第6話 唐突な秘密
「秘密……ですか?」
「そう。秘密だ」
秘密。
確かに何かを隠されている感覚はあった。
何故か監視を付けてるし。
普通のデュラハンは喋っていない事だったり。
……そして、旦那の妻の事だったり。
「君のあったデュラハン。あれは……妻の作品だ」
「え?またですか?」
俺も、妻の作品と言っていたが、あのデュラハンもか。
て、違う違う。
「てか、喋れる理由を聞きたいんですが」
「妻の作品だからさ」
「そういう事では無くて……」
「……分かったよ。話そう」
どうも渋るなぁ。
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その後、旦那は一旦会話を中断し、もう一人のデュラハンを連れて来た。
そして食卓の小さなテーブルを、皆正座で囲んだ。
一人はタワシである。
「……」
「……」
「……」
気まずい。
「おい」
例の鎧が喋った。
「……」
「……」
「おい、……高橋」
その鎧は、明らかに不機嫌そうな声を出した。
「なんだい?」
「なんで呼んだ?」
「簡単だよ。秘密を明かす」
「まぁ……いつかはそうすべきだしな」
いつかはそうすべき?
「では、話そう。デュラハンの全てをね」
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デュラハン技術。
それは革新的な技術である。
その技術はガセアンがもたらし。
人類にありとあらゆる改善を施し。
ありとあらゆる幸福をもたらした。
人が火を使ってから約90万年。
デュラハン技術か始めて生まれて、200年。
人々は、これらに大いに助けられ、発展した。
水。火。電気。肉。米。塩。砂糖。
全て量産が出来る様になった。
そして、無尽蔵の人手。
全て手に入った。
人々は大いに満足していた。
しかし。人々は勘違いをしている事がある。
デュラハンは、魔力を通す魔伝石を加工した鎧を使っているから、動けるのだと。
それは違う。
魂だ。
魂を使っているのだ。
「ちょ……ちょっと待ってください」
「そし………なんだい?」
「いや、雰囲気ある喋り方してますけど……そもそも俺、魔力云々も全く知りませんよ」
「あ、う〜ん、そうだっけ?」
「おい、高橋……教えてないのか?」
鎧が強めに質問する。
「うん」
「うんでは無いだろっ……」
「いや、ちゃんと人となりを見極め様としてね……。少し時間を掛けたんだよ」
「しかし、そんなのでは賭けに出るようなものだろ!」
「でも、勝ったからさぁ。ね?」
「ね?では無いっ!」
おい。
俺を置いてけぼりにして会話をするな。
「あの……」
「貴様は少し黙っていろ」
「え」
ちょっと待てよ。
なんの会話を見せられてるんだよ。
てか、俺の会議じゃないの?コレ?
もう意味分からんのだが。
「そもそも!コイツが余計な行動をして、奴らにバレたらどうするつもりだったんだ?」
「それは大丈夫だ。俺が監視してたからね」
「……そうか」
「……済まないタワシ君。俺の早とちりだった。君に当たったみたいになってしまった」
騎士は土下座で謝ってきた。
「ちょ、頭を上げて下さい!」
「いや、これは俺が責任を取るべきだ。済まない」
いや、ちょっとテンションが違い過ぎる。
なんだこの人?武士道マシマシっていうか……。
古い感じがしなくも無い。
俺の感じ方が変なのかもしれないけども。
「と、取り敢えず俺は全然気にしてませんから!それより、旦那さん、話の続きをしてくださいよ」
「あ、あぁ。分かったよ」
さて、デュラハンの材料は魂と言った。
魂を使うと、勿論感情が入りかねない。
が、大半は魂を宿す過程で感情が消える。
研究でそう言う結果が出ている。
いや、消している。
ガセアン帝国は、感情を消している。
理由は簡単。
単なる労働力に、感情は要らないからだ。
さて……。
何故魂が必要なのかの話をしよう。
人は動く時に、脳から微量な電気が出ている。
その中に、特殊な波形がある。
電気とは別の、特殊な波形。
これは、いわゆる情報の部分である。
肉体的では無く、情報の部分。
触れる事も出来ず、観測も出来ない。
それは人によって強さも変わるし、動き方も変わる。
これが魂。
さて、これらが何故必要なのか。
実は魂とは、魔力と混ざり、物理的なエネルギーを生み出せるのだ。
つまり、デュラハンの軸、となる。
もっと簡単に言えば、配線である。
魂は魔力を運ぶ配線なのである。
「ちょ、ちょっと待ってくださいね」
「なんだい?またかい?」
「い、いや……ちょっと整理しますね」
えーっと……。
何だって?
