26キス♡黒い耳と美少女
「解析結果が出たの」
魔法省が所有する魔導研究塔は聖王都にいくつもあって規則的に並んでいる。
その一塔の一室。
暗い部屋の中、宙空に浮いたいくつかの半透明なコンソールがいろんな数値やグラフを映している。
ピシッと直立姿勢で操作する絶世の美少女の横顔をわたしは見つめていた。
ああ〜♪ なんて美麗♪
立体魔法陣に六方を囲まれて六芒星のシートが浮いている。
「何が分かったのかな♪」
「この六芒星、すごいものなの。
はっきりと分かったのは魔法適正に反応して色が変わる識別テープってのが一つなの」
「へー。適性が分かるんだ?
それってかなり革命的なことだよね。
魔法省や商業ギルドが飛びつくんじゃない?
どうやって分かるのかな?」
「最初は白なの。
赤色なら火属性。
水色なら水属性。
黄色なら雷属性。
緑色なら風属性
茶色なら土属性。
特殊属性を除いた基本の五つの適性がわかるみたいなの。
なければ白のまま」
「特殊属性っていうのは闇とか光だよね。
魔法適性を増やすっていうのは?」
「それはなさそうなの。
そんなことができたらとんでもないことなの。
でも自分で気づいていない適性を見つけることはできると思うの」
「ふ〜ん。なるほどね。
それじゃあ噂もそこそこバカにできないってことかな」
子どもたちを中心に流行中の六芒星のシートを首に貼る遊び。
ただの噂だけで広まっただけじゃないってことだね。
「ただあと一つが問題なの?」
「あと一つ?」
「これってある種の送受信器になってるみたいなの」
「ある種の送受信って何を?」
「魂の情報なの」
「はい? 魂?」
「そうなの。
魂に反応してるの」
「魂ってどいうことかな?」
「魂の種類というか? 起源なの?」
「魂に種類なんてあるんだ?」
「そうなの。大雑把に種族ごと、細かく言えば個体ごとに特徴があるの」
「じゃあこの六芒星はどんな種族の特徴なのかな♪」
「サラちゃんてば楽しくなってるの」
「だってこういう謎解きみたいのってワクワクするじゃない♪
ペーシェちゃんだってそうじゃない♪」
「その気持ちはわかるの。
だけどなの。
この六芒星が反応する魂の特徴は……」
「特徴は♪」
「魔族なの」
不変の忍耐力を感じさせて緑にゆらめく灰礬柘榴石のような瞳が憂いを帯びている。
クセのあるウェーブを編み込んでハーフツインテールが紫色に輝くプラチナブロンドが美しい。
スタイル抜群の黒い柔肌はまるでシルクのようななめらか食感♪
食感じゃなかった触感。
長くて黒い耳が不安そうに垂れている。
絶世の美少女はダークエルフの血が流れている混血種だ。
魔導解析のエキスパートだったりする。
魔導学を教えてくれる先生でわたしのお友だち♪
「魔族?
だって魔族はずっと大昔に絶滅していて……
あ!
わたし魔族と戦ったよ!」
「冗談もほどほどなの」
「冗談じゃないよ〜。
こないだ連絡した時にわたしのお嫁さんのこと教えたでしょ?
そのリーリエと一緒に倒したんだから!
倒したっていうか風魔法で激突させられたんだけどね?」
「ますます分からないの。
ところでサラちゃん?
なんでずっとうちんこと抱きついてるの?」
「久しぶりのペーシェちゃん成分を堪能してます♪」
紫の髪に顔を埋めてスーハーしてみる。
「はわ!?
耳がこそばいなの!」
息がかかった?
黒くて長い耳がにゃんこみたいにぱたぱたしてる♪
「その魔族なんだけどね?
倒した後、多分だけど警備隊の女の子に変身したんだよね?」
「変身なの?
