第5話 このタワシ、犯罪の匂いがするぜ?
……さて、あの後、色々試してみたんだが……。
コイツはやべぇ!
犯罪の匂いがプンプンするぜーっ!
なんで匂うかって?
便利過ぎるんですよ。奥さん。このタワシ。
さて、では具体的にどんな機能があるのか。
早速ね。紹介していきたいと思いますー!
① 憑依を繰り返し過ぎると、本体に戻る。
前のやつだね。
滅茶苦茶に繰り返し過ぎると、どうやらダメらしい。
距離かなとも思ったけど、どうやら回数らしい。
1000回くらいで駄目になる。
けど、回数は結構バラつきがあった。
もう少し調べたら、憑依する毎に少し休めば回数が大幅に延びた。
時間で回復していくのかね?
② 憑依の速度は即着である。
マジでラグが無い。
これは普通にありがたい。
いや、だから意識飛ぶのか?
速すぎて。
③ 生命体(有機物)には憑依出来ない。
流石に無理っぽい。
人も、動物も、虫もダメらしい。
もしかしたら、俺の技量で憑依出来ないってのもあるのかも?
とにかくダメらしい。
④ 植物は無機物判定らしい
植物も生命体だろうよっ!と思う人も居るかもしれないけど、憑依出来るから仕方ない。
―因みに、此処で言うのは、生命的な有機物と無機物であって、炭素やら燃える燃えないでの事では無いぞ!―
実際葉っぱに憑依出来たし、なんなら木にも憑依出来た。
⑤ 憑依の最大射程は500mくらい
憑依は500mが限界射程らしい。
ま、感覚的な500mだからね。
実際は、もう少し長いかも?
⑥ 乗り継ぎが出来る
物から物へ乗り継ぎが出来るらしい。
つまり、タワシ(本体)→木と、憑依する。
その木から、500m以内ならまた憑依が出来る。
しかも、回数制限は無いので、無限に移動出来るらしい。
⑦ 本体なら一瞬で戻れるらしい。
憑依する際の、頭から抜ける感じを再現して、しばらく漂ってれば、なんか勝手に戻る。
コレを見つけれたのは大きい。
迷っても直ぐ戻れる。
楽ちんです。
……くらいかな。
もう少し色々ありそうだけど、今は良いや。
さて、色々研究する過程で、街並みをもう少し詳しく見たんだけども。
やっぱり普通の住宅街って感じだ。
しかも、元の世界の。
車もあるし、ガス、電気、水道。
インフラが全て揃ってるし、TVもあった。
やっぱり現代技術に満ちている。
あ、そうそう。
憑依に関しても、もう少し詳しくやったんだけど。
日用品とか、よく分からないんだよね。
テッシュとか、コップとかは入れた。
けど、ガスコンロ、冷蔵庫、レンジ、TV、その他諸々の、電化製品には入る事が出来なかった。
これが良く分からない。
電化製品って無機物だからなぁ。
ただ、付喪神ってのが居る分、それを利用してる可能性は高いよな。
あれだ。
ポケット的なモンスター的なやつにあったな。
電化製品に利用するやつ。
それなら……有機物になるんかな?
う〜ん……旦那に詳しく聞いてみるか。
あ、そうそう。
ついでに言うと、家の間取りを把握したんだよね。
結構広い家だった。
いや、家が広いってより敷地が広いって言う方が正しいか。
先ずは物置なんだが……。
敷地内のそこそこ大きい物置だ。
物置というよりも……コンテナハウスと言ったか?
小さなコンテナハウスみたいな感じだ。
そして少し離れた場所に、旦那達が住んでる住居がある。
古い木の家。
昭和の家っぽい。
いや、寺とかか?
侵入したけど、電化製品はほぼ無かったな。
いや、本当にマジで寺。
んで、住宅街とかからは少し離れている。
林に囲まれている感じだ。
……まぁ、昨日で分かったことはこんなところ。
今後も色々検証するつもりだ。
そう言えば……。
この前旦那に色々聞こうとしたけど、外出て聞けなかったな。
今度聞くか。
いや、今聞きに行くか。
今いるのは物置。
旦那達が住んでる家から少し離れているんで。
取り敢えず、憑依を繰り返して移動しよう。
よーし、着いたな。
「行ってきまーす」
「いってらっしゃーい」
玄関の方から声がした。
美琴がランドセルを背負っている。
あぁ、そうだったな。
学校もあるのか。
やっぱり美琴は小学生でしたか。
やはり俺の目に狂いは無いと見た。
玄関が閉まる。
「旦那」
「わっ、ビックリしたなぁ。」
旦那は俺を探す。
「え?あ、コレか」
俺の憑依している、玄関の花瓶を見た。
「良く分かりましたね」
「まぁね」
「呼び出したから、分かるとかですか?」
「う〜ん、まぁ、そんな感じさ」
やっぱりな。
霊感感じるとかってそういう事か。
「えーっと、質問が色々あるんですよ」
「ほう?なんだい」
さて、俺はこれから質問攻めをする。
つまり、長い会話になる訳だ。
まぁ、まとめはするけどな。
さて、最初に一番気になる質問だ。
「街にもデュラハンが居ました。つまりデュラハンってのは一般的に広まってるって事ですよね?」
「そうだね」
「では、何故一体も喋らないんですか。俺は喋れるのに」
「主にしか会話は聞こえないからさ」
主?召喚主って事か。
「つまり、俺の声は美琴ちゃんと、旦那にしか聞こえないからって事ですよね」
「そうだね」
「つまり……一般なデュラハンも俺達には会話が聞こえないってことですか?」
「……あ、いや。そうじゃなくて。タワシ君から話し掛けた訳では無くて?」
「え?違いますよ?」
旦那は上をチラと見た。
「あー……。うん。あれだよ、そもそも喋らないからさ」
「あ、そうなんですか?じゃあ、なんで俺は喋れるんです?」
「……」
旦那は黙って、考えた。
なんだ?
そんな考える事なのか?
俺の頭に、ふと物置前のデュラハンがよぎる。
「普通喋れないなら、なんで物置前のアイツは喋れたんですか?」
「…………」
「あ、あの〜……?」
「君の様な、勘の良いタワシは嫌いだよ……」
「え?」
そんな、ショーなタッカーな人でもあるまいし……。
「君に秘密を話そうと思う」
ひ、秘密……。
俺は唾を飲んだ。
いや、まぁ喉なんてないけども……。