表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

第7話 エゴでも良いじゃない


俺は今、美琴ちゃんを探していた。


 守る為に。


 理由は簡単。


 シンプルに命令されたからというか、目的にしようと思った。


 だって、美琴ちゃん自体との関わりは無い。

 ま、今から関わりは増やせば良いしね。


 ……俺は今思えば、前世でも目的意識は無かった。


 今世では、その様な意識を持ちたい。


 シンプルな理由だ。


 エゴでしか無いだろう。


 けどさ、別にいいでしょ?


 だって、偽善でも、誰かの為なんだもの。


 言わば、自己満足です。ハイ。


 


 そんな事を思っていたら、美琴ちゃんを見つけた。


 


 ランドセルを背負って、7人で1列で並んでいる。


 えーっと……並び方的に美琴ちゃんはやっぱり5年生かな?


 まだ登校中なんだ。


 随分遠いのか?



 …………にしても、会話が無いな。



 ま、前世も班登校はそんなモンだった。


 俺はランドセルに宿り、美琴ちゃんを見守った。



 その後何分か歩いた。


 信号での旗振りの人も居た。


 変わらない景色。


 だが異世界なんだよなー……。



 すると、大勢のランドセルを背負った子供が見えてきた。


 

  

 そして、建物が見えてきた。


 柵。


 校庭。


 校門……になんか居る!


 いや、先生達に紛れてデュラハンがいる。


 そしてあのデュラハンは見た事がある……。


 ま、まさか……。


 前に来たところだよな……!?


 この前の、警備デュラハンが居たところだよな?!



 

 美琴ちゃん、ここの生徒だったのかよ!





 俺は警戒し、ランドセルから見渡す。

 何を警戒しているのかって?


 そりゃあ……ガセアンの敵だよ。

 

 あと警備デュラハンだね。


 てか、前回逃げ切れた理由も知っておきたいし……。


 放課後にでも、チェイスでもしますかね。


 えーっと。


 ……つまり、俺は校内のデュラハンを警戒しながら、美琴ちゃんを守らないといけない訳だな。


 そして、一番の問題がある。


 仮にデュラハンが反応しても、そのデュラハンを壊してはいけないって事だ。


 民間人からしたら、ただの無害な警備デュラハンなのだ。


 それがいきなり反応したら、そりゃあ怖くもなるだろうな。


 つまり……俺は美琴ちゃんの教室の窓に憑依して……。

 そこから警戒をしなければならないって事だ。


 ……中々ハードだ。



 さて……そろそろデュラハンに近づくな。



 こっちを向く素振りは無い。


 

 と、思いきや普通に向いていた。


 こっちをじっと見つめている。


 此処で俺は焦らずに、隣の教師の胸ポケットのペンに憑依する。


 デュラハンのすぐ右隣。


 これなら気づくはずだ。



 しかし、デュラハンは全くこちらを向いていなかった。


 あら?


 ……反応が無い。


 

 なんだ?なんで反応しないんだ?


 わ、分からん……。



 一旦、目の前の子のランドセルに憑依してみる。

 すると、やはりこちらを向く。


 俺はそのまま、憑依を解かずにジッとした。


 すると。


 ―ガシャ……―


 鎧は音を立てて、こちらへピクリと動き出した。




 俺は直ぐに憑依を解き、またペンに戻る。


 しかし、これが余り宜しく無かった。


「ん?どうしたジャベリン?」


 教師はジャベリンの前に立った。


 次の瞬間。


 ジャベリンは、男の服ごとペンを掴んだ。


「ちょ、ちょっと?!」


 俺は直ぐ様、校門付近の雑草に憑依した。


 するとジャベリンは、手を離し、また元の配置に着いた。


 教師は目を白黒さして、その付近に居た子供達が、ざわつく。


 ちゃいとした騒動になった。


 俺は咄嗟に、美琴ちゃんのランドセルに憑依し、騒動を回避した。





 ……さて、今は教室。


 朝の時間までの、空き時間だ。


 今の所、美琴ちゃんは全く人と喋っていない。


 ……もしかして、友達が居ないのか……?



 いや、いやいや。


 俺の印象としては。まぁ少し生意気な所はあったが、明るい子だったし……。


 友達が居ないなんて事は……。


「ねぇ美琴?」


 黒い服をパーカーを来た女子が来た。


 その後ろに、二人の女子を連れている。


 なんだぁ、友達いるじゃないのよん。


「何?」


 美琴ちゃんはかなり素っ気ない返事をした。


 ちょ……いやいや。


 美琴ちゃんが原因で友達が出来てない訳じゃないだろうな……?


「何?その態度?」


 そのパーカーの女子は、美琴ちゃんの腕を掴む。


「ちょ、やめて……!」


 美琴ちゃんは腕をブンブンと振るが、他の二人が押さえつける。


 そして、美琴ちゃんの袖を最大限捲る。


 その腕には、傷が多く付いていた。


「痛ッ」


 黒パーカーが爪を立てていた。


 おい、何してんだ……コイツ?


「……辞めて」


「なんで?」


「痛いから……」


「えw痛いのw」


 美琴ちゃんは……まさか


「辞めて!」


「うっさい!」


 更に爪を立てる手の先が、力が入り白くなる。


「……ッ!」


 二の腕から血が出る。


 まさか……


 いじめられている……?