魂の情報を送受信……
もしかしてこの六芒星はある種の個体を探すための送受信器なの?」
立体魔法陣の真ん中に浮く六芒星をつまんで凝視するペーシェ。
「よく分かんないんだけど」
「他に変わったことはなかったの?」
「他に? やわこかった♪」
「何がなの?」
「特大マシュマロ♪」
「サラちゃん、死んでから欲望がフルオープンなの」
ペーシェにはわたしのこととかリーリエのこととか色々情報提供済みだったりする。
「そうだねえ……炎のドレスをまとった綺麗な女の子だったなあ♪
剣術もすごくて炎の魔法が強くて耐性もあってリーリエの風魔法で弾にされて激突してやわこくて求婚?されて黒髪の女の子に変身して……首筋に黒い火傷みたいな痕があったかな?
今はイリスちゃんが保護して王立病院にいるはずだよ」
ちょっと気になって首に手をやっていた。
「なんだかおかしな単語があったの。
首筋に黒い火傷なの?
子どもたちに流行しているこの六芒星のシートは首に貼るものなの」
「そうだよね。
てことは……警備隊の女の子もつけてたのかな!」
「きっとそうだと思うの」
「魔導通信機で聞いてみる!」
「お願いなの」
イリスの番号にアクセスする。
「イリス?
あの子はどうしてる?
魔族?だった子。
……うん……うん。
すぐ近くにいるんだね?
元気? それは良かったよ♪
首にシールを貼ってたか聞いてくれる?
…………
やっぱり!
どこで手に入れたか分かる?
…………
もらったものだから分かんない?
そっか。うん、とりあえずありがと!
わたし?
今、ペーシェちゃんと一緒だから大丈夫だよ〜。
じゃあね!」
呼び止められた気がするけどピッと魔導通信機を切る。
「首に貼ってたよ!」
「当たりなの。
魂情報を特定して変身なの。
つまり……憑依なの」
「憑依?」
「そうなの。
魔族の魂が憑依してその体を自由にできるの。
変身は魂の情報が魔族の魔力で変換されて姿を変えてるように見えるだけだと思うの」
「つまりあのたぷたぷも幻ってこと?
この六芒星は憑依できる個体情報を送信して憑依する受信器ってことだね!
でも魔族の魂に反応するんだよね?
あの子は人族だったよ?」
「たぷたぷって何の話なの?
これは推測なの。
血統なのか魂の輪廻なのか魔族にゆかりがある個体だと思うの。
何世代も前の特徴が色濃く現れる先祖返りかもしれないの」
「なるほどねえ?
でもそれってあの一人だけ?」
「一人だけとは限らないの。
どれくらい流行してるの?」
「詳しくは分からないけど子どもたちは半分くらいはいるらしいよ?
あんなのが何人もなんて大変だよね?
これって偶然起きるもの?
それとも誰かがそんなことしてるのかな?」
「偶然流行したもので偶然魂を特定して偶然魔族が憑依するなんて偶然がすぎるの」
「つまりどっかの誰かさんがおっかないことを考えてるってことよね?」
「そう考えた方が自然なの。
なの!? こ、こそばいの!」
「ワクワクしてたのに怖い話になってドキドキしたから心を落ち着かせたいんだ♪」
話をしている途中から抱きしめてました♪
「はあ〜。落ち着くよう」
「う、うちんこと心臓はドキドキが激しいの!」
ただいま不安な気持ちを落ち着かせるためにペーシェちゃんを堪能しております♪
「ねえ、この話って魔法省としてきちんと対処するかな?」
「どうなの?
頭の固いじじいばばあばっかりで会議会議で進まないかもなの」
「魔法省もややこしいからねえ。
魔法適性はともかく魔族が絡んでるとなると危険だよね」
「そうなの。
なるべく早く出所を押さえて六芒星を回収した方がいいと思うの。
それにこの技術も流出させちゃいけないの」
「う〜ん。そうすると国防省の軍部とか警備隊には通さない方がいいかなあ?」
「サラちゃんの近衛騎士隊を総動員すればいいの」
「それしかないよね?
(あとは諜報部かな)
また苦労かけるなあ。
でも分かったよ!」
「さらに解析は進めておくの」
「じゃあ城に帰るとしますか!
よろしくねペーシェちゃん♪」
「どこ触ってるの!?」
もちろん決まってます♪