新情報が多すぎるぞ?
取り敢えず、魂はもう受けれている自分がいる。
俺がこうして転生してる訳だしね。
そこじゃない。
軸だのなんだの……。
「えっと……質問です」
「はいどうぞ」
「魂って、魔力とくっつくみたいな事言ってましたよね?何故です?」
「簡単さ。魂の波形は、魔力と似てるんだ。だからくっつく」
「???」
「磁石みたいなものさ。そうとしか言えない」
「え?知らないんです?」
「そうだね。魂は概念的なものだ。科学的に説明出来ないんだよね」
「……それでは納得出来ませんよ」
「納得も何も……証明出来ないんだよ」
「じゃあ、何故デュラハンだの。魂だのの技術があるんですか?」
そう。
魂の詳細が分からないのにここまで拡がるのは違和感がある。
分かんなきゃ、そもそもデュラハンなど作れないだろう。
「それは……う〜ん……。歴史の話になってしまうなぁ」
「れ、歴史?」
歴史……?
何故歴史の話が出てくるんだ?
「実は、デュラハンってのは考古学の部類のものだ」
「はぁ……」
「大昔に見つかった、魔法言語っていうのがあってね」
「ま……魔法言語……?」
「そう。魔法言語だ。そっちで言う処の、プログラミング言語みたいなものだ」
「そ、それがどうかしたんです?」
「まぁ、それが魔法陣の文字なんだけどね。その中の陣に、デュラハンの陣があったらしいんだよね」
「ちょ……ちょっと待って下さいね……」
俺の解釈だと……。
えーっと?つまり……魔法言語ってのは、魔法陣には必須って事だ。
それを使うと、魔法陣は使える様になると。
で……その中にデュラハンの陣があったと。
あーつまり、どの組み合わせで魔法陣が作動するかは分かる。
けれど、それが何故起動するかは分かってないと。
「……って事ですね?」
「そうだね」
「理解が早いな」
騎士に褒められた。嬉しい。
「と、取り敢えず続けて下さい」
「了解」
そして、デュラハンの感情が今まで生まれてないのは何故か?
ここまで発展していたら、何かしら研究がなされても不思議では無い。
しかし理由は簡単である。
デュラハンの技術は、国家企業によって作られている。
その国家企業が特許を取り、企業はデュラハンを作れない。
その上、ガセアン自体の国力も、世界でトップだ。
経済、軍事共に。
故に国でも逆らう事が無い。
だから、デュラハンの技術は独占なのだ。
「分かった?」
「えぇ。要にデュラハンは、ガセアンの特産品みたいなもんなんですね?」
「そうだね。あの国以外で作ろうとすると、何をされるか分かったもんじゃないし」
「……?ちょっと待って下さいね……」
作るとヤバイ……。
おい。
待てよ?
俺、物置で転生したよな。
「俺、なんで此処にいるんです?此処はガセアン国じゃないですよね……?」
「それを、話そうと思ってたんだよ」
さて、感情を持つデュラハン。
それは完全にイレギュラーであり、ガセアンからすれば、排除対象だ。
「ちょ、ちょっと!」
「ん?」
「は、排除対象?!」
「そうだよ?」
排除対象だと?!
転生して、一番デカイ国に狙われると?!
冗談じゃないぞ!!
「な、なんも聞いて無いですけどっ?!」
「……なんも言ってないからね」
「…………」
言葉が出なかった。
憤怒もあった。
混乱もあった。
しかし、この気分を表す言葉は、呆れに近かった。
今思えば、色々おかしい部分はあったし。
……嫌な予感はしてたんだよな。
けど、楽観的に見過ぎていたようだ。
元の世界と似てるし、大丈夫だろとか思っていた。
けれど、この世界は、元の世界と全く違う。
この世界は、異世界だ。
「……分かりました。続きをお願いします」
「分かった」
さて……
此処からが本題となる。
君たちは、妻の作品であると言った。
高橋 恵子
それが妻の名前だ。
そして、妻は亡くなった。
と言ったね……。
「えぇ、言ってましたね」
妻、いや僕たちが研究していたのは……感情を持ったデュラハンについてなんだ。
勿論、ガセアンでね。
これが、始まりなんだよ。
僕たちが、感情持ちのデュラハンを作り上げたんだ。
さらなる発展を目指してね。
「は!?!?」
「本当はもう少し……前に言いたかったんだけどね」
つ、作り上げた?!
