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1キス♡ぽんこつと無敵

「うっは〜〜〜!

狙ってる♪ 狙ってる♪

今夜も約束通り来てくれた!

だけど、ぽんこつっぷりが果てしないね〜〜〜♪」


満月までもう数日。

月の明かりが煌々と城下を照らす夜の闇。

わたしは単眼鏡をかまえて向かいにそびえる塔に注目していた。


ほんの少し前。

薄手のネグリジェに上質の絹であつらえたナイトガウンを羽織ったわたしは、自室のバルコニーで夜の空気を楽しんでいた。

月夜が見える晩は寝る前にお月見をするのが日課になってるのよね。

月の光を浴びるとなんか落ち着くし、美容にもいいとか未来への道を導いてくれるなんてことも聞いたこともあるし♪


「ふっふ〜ん♪

あどけない美少女のかわいい寝巻き姿と言ったら!

こんな姿を国民たちが見たら卒倒モノよね!

はあ〜。

なんてこと言ってみたけど、ほんとは自信ないんだよね〜」


膝までかかるストロベリーブロンドに陶磁器のように白い肌。

水宝玉アクアマリンのように聡明さを感じさせて青く輝く瞳。

顔立ちも可愛らしく整ったわたしは見る者をあっと言わせるくらいに美しいらしいんだけど?


ふっと自分の胸元を見る。

お胸はまあ、それなりに発達中?

わたしは15歳だから?

まだまだこれからよね?

そう思いたい!


だけどね?

たまにしか出席しない社交界に足を踏み入れると素晴らしく綺麗な貴族令嬢たちがいっぱいいるの。

容姿端麗、スタイル抜群!

そんな令嬢たちを眺めると思わず口元が弛んでしまうわけだけど……

比べてわたしはどうなんだ?と思う時もあるわけで。


こほん。

そんなことは今はどうでもいいわ。

狙ってるの言葉通り、今まさに王女であるわたしを暗殺しようとする人物がいた。

月明かりに何かがきらりと反射して気がついたんだけどね?


王城の城壁、北東にそびえる魔法省が所有する魔導研究塔の屋根の上。

大昔にとっても偉い魔法使いが創造したっていうとっても古い建造物。


「どうやってそんなとこに登ったの?

ぽんこつ暗殺令嬢のくせになかなかやるわね?」


夜風になびく長いホワイトシルキーブロンド。

その瞳は秘めた好奇心を感じさせて赤く輝く尖晶石レッドスピネルのよう。

体にぴっちりとした黒いヘソ出しベストにショートパンツで白い足が眩しい!

特に輝く物体が二つ。

白い谷間がはっきり見える。

たゆんたゆんなお胸が風に揺られてる!


「ああ〜! すっごい立派!

満月に照らされてる姿が綺麗!

って、全身黒くしないんかい!

めっちゃ目立つ!

暗殺の意味!

目の薬になるからいいけどさ♪」


強い風がおさまるのを待ってから狙撃するつもりかな?

夜風がちょっと肌寒いし、そんなにのんびりしてると部屋に入っちゃうよ?

そういうところもぽんこつ♪


「あ!?

両手をばたばたして落ちそうになってる!

体ゆらゆらして倒れそうになってる!

ちょっ!?

大丈夫!?

持ち直した……

落ちないで良かった〜!

さてと、今回の得物ぶきはなにかしら?

魔導研究塔からここまでかなり距離があるわよね?

ん〜〜〜?」


「魔導狙撃銃だ!」


ボルトアクション式のスナイパーライフルに弾丸を装填してる。

魔導と科学が融合した逸品。

あれはでっかい魔獣も倒せるような威力じゃなかったかな♪


斜めってる屋根に踏ん張るように大股を開いて座射シッティングの姿勢でライフルをかまえ直してわたしを狙ってる!

あら大胆♪

さっきのはこちらを確認しただけのよう?

スコープの奥に見える瞳が綺麗!


「うっは!

相変わらずかわいいがすぎる!

目があっちゃったのに気づいてないし!

く〜〜〜!

ぽんこつすぎてかわいい!」


魔導スナイパーには特別な技術が要求される。

基礎的な呼吸法などの射撃技術。

風損や重力による影響に対処する技術。

偽装工作や狙撃のための移動術。

さらには魔導器に通じている必要がある。

知識でしか知らないけど、そのために積み重ねる訓練は大変なものよね?


お? 風がおさまったということは?

トリガーを引き絞った!


ズバン!

ゴン!


「ふおっ!?

おでこ!

おでこに直撃だよ!?

しっかりあたったよ!?

びっくりした〜〜〜!」


思わず両手をバタバタしてのけぞっちゃった!


「容赦ないなあ!

ぽんこつの割に腕はいいのよね。

わたしじゃなかったら死んでるよ!

あれ? なにドン引きした顔してるの?

ん〜〜〜?

それじゃあ今度はこっちの番だね!

いっくよ〜〜〜!」


ドン!


「やっほ!」


彼女の横顔、すぐ真横に顔を近づけて手をあげる。

対して彼女はそれほどびっくりすることもなく無表情だったり。

少しはびっくりすればいいのに。


バルコニーの手すり壁に飛び乗ると、グッと腰を落として左脚で踏み込んだわたしの右脚は遠く離れた魔導研究塔の屋根に着地して踏み砕いていた。


「無敵加減が相変わらずのとんでも化け物ですね?」


「相変わらず冷静な反応だね?

この国の王女様に向かって化け物は失礼だなあ!

お目目が冷ややか!

乙女心が傷ついちゃうよ?

リーリエちゃん、慰めてくんない?」


「遠慮いたします。

王女なら王女らしくお淑やかに振る舞ってください」


「ええ〜〜〜!

そっちこそ狙撃銃なんて手にしないで令嬢らしくしてればいいのに!

優しくエスコートするよ?」


「エスコートをされるなら、おとなしく暗殺されて欲しいです」


「つれないこと言うなあ!

でもまあいっか!

自分から慰めてもらいにいっちゃうも〜ん!

ふふ♪ キスも〜らい!」


彼女の両肩を抱きしめてほっぺにちゅ〜をするとビクッと震えてる。

可愛い♪


ちゅ〜したところに魔法陣が現れて光ると消えた。

ポイントゲット!


暴れないでお利口さん♪

こんなとこで下手すると落ちちゃうもんね。


「これで今夜の暗殺タイムは終了ね!

ねえ? 続きをしてもいい?」

「ダ、ダメです!」


あは♪

ほんのちょっと焦ってる?


「残念だよ〜!

今夜の暗殺バトルはわたしの勝利だね!

明日のお昼デートも楽しみにしてるよ!

おやすみ!

じゃあね!」


次の瞬間にはバルコニーの手すり壁を踏み砕いていた。

あとで職人さんに修理をしてもらわないとね。

後ろを振り返って単眼鏡を覗くと、どうやって降りようか頭を悩ませてるのかな?

降りる方法を考えてなかったんかい!


塔の上でため息をつく彼女に手を振って自室に戻るとベッドにダイビング。

今日はこのまま寝ちゃおっと!


「明日が楽しみ〜♪」

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