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第8話 イジメとケジメ

今日も、私は学校へ行く。


 二の腕がズキズキと痛む。


 私は普段から、陰湿なイジメを受けている。


 原因は、あの時からだろうか。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 2年前。


 

 

 私達は、休み時間に体育館付近で、ボール遊びをしていた。


 私は外遊びが好きで、仲の良い親友、木村 善子(よしこ)とよく遊んでいた。


「美琴ちゃん!投げるよー!」


「いいよー!」


「それぇ!」


 ボールが私の頭上を通過する。


「あ、ちょっと強かったかな……ごめん!」


「全然いいよー」


 私はボールを追う。


 ボールは思ったより飛んでおり、体育館の裏に行きかけた。


「うわぁ……」


 体育館裏付近は茂みになっており、虫が多いのだ。


 ボールが止まり、取ろうとした瞬間。


 啜り泣く声が聞こえた。


 ふとその方角を見ると、一人の女の子が居た。


 髪は長く、灰色の服を着ていた。


 何かを探しているようだった。


 後ろから善子も来た。


「……ねぇ、何やってるの?」


 善子が話しかけると、その子は此方に気付いていなかったのか、たいそう驚いた。


 驚き方としては、不自然な程であった。


「いゃ……なんでも……」


 しかし、目は赤く、手は土で汚れ、なんでもと言った雰囲気では無かった。


「何か探してるの?」


「……うん」


 その女の子は、私の質問に頷いた。


「なら、一緒に探そ?」


「……うん」


「何探してるの?」


「……髪留め」


「どんなやつ?」


「……くまの顔が書いてある」


「おっけー」



 それは5分もせずに見つかった。


「あった!」


 善子が声をあげる。


「え!?ホントに?」


 女の子は善子に駆け寄る。


「ほら!」


 善子は駆け寄った女の子に、髪留めを差し出す。

 

「あ……ありがとう……!」


「これくらい、お安い御用だね……」


 善子は鼻をフフンと鳴らす。


「こ……これ、お……お母さんからのプレゼントで……た、大切だったから……」


 女の子は、髪留めの説明しようとして、泣き出してしまった。


「……だ、大丈夫?」


「う、うぁあぁ……」


 その女の子は、中々泣き止まなかった。





 


「……あ、ありがとう」


 女の子は、ようやく落ち着きを取り戻し、お礼を言ってくれた。


「良いのよ、お礼なんて。ね。美琴」


「うん」



「その……えっと……名前は……?」


「私は善子。コイツは美琴よ」


「善子ちゃん、美琴ちゃん、ありがとう……!」


「あ、君の名前は?」


「私は、鈴木 理恵!」


「理恵ちゃん、困った事があったら、私達に言ってね!なんでも協力するからサ!」


「……うん。ありがとう……!」


 その女の子は、髪留めを大事そうに抱えて、校舎内に戻って行った。



「……いやーなんか、あの子……」


「どうしたの?善子?」


「いや……どうも私の勘が言ってるのよ」


 最近探偵ドラマにハマってるらしく、善子は度々こういう発言をするのだ。


「何を?」


「あの子をストーカーしろってね……」


「は?」



 ――――――――――――――――――――――――――――――


 あの子の教室は、3年4組であった。


 30人分の机がある教室に居る人は少なく、おおよそ、理恵ちゃんを含めて6人くらいだろう。


「あ、お前見つけれたんだw」


「早いねw」


「ねw」


 自席に座る理恵ちゃんに、絡んでいる3人の女子が居た。


 白いパーカーの女の子。


 萌え袖の女の子。


 黒いパーカーの女の子。


「……やっぱりねー」


「え?」


「……理恵ちゃん。いじめられてるよ」


「……え?」


 正直、何を言っているのか?


 何を言い出すんだ?


 と思った。


「……見てたら分かる」


「……」


 私はその言葉を信じて、見ておくことにした。


「てか、よく一人で見つけれたもんだねw」


「あんたじゃあ絶対無理だと思ったわw 」


「それなーw」


 アハハと、高い笑い声が響く。


「……」


 理恵ちゃんは俯き、ジッと動かない。


「……ねぇ、なんで見つけれたんだって聞いてんだけど?」


「あ、えっ……と……」


「何で?」


「……その……」


「早く答えろよ」


「……」


「チッ」


 黒パーカーが舌打ちと共に、髪留めを取ろうとする。


「ちょ……やめ……」


「いいから……離せって!」


 髪留めが無理矢理取られる。


「あ……!」


「何?」


「……返して……」


「は?」


「返してよ……!」


「なんで?w」


「私の……私の髪留めだから!」


「嫌だよw何?そんなに大切なの?」

 

「うん……」


「あっそぅ」


 黒パーカーは、髪留めを思い切り床に叩きつける。


「や、やめて!」


 黒パーカーは静止を無視し、足で思い切り踏む。


「やめ、やめて!」


 理恵ちゃんは庇うように、髪留めに手をかざす。


 黒パーカーは、足踏みを止める。


「……退けろよ」


「嫌だ!」


「……チッ……。抑えといて」


「はいはい……」


 白パーカーと萌え袖が、理恵ちゃんを抑えつける。


「ちょ、離して……!」


 理恵ちゃんは既に鼻が詰まり、目には涙を溜めている。


「やめて!」


 足が髪留めを踏み潰す。

 

