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第二話 なんでタワシ……

タワシに転生したよ!イエイ!

 

 ッて、イエイじゃねえぞクソが。


 あー……もうどうすんだよコレ。


「ごめんね、これしか無くてさ」


 あ、心の声は聞こえるんだったっけ。


 ……もっとマシなのあったでしょう?


 ―目の前にある武者鎧みたいな鎧が目に入った。カッコいい―


 それこそ、あそこにあるカッコいい鎧とか。


「……いやね、付喪神ってのは条件が厳しいんだよ。特に今回はね。自身が20年以上使っていて、水に関係ある日用品じゃないと、いけなかったからね。」


 なんだよそれ。


 え?てかこのタワシ20年も使ってるんですか?


「ん?あー……そうだよ?」


 き、汚いじゃないですか!


「いやいや、貫禄あるよ」


 勘弁して下さいよ……。


 元人間なんすよ?


「……まぁ、あの人の考える事だからねえ」


 誰です?あの人って。

 あ!まさか俺をタワシにしやがった張本人ですか?!許せん!

 


「パバ」


 少女が優男に話しかけた。


「なんだい?」


 人の話を聞けぇ!


「こいつ……うるさい」


 俺の方角を指さしている。


 ……まさか、俺がうるさいのか……?


「こ、こら美琴!そういう事はダメだよ言っちゃ。この人も慌ててるんだよ?」


 そうだそうだ!お父さんはともかく、お母さんに習わなかったのか、そのちびっ子!


「……お母さんは死んだから、習ってない」


 え、


「…………あぁ、ゴメンね。……僕の妻はデュラハンの研究しててね。とうの昔に、事故で死んでしまったんだよ」


 しまった……いくらよく分からん状況とは言え、地雷を踏んでしまったようだ。これは良くない。



 あ、…そのごめんなさい


 

「いや、良いんだ。……わざと……じゃないだろうしさ」


 優男の顔は、悲しそうなものだった。

 いや、ホント、ゴメンなさい



「取り敢えず、今日はもう寝なさい。声に関しては、私が調整しとくから」


「……わかった。おやすみパパ」


「おやすみ」


 …………


 子供が物置から出ていった。


「さて、心の声も聞こえてるから……。ちょっと調整するから動かないでね」

 

 神主が俺の足元の魔法陣を触り出した。


 

 動かないでねと言われましても、この体でどう動けと。


 

「はは、まぁそうだね。いや、でも"動ける"んだよ。本来はね」


 え?動けるんですか?


「まぁ、一旦、美琴がゴメンね。何よりまだ10歳でね」


 

 あ、いや、良いんです。


 俺も地雷踏んじゃいましたし。


 

「いや、あれは美琴が悪い。……ありがとう、君は良い人だ」


 

 え、いや、そんな事無いですよ。


 それより、あの子"みこと"っていうんですね。


「そうだね。本名は高橋美琴。そう言えば名乗って無かったね。私は高橋健だ。宜しく」


 たけるさんですね。宜しくお願いします。


 ま、旦那さんって呼ばしてもらいますよ。


「だ、旦那ねぇ……。う〜ん、いや、まぁ良いよ。僕はなんて呼べば良いかな?」


 そうですねぇ……タワシで良いですよ。タワシで。


「タワシ君……で良いのかい?前世の名前とか……」


 いや、俺は別に前世に対して良い思い出無いので。


「そうかい……」


 あ、別に重い過去があるとかじゃないですよ?


 普通に退屈な人生だったので……


「そうか……いや、まぁこれ以上深く踏み込むつもりは無いよ」


 な、なんかスミマセン


「いや、良いんだよ」


 すると、


「……さて、取り敢えず調整するからね」


 分かりました。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 1時間は経っただろうか。


 優男はまだ魔法陣をいじくっている。

 かなり時間を要するようだ。


 ハッキリ言おう。

 

 めちゃくちゃ暇だ。

 

 感覚的には、髪切るのに時間が掛かったらこんな感じになるな。


  しかし、こんな風に心で喋っても、優男からは反応が無い。

 

 どうやら、調整が終わりつつあるらしい。






 


 あれから15分程経った。


 

 優男の手が止まる。


「よし、終わりだよ、お疲れ様でしたぁぁ、ふぁぁ……」

 

 肩をグリグリと回し、あくびをしている。

 


「どうだい?」

 


 あー、あー。どうすか?

 


「…………アレ?」


 アレ?聞こえてないな。


「……あ、口から声を出す感覚に近いね。どうだい?」


 口から声を出す感覚?

