……」
「ちゃんと問題ないか見てもらった方がいいですよ♪
護衛もしっかりいるからね♪」
「ね♪」
「何から何までありがとうございます!」
この子には24時間、騎士ちゃんたちに交代で護衛をしてもらっている。
最初は念の為だったけど魔族の魂適合者だからなおさらだ。
「ケーミーちゃん、引き続き護衛をよろしくお願いします♪」
「します♪」
「お任せください!」
敬愛と礼を持って騎士ちゃんの手甲にちゅ〜をしてから手を振って個室を後にする。
お顔がはわはわしてました♪
「そろそろみんなと集まる時間だね。
じゃあ城に戻ろうか!」
「……人たらし」
「リーリエをたらしたい!」
「ダメです」
「むぅ」
城に着いたらもちろん運転手のファーラちゃんにもちゅ〜だよ♪
ファーラちゃんは慣れてるしドワーフだけあって剛気。
ニッカリ笑ってくれる。
そろそろお日様が傾く頃、王城の最上階にあるわたしの自室、3部屋ある応接室の一番小さい一室にみんなが集まっていた。
風魔法と魔導狙撃銃、ショートレイピアとダガー全般を扱う暗殺者リーリエ。
炎魔法と片手剣を扱う近衛騎士一番隊隊長イリス。
魔獣を手足のように操る獅子の獣人、従魔師レオーネと黒狼の赤ちゃんサリー。
生体魔法と回復魔法のスペシャリストでチビット族の回復術師プリプリ。
魔導解析と魔導学のエキスパート、ハーフダークエルフの魔導士ペーシェ。
そしてにゃんこの獣人侍女のミンケちゃんとわたし。
ミンケちゃんはお茶とお菓子を用意してくれている。
「みんな集まってくれてありがとう!
早速だけど魔族再興現存種族殲滅計画のこと、ペーシェちゃんからの情報を聞いてくれたかな?」
「わふ!」
「サリーのお返事がいいね!」
「サリーは分かってねえだろ?
話は聞いたさ。
手伝えってんだろ?
気持ちは分かるし、手伝いたい。
だけどあたしたちに何ができる?」
「正直に言うと分かんないんだ。
サマーフェスティバルは国をあげての商業祭。
国民総出の大イベント。
どこもかしこも人であふれてる。
そんな時にあんな魔族が大量に大暴れでもしたら大変なことになる。
だけどほんとに起こるかわからないし、わたしの一存だけじゃ中止もできない」
「今から根回しも間に合わないでしょうし、何よりお偉方は反対なさるでしょう」
「そうだね、イリス。
きっと危ないことの方が多いと思う。
もしかしたら死んじゃうかも。
わたしは無敵になったから死んじゃうことはないけど、みんなはそうじゃないでしょ。
だから無理にお願いはできないの。
だけどわたし一人の力じゃどうやって対処したらいいか分からない。
でもこの国の人たちを助けたい。
みんなの力を貸してください!」
体が折れるくらいに頭を下げる。
「仮にも王女だろ?
命令すればいいんだよ。
ほんとサラ姫らしいよな。
あたしとミンケのこと、いっぱい助けてくれたろ。
女の獣人をおもちゃにするような奴隷商に誘拐された時はもう死のうかと思った。
あんときは涙が止まらないほど嬉しかった。
もちろん手伝うさ!」
レオーネとミンケちゃんと初めて会ったのは小さい頃、他国の奴隷商に誘拐された二人を助けて以来ずっと仲良くしてる。
「ありがとうレオーネ!
みんなはどうかな?」
みんながなんて言ってくれるか、実は不安だったりする。
「昼の同行は約束の一つですから」
「わたしは姫様と共に!
サラ様を敬愛する騎士の誇りにかけて!」
「うちんは後方支援しかできないの」
「回復ならお任せくださいなのです!
でも具体的にはどうするのです?
プリは何をすればいいのです?」
「それを今からみんなで相談したいんだ。
まず最初に何をしたらいいと思うか教えて!」
「近衛騎士隊から王命を預かって軍部と警備隊に支援を要請いたします!
では行ってまいります!」
「待って欲しいの。
イリスは熱血が過ぎて気が早すぎるの。
支援の要請は早い方がいいけど具体的な作戦行動が必要になるの。
あれから六芒星の解析と魔力波長の特性を調べたの。
ハッキングで新しいことも分かったの。
イリスから聞いた先日の魔族暴走の情報と合わせて色々分かったことがあるの。
みんな聞いて欲しいの」
魔導コンソールを起動するペーシェちゃんをみんなで取り囲む。
ペーシェちゃん、目が酷く疲れてる。
きっとずっと徹夜してくれたんだろう。
「よしよしなでなでだよ〜。
ついでにこっちも〜♪」
「どこを触ってるの!?
なでなで気持ちいいの。
結論から言うの。
現段階では計画実行日時に放出される魔力波長の発信源を特定できないの。
できないと魔族の憑依は止められないの」
「ええ!? それじゃどうすんだよ!?」
「その時間までに見つけることができないかな?
魔力波長を放出させなければいいんだよね?」
「そうだけど、一カ所かもしれないし複数かもしれないの。
ギリギリのタイミングだけど特定する方法も考えたの。
憑依は止められないけど、浄化……というか憑依を阻害するの」