 その瞬間。



「どりゃああああッ!」


「え?」


 善子が飛び出し、黒パーカーにドロップキックをかましていた。



 勢いの余った善子と、黒パーカーが机に突っ込む。


「ゴホッ……!」


 黒パーカーが咳き込む。


 白パーカーと萌え袖は、ぽかんと口を開け見守っていた。


「ちょ……!何すんのよ!」


 金切り声を上げ、黒パーカーが善子に怒鳴る。


「タックルだよ!」


「ちょ、どけって!」


「どかない!」


「この……!どけっ!」


 黒パーカーは善子を思い切り殴る。


「……!」


 善子はそれに対して、黒パーカーに思い切り殴り返す。


「痛い!何すんのよ!」


「……」


 善子は無言であった。


「ちょ、喋りなさいよ……!」


「……何?」


「何?じゃないでしょ?!あんた……!私にこんな事しといてさ……!」


「……こんな事ねぇ。あんたの方がよっぽどじゃない?」


「あんた……私のパパが黙ってないわよ……!?」


「だから?」


「なっ……!」


「私はあんたを許さないし、あんたは私を許さないってだけでしょ?」


「……は?」


「あんたはいじめをしてたでしょ?」


「は?してないわよ?ね?理恵?」


 皆の視線は、理恵ちゃんに向いた。


「…………されてる」


「おい!」


 黒パーカーは声を荒げ、理恵ちゃんを怒鳴った。


「ほら。やっぱり」


「ふざけんな……!こんなポッと出に……!」


「それくらいの人間って事じゃない?」


「黙れ!」



―キーンコーンカーンコーン―


 チャイムが響く。


 そのチャイムは、先の熱狂を少しばかり冷ました。


「……なんで理恵ちゃんをイジメるの?」


「……さぁ?」


「さあ?じゃなくてさ。答えて」


「答える義務なんて無い」


「ある。イジメてる主犯はあんたでしょ。なら責任はある」


「……」


「……」


「早く答えて」


「……」



「な!おい!何やってる!」


 男の声が、教室に響いた。


「!」


「!」


「今すぐ離れなさい!」


 このクラスの担任であった。


―――――――――――――――――――――――――――――――


 事態は一旦収束し、その場に居た全員が、事情聴取を受けていた。


 主に質問されているのは、黒パーカーと、善子であった。


 二人とも、殴られた顔が腫れている。


「で?何があったの?」


「……この子が、理恵ちゃんをイジメてました」


「……イジメてない」


「……その……君はこのクラスの子じゃないよね?」


「はい」


「なんでイジメてるって分かるの?」


「この髪留め、理恵ちゃんのです」


 善子はいつの間にか、理恵ちゃんの髪留めを、手に持っていた。


 それは踏み跡が残り、酷く曲がっていた。


 くまの顔は欠けていた。


「……理恵ちゃん……これは本当かい?」


 理恵ちゃんは深く頷く。


「……なるほどね」


「そうかい……。じゃあ、周りの皆からも話を聞いていくよ……」


 


「先ずは、私が話します」


「君は……?」


「高橋美琴です……。3組の……。」


「……で、何があってこうなったんだい?」



 私は今までに見てきた経緯を話した。


「……なるほど。これは学校全体に関わりかねない問題だ……。校長先生を交えた三者面談が必要そうだね」


「……」


「……」


「とにかく……善子ちゃんと紫鈴ちゃんは……一旦私と保健室に行くよ。他の子は一旦教室に戻っておいて」


 二人は連行され、私は教室に戻った。




 そして翌日、その4組担任教師と、善子は学校に来なくなった。


 いや、転勤と転校となった。


 担任達からの説明は無く、転校だとしか言われ無かった。


 善子が、どうなったのか。


 私に知る術は無く、ただ置いていかれた感覚が残った。


 どうやら、黒パーカーの名前は、レイモンド・紫鈴というらしく、父親はガセアンきっての金持ち、レイモンド・ダヴァンという人だそう。


 デュラハン製造に関わっている人らしく、この学校のデュラハンも、その人からの物だそう。


 そして此処はガセアンからの鎧もあるくらいには、ガセアンとの歴史が深い。


 ……つまり、このいじめは揉み消された。


 あの二人と共に。



 私は悔しかった。


 けれど、どうしようも無かった。


 この学校全てが敵なのだから。


―――――――――――――――――――――――――――――――

 以来、私は奴らにいじめを、受けているのだ。


 理由は簡単。


 善子と仲が良かったから。


 理恵ちゃんも不登校となったから。 


 私に対象が移った。


 そんな理由だった。


 私は親に迷惑を掛けたくないし、心配をさせたくない。


 言えない。


 妻を亡くし、子供もいじめられていると知ったら、


 だから……ひたすら耐えている。


 正直、キツイ。


 だが、弱みを見せてはいけない。



 これは……ある種の戦いなのだから。




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