研究どころか、その技術を作った?!
「えーっと……続きを話すね」
つまり……。
ガセアンにとって、要らないものを取り入れた。
すると、どうだ?
狙われるだろう?
「まさか……」
そう。研究で死んだのは……嘘だ。
意図的な事故で死んだんだ。
研究所は大火事になった。
「あ!顔の火傷ってのは……その時の……」
「そうだ。火事のせいだ。治せなくは無いんだけどね。僕自身は目立った行動は出来ないから。公共機関は利用出来ない」
「そ、そうなんですか……?」
「そうだ。そして……僕、いや、僕達は狙われてる身になるんだ」
「……!美琴ちゃんは……どうなんですか?!」
「分からない。バレている可能性は高い。が……。どうだろう。今のところ襲撃も無い。だから……君が美琴を守ってくれないか?」
「え?!」
ちょっと待ってくれ。とんでもない急展開だ。
ま、守る?!
なんで俺が……?!
美琴ちゃんを?!
ま、待ってくれ……。
「あ、いやね?色々理由はあるんだよ。僕自身は表立って行動出来ないし、青騎士は見張りだし、祖父が死んでしまったからね」
「ちょ、そ、祖父?!」
てか、見張りのデュラハン、青騎士って言うのね。
「僕達が研究で忙しいからね。こっちの国で祖父に預けたんだ」
「ま、待って下さいね。なんで祖父がこの国に居て、国家機密レベルの研究が出来るんです?」
「あ〜……確かに……なんでだろ?」
「おそらく血族を知っては居ても、手は出しにくいと考えている。当たり前だが……事件性を疑われると、不利になるのはガセアン側だしな」
青騎士さんが、あごに手を当て言ってきた。
「あ、そうなんですね……」
あっちも、魂やらなんやらを使っているのを公表していない。
つまり、裏でコソコソやってるって事だ。
派手に動けば、国内で、国民の反発やら、デモとかが起きかねないのか。
「……で、なんでそれを青騎士さんが知ってるんです?」
「簡単だ。俺が初めての感情を持ったデュラハンだからだ」
「成る程……」
「……余り驚かないのだな」
「いえもう、何と言うか……驚いていたら疲れちゃて。それに、何となく予想はしてましたし」
ま、喋るヤツが少ないのと、俺より先に色々事情知ってるし……。
予想してはいた。
「そ、そうか」
「えっと……続きお願いします……」
「わ、分かった」
さて、此処からが、本当に言いたい事だ。
美琴を守ってほしい。
と言ったね。
「えぇ」
美琴……学校に行ってるのは知ってるだろう?
というか、今さっき行ったんだけどさ。
「えぇ……」
憑依で、見張りっていうかさ。
見守りをしてほしいんだよ。
「わ、分かりました」
「え?そんなあっさり良いの?」
「まぁ、別にやりたい事を考えていた訳では無いので……」
「そ、そうか……」
そうだ。
今思ったが……俺はこの世界に来てワクワクと胸は躍った。
だが、何をしたいかとかは、特に考えていなかった。
いや、まぁこの世界に来て、3日くらいしか経ってないけどさ。
そうだなぁ。
いいじゃんか。
世界の裏事情を知って、少女を守るとか。
カッコいいじゃないか。
主人公っぽいじゃないか。
よし。
やってやろうじゃあないの。
「では、早速守ってきます!」
「え、ちょ、ちょっと」
旦那が体を、跳ねるように動いた様に見えたが。
ま、良いか。
「い、行ってしまったか……」
「……随分と冷静かと思ったが……。忙しない奴だな」
「まぁ彼からすると、急展開だし……。テンションを上げてかないとおかしくなりかねないし……」
「そう言えば……お前そんな感じだったな」
「まぁね。だから分かるんだよ」
「そうだな」