第6話 薬液錬成の異常性
ノクトレギア帝国のパーセル街にて最高級宿屋に泊まることになったレオンたち。宿代は国が持つということになり部屋を決める際にレオンは2部屋お願いしようとしたが、
「「「ひと部屋で!」」」
3人のその言葉に押し切られる形となり結果的にレオンたちはひと部屋を4人で泊まることになった。レオンがそこに対してあまり抵抗しなかったのはそんなことよりも3人に対して話したいことがあったから。
「それでは出発は翌日の朝ということで。失礼いたします皆さん」
「ゆっくり休んでね。エミリアちゃん自体も病み上がりなんだから」
「はい!ありがとうございます!レオンさん!」
そう言ってレオンはエミリアたちと別れる。そしてレオンたちは用意された部屋の扉を開ける。
ガチャ
「へえ~。さすがは皇族が泊まる宿なだけあって広々としているわね」
「ここからの眺めもいいですよ?」
「勇者パーティーとしてもこんなランクの宿には泊ったことないもんね」
3人がそれぞれ部屋の中を堪能しているとレオンが1人ソファーに座りポツリとつぶやく。
「ねえみんな……今からでもやっぱり3人はジルグの元に戻ったほうがいいんじゃないかな?」
そのレオンの言葉に3人がお互いを見渡してレオンへと近づいていく。
「あら?レオンは私たちと一緒に旅するのは嫌なのかしら?」
「それは違う!僕も3人と一緒に旅するのは楽しいだろうなって思うけど……やっぱり今の世界の現状を考えると……」
「魔物の活性化の件ですか?」
「……」コクリ
レオンとしては魔物の活性化の原因である魔王の討伐を優先したほうがいいのではないかと。レオンがそう感じたのはやはりエミリアとの会話だった。
魔王を倒せるのは勇者のみではあるがパーティーメンバーの役割としてはその側近の魔将軍だったり万が一がないように普段の護衛という役割も担っている。勇者が魔王を討伐できるようにサポートするのが勇者に選ばれたパーティーメンバーの使命。
「言いたいことはわかるけどね~。でも私たちが戻ったところで魔王の位置すらわかってないわけだから魔王討伐まではまだまだ時間がかかるし。だったらやる気のないあたしたちよりも勇者パーティーメンバー候補リストでよりふさわしい人物が派遣されたほうがいいんじゃないかな?」
そう告げるサーシャにレオンはハテナ顔。
「勇者パーティーメンバー候補リストってなに?」
「あら?聞いたことないかしら?」
「うんうん」コクコク
ズキュン!
「うっ!?なんてかわいいの!?」
イリアリスの問いに頷きで返すレオン。その行動にイリアリスは心を打たれダウン中のため説明したのはナナだった。
「そもそも勇者には魔王討伐のために各国の支援がありますよね?その支援とはお金だったり武器・防具だったりはたまた戦い方の指導なんかもありますが、パーティーメンバーの派遣もそのひとつなんですよ」
「さすがに勇者といえど1人で戦いに行かせるわけにはいかないし、かと言ってひとつの国だけで勇者の旅についてこれる人物をあてがうってのも無理があるし。さすがにジルグ自らが探すってなったら時間がかかりすぎるからね」
「なるほど……そんな制度が……」
そして最後はイリアリスが説明した。
「つまり勇者パーティーメンバー候補リストというのは各国の騎士だったり冒険者だったりで実力・人柄ともに条件をクリアした者をリスト状にしてその中からジルグ自らが選出するのよ。だからわたしたちが抜けたところで新しい候補が派遣されるから新・勇者パーティーとして魔王討伐の旅は問題なく続くということ」
魔王という共通の敵がいるおかげとでもいうべきか各国は連携して勇者支援を行っている。
「まあ、この事はあまり知られていないことですからレオン君が知らなくても不思議じゃないですけどね」
「だね。そもそもレオン兄はリアが見つけて嫌がるジルグを無視してパーティーメンバーにしたんだもんね」
「そりゃあんな光景を見たら勧誘もしたくなるわよ」
それはレオンとイリアリスが出会ったときのレオンの行っていたありえない行動。そしてそこでレオンは思い出した。
「そういえば強化薬が切らしてたんだった。作らなきゃ」
強化薬とは身体能力を強化するレオンが自身の原初能力「薬液錬成」で作り出す薬。
「それじゃあ今から買いに行きましょう。まだ陽も落ち切っているわけでもないのだから」
「たしか強化薬の素材ってバルト茸なんだっけ?」
「それでしたら街中で売ってそうですね」
というわけでレオンたちは街中へと出かけ薬草など調合に使う材料が売っているお店で必要なものを購入。
「一応ほかのヤツも補充しておこうかな」
バルト茸などを購入しレオンたちは街の外の草原へ。
「大丈夫。いまなら人の気配はないよレオン兄」
「ありがとうサーシャ」
レオンはサーシャにお礼を言って目的の作業に移る。それはイリアリスが驚愕し勇者パーティーに勧誘した原因となる現象。
「バルト茸を千切って……これぐらいでいいかな。そして植えてっと……」
バルト茸のかけらを地面に植えるとレオンは鞄から薬を取り出した。そしてそれをバルト茸のかけらを植えた位置にかけるとあり得ないことが起こった。
ポコポコポコポコ
なんと10を超える数のバルト茸が急激に生えだしたのだ。
「いつ見ても不思議ね~。世界の常識が通用しないって言われているのも納得ね」
「レオンくんの手にかかればどんな入手難易度の高い薬草やキノコでもひとかけらあるだけでいくらでも手に入りますからね」
「そのお陰でお金もかからないし貴重なヤツも実験で好きなだけ使えるんだからレオン兄の薬が世界的に異常なのも納得だよね」
その光景に慣れた様子の3人。レオンがかけた薬は植物やキノコなどを一瞬にして周囲に発生させる瞬間成長薬。当然こんな薬はレオン以外に作ることはできずその存在を知る者も極々限られている。
「でも戦闘能力はみんなよりもないけどね」
そんな和やかな会話をしているところに神に分類されるそれがやってきた。
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