運命
誤字修正しました( ..)
お、お花摘みにいきたい……
ちょっ、本当にいきたい
だけど、状況がそれを許さない!
只今わたくし、花嫁衣裳をまとった姿で、この寝室の主が来るのを待っている状況です。
なんの間違いか、貴族の男性に見初められ、トントン拍子に結婚が決まったとき、私はあらゆることに考えを巡らせ、一人心の中で絶叫をあげていた。
下級官吏の娘と、貴族の男性の結婚とか、庶民の井戸端での話題の種でしかなああぁいぃぃ!
季節は冬!! 寒さもあいまってお腹いたいぃ!
ちょっ、ほんとどうする?
このままこの状態で耐える?
ムリムリ、絶対むり!
なんでこの時期に結婚? そもそも、私はどこで見初められたの? 宮殿に出仕している訳でも、学寮で学んでいる訳でもない私を、貴族がどうやって見初めるの??
「待たせた」
……ぎゃぁああ、きたあぁぁ
「いいぇ」
緊張が極限に達する。もうむり、吐きそう。
うぅぅあ……。
お腹の痛みと吐き気で脂汗でてきたかも。
「大丈夫か?」
心配そうな男性の声。だがしかし、自身の体調と格闘している私に答える元気は微塵もない!
「……おい! 聞こえているのか?」
ちょ、ま、今何が起きました?
目線がお腹から、寝台の天井と男性のドアップに変わってますが!?
驚きでお腹の痛みがどこかに消え去りました。ええ、それはもう鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていることでしょう。
男性が頬を染めた。押し倒しておいて照れないで欲しい、こちらにうつります!
「……ッ、すまない」
「……いえ……」
実は、顔を合わせたのは今日が初めてだったのですけど、やっぱり、なんだか見覚えのある顔してますよね?!
誰でしょう? 私が会う男性といえば、父、兄、父の同僚、くらいなのですが?
「俺のことを覚えているか?」
「えぇっと……」
だれ、だれだろ、思い出せぇ! 知り合いならさすがに思い出せるはずうぅぅ!
うなれ、わたしの脳みそ! いまこそ、日頃のサボりを返上するときです!
「幼いころ、俺の実家で迷子になっていただろう」
実家……? 幼いころ? いつですか!?
まいご……、迷子!
あ、ぁああ!あの時のおぉ!
そう、あれはまだ、八歳ぐらいの小さい頃のことだったと思います。
私は、両親に連れられ、大きなお屋敷に行ったことがありました。
そのとき、お庭にあった大きな樹に気を取られ、両親とはぐれてしまったのでした!
なんでそんなに気を取られていたのか、いまでは見当もつきませんねぇ!
両親とはぐれたことに気づき、途方に暮れていた私に、屋敷の中から声をかけてきた男の子がいたのでした。
当時の私の目には、大人びている男の子が、格好よく見えました。
その子が助けてくれたことで、見事、初恋の相手になったのでした!
「あの時の男の子ですか!?」
「思い出したか」
「はい! 初恋の男の子です!」
あ、勢いあまって、いわなくていい事言ったかも。
「初恋……、なのか?」
なんか嬉しそう。もしかして。
「俺もだ」
おおぉ! これは運命ってやつですか?!
そうですよね! 多分運命なんです。
なんだか、幸せな気分になってきました。
「っていう夢を見ました」
「随分前の話だな」
朝起きて、隣で寝ていた夫を起こし、懐かしい夢の話をしました。
夫は眠そうな声で、それでもちゃんと話を聞いて答えてくれます。
何気ない日常が、これからも続きますように。
最後までお読みいただきありがとうございました( . .)"