24キス♡ほっぺと唇
「とりあえず終わりましたね?
ご無事でなによりです」
「うん! ありがとう!」
リーリエの手に引き上げられて隣に立つ。
「お姫様たちすっごいね!」
「ルーチェちゃん、怖かったでしょ?」
「ううん! お姉ちゃんたちが強いから大丈夫!」
「ふふ。そっか」
ん? ルーチェちゃんの首にも六芒星のマークが付いてる。
ほんとに流行ってるんだなあ。
「イリス様!
女の子の母親を発見しましたのでお連れしました!」
「ママだ!」
警備隊に連れられて駆け寄るとルーチェを抱きしめるお母さん。
「ママと会えて良かったね♪
今度ははぐれないようにね♪」
「うん! お姉ちゃんたちありがとう!
おっきくなったらお姫様のところに行くね!
バイバーイ!」
警備隊に付き添われた二人をみんなで手を振って見送る。
「未来の支持者ゲットですね」
「そういうつもりはないからね?」
「この者は何者でしょうか?」
「分からないよ。
とりあえずわたしの管理下におきたいから回収して治療と保護をしてくれる?」
「はい。心得ております。
意識が戻ったら事情聴取も進めておきます。
サラ様、魔法省に行かれる予定でしたが、この後はいかがされますか?」
「そうだねえ。
まずはリーリエの治療をしないとだね」
魔法省に行って星マークを調べてもらうつもりだったけど、それは当然後回しだね。
「救護班を待ちますか?
それとも城の魔法医に診てもらいますか?
でしたら魔導車を手配いたしますが」
「ううん。
救護班は怪我をした人たちを優先してあげて。
リーリエは神殿に連れていくよ。
ここからなら路面魔導車で行ったほうが近いし、プリプリに治してもらった方が早いよね!」
「ですが聖皇教会は……」
「プリプリは友だちだから大丈夫!
知ってるでしょ?」
「それはもちろん。
分かりました。
サラ様は小さい頃から仮病を使っては抜け出して好き勝手なところに顔を広くしてましたからね。
何度あの弱々しそうな芝居に誰もが騙されたことか!
くっ!」
「へへ〜。ごめんね♪
いつも協力してくれて嬉しいよ♪」
「その太陽のような笑顔にわたしはなんでも言うことを聞いてしまいそうです!
サラ様、聖皇教会ではあまり長居はされませんよう。
それと買い物で持ち帰ったお召し物にお着替えを。
その……少々わたしには刺激が強くて!」
「ありゃ。
わたしもリーリエもぼろぼろだね」
「ハレンチです」
建物の影で着替えました!
警備隊員さん!
チラチラこっちを見るんじゃないの!
「そうだ。イリスにお願いがあるの」
「なんでしょう?」
「明日からでも戦闘の稽古をつけてほしいの」
「はあ……」
何をため息ついてるのかな?
「いずれはそのようなことをおっしゃるとは思ってました。
分かりました!
このイリスにお任せください!」
「やたっ!」
バストアップも兼ねて鍛えられそう!
「それではまいりましょうか」
「え? イリスも行くの? それはダメだよ」
「なぜです!?」
「だって避難誘導は進んでるけど、火災は収まってないし怪我人も大勢いるし、こんなに混乱しているんだよ?
イリスがわたしの名代として陣頭指揮をとって対応してね」
「くっ!?
わたしがサラ様の名代!
この命に変えましても!」
「命はかけちゃダメだよ?」
「は! レオーネ、サラ姫と一緒に行ってくれるかしら?」
「一緒に行きたいけど、あたしも仕事があるからなあ」
「充分助けてもらったよ!
レオーネはちゃんと自分のことをしてね。
相変わらずの休日出勤?」
「従魔に休みはないからな」
「わふ!」
「レオーネもわたしのところで働いてくれればいいのになあ。
そうすればこういう時、頼れるんだけどなあ」
「それもいいかもな!
イリスがんばれよ!
じゃあまたな!」
「わふん!」
「それじゃあイリス。
あとはよろしくね!
行こうかリーリエ」
「……お願いします」
「サラ様、念のため魔導通信機をお渡ししておきます。
もしもの時はお呼びください」
リーリエの肩を担いで歩き出す。
「お姫様抱っこにしよっか!」
「却下です」
「残念!」
しばらく歩くと誰もいない停留所に着いた。
ベンチに腰掛ける。
「疲れたね? 痛くない?」
「わたしは大丈夫です」
強がってない?
冷や汗かいてない?
「怪我をした人たちは大丈夫かな?
それにしても警備隊の人たちも大変だよなあ……。
そうだ!
せっかく魔導通信機があるんだし魔導路面車を待ってる間にミンケちゃんにお願いしておこう!」
「なんです?」
「ん? そうだね〜。
内緒!」
魔導通信機のメール機能でミンケちゃん宛にお願いを送信する。
「ところで時間を見てくれますか」
火傷に怪我もしてるしリーリエがしんどそう。
「いいよ〜」
リーリエから懐中時計を受け取って時刻表と見比べる。
「あと10分か。
ちょっと待っちゃうな。
リーリエ我慢でき……
ひゃ!?」
振り返ろうとしたほっぺに冷たい感触。
無敵だけどちゃんと熱さ冷たさは感じるからね。
「この間のお返しです」
「あは♪ やられたね!」
「どうぞ」
「ありがと」
二人でベンチに座って一本しかない瓶のコルク栓をシュワっと抜いてごっくん一口。
「レモン炭酸がおいしいね〜。
はい」
「いただきます」
渡した瓶を傾けてこくんと飲みくだすリーリエ。
「また間接キスしちゃったね?」
「……あ」
ふいっと顔を背けるリーリエがいつまでもこっちを向いてくれない。
「リーリエ〜?」
「先ほどは助けていただいてありがとうございます」
顔を背けたままなんですけど?
「結局、何にもしてないけどね」
「……いえ、嬉しかったです」
「ほんと! それは良かったよ!
まだ来ないかなあ?
早くリーリエの怪我を治してあげたいんだけどなあ」
顔だけ路面魔導車が来るはずの方向に向けて足をぶらぶら。
「あ! 路面魔導車が来たよ!」
ちゅ
リーリエの方に勢いよく振り返ったわたしのほっぺにとても甘くて柔らかい唇の感触。
見つめ合うわたしとリーリエの時間が止まったよう。
「急に振り返るから、その……あたっただけです」
「ほんとに?」
「ほんとです……」
「そういうことにしておこう!
リーリエからの初ほっぺちゅ〜いただきました!」
「違います」
魔導路面車が目の前に停車すると扉が開いた。
「ふふ。じゃあ乗ろうか?
肩を頂戴♪」
「……はい」
リーリエの肩をしっかり担いで密着。
ゆっくり乗り込んで座席に座る。
プシュッと音がして扉が閉まると、ゆっくりと路面魔導車が進んでいった。
まるでわたしたちの仲みたいに。
そんなわたしとリーリエたちとの幸せな未来を。
誰も邪魔をしないでほしい。