 いや……待て待て待て待て。


 こんなに傷が付いてるって事は……日常的にやられているって事ですよね?


 しかも、美琴ちゃんは反撃しようとしない……。


 威勢は良いが、目の奥には恐怖が見える。……気がする。


 こ、これは……ヒドイ……。


 おい?周りの奴らは何やってんの?!


 皆、うつむき、見て見ぬふり。


 ふ、ふざけるなよ……!



 こいつら、絶対に許さん……。



 しかし……今の俺に出来る事はなんだ……?


 痛め付けるのはこの際問題じゃない。


 同じ位返すのはそうだな……。


 が、何があるだろうか……。


 机?椅子?


 刃物はちょっと気が引ける。


 あくまで子供だし、本人が完全に悪い可能性は否めない……。


 悔しいが……ここは耐えて……様子見をするんだ……。



「……ッ辞めて……!」


「だから、嫌だっての!」


「……ッ…………!」


 黒パーカーは、爪をまた更に強く立て、押し込んだ。


 血が滲み出る。


「……なーこちゃん、そろそろ先生来るよ」


「あ、そう?」

 

 奴らは美琴ちゃんの腕の拘束を解き、袖を戻し、そのまま自分の席に行ってしまった。


「……」


 美琴ちゃんは俯いたままだった。



 その5分後、先生が教室に入ってきた。


 朝の会も、出席も難なく終わり、授業が始まり、普通に1日が終わった。


 いじめは、気づかれていないのだった。




 ……凄いモヤモヤする。


 見てる側だから言えるのだろうが、何故いじめを報告しないんだろうか。


 俺が言おうか、迷う。


 鉛筆に憑依して、紙に文字書いたり……。


 ……いや、それでは最悪の場合だと、注意に終わる可能性もある。


 そうなった場合疑われるのは、美琴ちゃんだ。


 それは良くない。


 何より……俺がスッキリしない。


 自分都合だろ、と思う人もいるだろう。

 

 しかし、助けるのも自分都合っちゃ自分都合。


 美琴ちゃんを巻き込む必要は無いのである。


 ……と、思う。



 


 さて、今は3時間目。


 黒パーカー共は先生の居る間、美琴ちゃんに何も危害を加えないらしい。


 きっと、二の腕付近に爪を立てるのも、バレないようにする為だろう。


 悪知恵だけは働く奴らである。



 

 

 さて、俺はやらなければならない。


 勿論、一人では無い。


 家族総出で、だ。

 

 一旦家に戻ろう。



 俺は外に出て、空中に意識を向ける。





 ――――――――――――――――――――――――――――――



 いつもの物置だ。


 俺は直ぐ様憑依を繰り返し、旦那達の住む住居に赴く。




「旦那!居ますかぁ!」



「あれ?もう帰ってきたの?」

「む?」


 旦那は、青騎士と未だに、小さなテーブルで話していた。


「いや……それが……!」


 俺は美琴ちゃんが、いじめられている事を全て話した。



「何イ……?!」

 青騎士さんは恐らくブチギレ。


「……嘘だろ……?」

 旦那は驚愕。


「本当です。嘘じゃないです。最悪証拠出せます」


「……その証拠というのは……?」


「……奴らは美琴ちゃんの二の腕に……爪痕を残しています」


「……卑劣だな」

 青騎士さんは手を強く握り締める。


「えぇ。……どうしますか?」


「勿論、復讐だ」


 青騎士さんの手の甲付近から、刃物が出てくる。


 どっから出したんだ?!それ?!

 


「え?ちょ、ちょっと……?!」


「そんな外道は斬ってやる」


「き、斬るのはやり過ぎですって……!」


「青騎士、落ち着いてくれ……」


「何故だ?娘が大事なのでは無いのか?」

 青騎士さんが、旦那を睨むようにヘルムを向ける。


「いや、だからこそさ」


「どういう意味だ?」


「こちらが復讐を望むなら、いじめをしてる奴らも復讐の復讐をしかねない。……それに、僕らは表に出れないだろう」


「だがな……!」


「頼む、ここは抑えてくれ」


「…………」

 青騎士さんの、手の甲の刃物がしまわれた。


 ……成る程、隠し刃になってる訳だ。


「で……どうするんだ?タワシ……?」


「いえ、俺はそちらの事情を全ては知りませんし……。そちらで決めて頂きたいんですが……」


「あー……なるほどね」


 二人は悩み込んでしまった。



 二人は。派手には動けない。


 それに加え、俺も狙われてるらしいし。


 ……さて。どうしたものか。



「……タワシ君」


「はい?」


「君一人でやれるかい?」


「はい??」


「正直、僕らは公共機関を利用するだけでも、十分特定されかねない」


「そ、そんなですか……?」


「国を崩しかねないからね。そこらにスパイだのが居るはずだ」


 流石に被害妄想臭い。


 が、俺は旦那達の詳しい事情を知らない。


 だから信じるしか無い。


 ……と思う。



「……分かりました。じゃあ、俺がやります」


「ありがとう」


旦那達は、俺に向かって頭を下げた。


 こういった時には、きっと謙遜するべきなのだろう。


 が、逆に俺はちゃんと受け止めようとも思った。


「絶対に救います」


「俺達も、出来る限りの事はしよう」



 こうして、美琴ちゃん救出作戦が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