 

 

 ……あー


 ……いや、違うな。

 もっとこう、喉を意識するような感覚で……


 

「あー」

 


「お!できたできた!」


「喋れてます!?」


「出来てる出来てる!」


「マジすか?!」


「マジだよ、マジマジ!」


「いやー、お疲れ様でした!ありがとうございました!」


「君こそ、お疲れ様じゃないか?急に転生させられた挙げ句、ずぅーーっとじっとさせられたんだし」


……それもそうだな。


 ……。


 あ、本当に心の声が聞こえてないのか。


「まぁ、確かにそうですね」


「いやー、悪かったね」


「いえいえ」


 ま、正直な話すると、前世も、やり直したかったし、……夢も無かったしな。


 ……正直転生に関しては嬉しいかもな。


「じゃあ、私はもう寝るよ。疲れたし」

 

 優男はそう言うと、ふらりと立ち上がり

 物置の扉の方面に向かった。


「あ、ハイ。おやすみなさい」


「おやすみー」

 

 もう優男は扉に手を掛けている。

 

 相当眠かったのか。


 俺も寝るか……。


 

 

 まぶたを閉じる

 


 ま……まぶたを閉じる

 


 ま……まぶ……た……

 


「…………あ」

 


 無ぁぁぁぁぁい!まぶた無ぁぁぁぁぁい!


 

 何となく分かってたけどよ! まぶたが閉じねぇぞ!

 

 

 寝れなくね?コレ 



「あ、あの、旦那さーん!」


 襖を開け、扉から出ようとしていた優男を止める。

 

「……お?おぉ、どうしたんだい?」


「まぶたが……まぶたが無いです!!」


 優男は、ハッとした表情で


「まぁ、タワシだからね……それに、そもそもデュラハンは寝れないんだよ」


 ん?デュラハン?


 そう言えば、妻がデュラハンがなんの言ってたな。


「俺、付喪神なんじゃないんですか?」


「あぁ……デュラハンっていう枠組みの一種が、付喪神なんだよ」


「?」


 う〜ん?俺の元の世界だと、デュラハンってのは、死んだ魂が鎧に憑依して動いてるイメージなんだが?


 俺、タワシなんだが?


 列記とした、掃除用具なんだが?


「う〜ん……そっちの言語でなんて訳されてるか知らないんだけどさ、物体に魂が憑依してる現象をデュラハンって言うんだ」

 


 ……つまり、魂が憑依してれば、それはデュラハンと。


 


「だから俺も、デュラハンって事ですか?」

 


「そうだね。……ま、詳しいことは今度話すよ」

 

 

「わ…分かりました」



「じゃあ、おやすみ」


 

「だから俺寝れないんですって」


 

「それもそうだね。悪い悪い」


  

……優男は部屋から出る時に電気を消していった。


 寝れないっつってんのに。


 ……電気代とかあるのかね。


 ……ん?


 てか、電気あんじゃん!


 現代技術あんじゃん!


 てことは、ゲームあるかな……。 


 あ、あってもこの体じゃ出来ないかもな。



――――――――――――――――――――――――――――――― 


 

 この部屋はとても静かになった。


 ……さて、色々あったから整理をしよう。

 


 


 先ず、俺は転生した。


 そして、俺はデュラハンっていう種の、付喪神目になった。


 それは分かる。


 すげー良く分かる。


 俺はラノベとまでは見なかったが、アニメは良く見てたからな。


 だが、タワシってのはどういう事だぁ〜っ!

 

 なんでデュラハンとか言うカッコいい魔物に転生したのによぉー!


 タワシってのはどう言う事だぁーーっ?!


 ハァー……落ち着け。落ち着けよ。


 さっき説明を受けたじゃないか。


 条件があるとさ。


 


 色々気になる事が多いな。


 ……さて、俺の知識だと……


 デュラハンってのは魔物だな。


 


 んで、此処は現代技術があるのは確か。


 ……けどデュラハンって言う魔物は居る。


 つまり、異世界なのは確か。


 だが……なんつーか、魔物ならば、もっと嫌悪感とかを表すよな。


 こう……ぎゃあああとか。


 タワシが喋ったーっ!!


 とかさ。


 もっと驚くはずなんだよな。


 なのに、あの2人は至って冷静。


 異世界だから、まぁ、俺の元いた世界基準で測るのは宜しく無い。


 もしかしたら、デュラハンってか、ゴーレムとかに近しいんじゃないかな。


 いや、でもなぁ。


 思っきしデュラハンと言ってたしな。


 ……てか、そっちの言語でとか言ってたな。


 あぁー、良く分からない事が多い!


 考えるだけ無駄だ!


 後で旦那に聞こう。


 そして、寝れないと来た。


 

 ……なら、やる事やっとくか。


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